連日の猛暑が続くなか、ビアガーデンに多くの客が詰めかけている。ビアガーデンといえば、“おじさんたちの憩いの場”といったイメージがあるが、今年はちょっと様子が違う。女性を意識したビアガーデンが各所で増えているのだ。
都会の中心で自然を感じながら生ビールが楽しめると人気の明治神宮外苑『森のビアガーデン』では今年、1984年の営業開始以来、初めて女性用のスペースをオープンした。この7月から全1000席中、80席の女性専用席を設置している。
「女子会というトレンドに応えて、企画しました。女性だけで気兼ねなくワイワイ楽しむことができると、ママ友同士の集まりにも人気ですね。昼間なら隣の児童遊技場で遊んでいるお子さんを見ながら、ということも可能です」(運営会社の担当者)。
若い女性が楽しめるおしゃれな雰囲気のビアガーデンも登場。新宿ルミネエスト屋上では、女性向けビアテラス『BBQ & beer terrace 130day’s』を3年前からスタート。韓国料理の定番、サムギョプサルに女性が好む鶏肉を使った“トリギョプサル”など、女性にうれしいメニューを提供するほか、女性客を意識したイベントも開催中だ。
「ガールズDJによるプレーやファッションイベントを行う日もあり、おしゃれでキラキラ感がたっぷりの趣向になっています。ルミネで買い物をした後の20代前半の女性に来ていただけないか、と企画しました。カップルや女性のグループが多くいらっしゃいますね。なかには浴衣を着て来店する女性もいます」(新宿ルミネエストの担当者)
女性向けに料理を工夫しているのは、そごう横浜店の『海が見える そごう屋上 ビアガーデン』。3年前から、揚げ物や枝豆、乾き物といったそれまでの“おじさんメニュー”から、女性が好むアジアンフードを増やしてメニューを一新。以前は3割ほどだった女性客も、いまは6割が女性だという。
「女性向けにサラダバーや、自家製サングリアなどのおしゃれなドリンク、デザートの種類を増やしました。寒いというかたのために膝かけや温かいハーブティーを用意したり、今年はさらに女性を意識しています」(そごう横浜店の広報担当者)
こうした女性向けのビアガーデンが増えているのはなぜか? トレンドウォッチャーのくどーみやこさんは次のように解説する。
「不景気で仕事の後に飲みいくサラリーマンが減っているのに対して、女子会がトレンドになっているように、女性は景気に関係なくおしゃべりするために集まっています。お酒を提供する飲食店では、サラリーマンだけを相手にしていては経営的に厳しいということで、新規の客を獲得するために女性をターゲットにする流れがあります。ビアガーデンもそうした流れに乗っているということでしょう。つまり、男性客よりも女性客を狙ったほうが利益につながる、ということです。
また、昨年は震災の影響で自粛していた人も多く、今年は夏の風物詩としてビアガーデン自体が盛り上がっていることも背景にあると思います。震災以降、友人との絆を大切にする傾向が高まり女子会を開く機会が増えたことも理由のひとつに挙げられるでしょう」
女性の間でアウトドアの人気が高まっていることも、ビアガーデン人気を後押ししていると、くどーさんは指摘する。
「女性は料理やロケーションをすごく大事にしますが、ビアガーデンは都会にありながら外でお酒が飲めたり、中には森の中にいるようなロケーションの施設もあるなど、アウトドア的要素があります。ここ数年、女性がアウトドア志向になっているのもあって、昔は主流だったおしゃれなホテルのレストランなどよりも、海の近くや森の中で飲んでいるようなシチュエーションや、夜景がすごくきれいなビアガーデンにハマっている女性もけっこういるんです。自分たちがいま求めているものがビアガーデンに実はいっぱいあるということに、女性が気づき始めたということも背景にはあるでしょうね」