ビジネス

食パン戦争 コンビニPBと「パン屋のプライド」が真っ向勝負

コンビニのパンはこの10年で劇的に変化

 コンビニエンスストアのパン戦争が熱い。高級でリッチな味わいが共通だ。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が食べ比べてみた。

 * * *
 セブン-イレブンの高級食パン、「金の食パン」が4月の発売から5か月経過した8月末で、当初予想を50%上回る累計1500万食を達成したという。厚切り2枚入りが125円、6枚入りは250円と普及品の約2倍の価格にも関わらず、だ。今月に入り、大手山崎製パンも追随し、2枚入り125円という「ユアクイーンゴールド」を発売した。ヤマザキグループの「デイリーヤマザキ」「ヤマザキショップ」のほかファミリーマート、サークルKサンクス、ミニストップなどで展開されるという。

 コンビニエンスストアのパンは、この10年ほどで劇的な変化を遂げた。ほとんどのコンビニでPBブランドが扱われるようになり、商品展開や味に多様性が生まれた。今回の「金の食パン」(セブン-イレブン)と「ユアクイーンゴールド」(ヤマザキ)は約3cmという4枚切りの厚さで価格も真っ向勝負となっている。どちらもざっくり言うと「リッチな味わい」が売りだが、トーストして食べたところ、志向する味の違いは明らかだった。

 「金の食パン」はしっとりした食感に加えて、素材にはちみつを加えていることもあってか、デニッシュのような甘みが際立っている。これにハマったら、他のパンでは満足できない唯一無二のポジション取りだ。にも関わらず、今月末には小麦粉の配合を調整した “バージョン2”を早くも投入するという。

 いっぽうヤマザキの「ユアクイーンゴールド」はザクッとした歯切れに加えて、小麦とバターの香り豊かな、まさに王道の味わいだ。インタビューで「金の食パン」について感想を求められた飯島延浩社長が、「われわれはもっといいものができる」と言い切った“パン屋のプライド”がにじんでいる。

 そしてここまで名前が上がっていない「ローソン」は上記に挙げたコンビニとは少し異質の展開をおこなっている。同チェーンは、2012年に小麦ふすまを使った「ブランパン」を発売。小麦の胚芽部分=「ブラン」を使用し、糖質やカロリーを抑えたパンの開発に成功した。惣菜パンやサンドイッチへの展開も積極的におこなっており、都市部を中心に健康意識の高い客層の取り込みを狙う。

 「高級でリッチな味わい」ばかりが価値とは限らない。10月には「Pasco」ブランドで知られる敷島製パンも「超熟シリーズ」最高価格帯となるライ麦を使った新商品を投入するという。

 平均世帯人員数が減少するなか、パンの1斤買いをする客の比率は減ってきている。いっぽう「高級化」に始まった商品の多様化の流れは止まりそうにない。コンビニ間で顕在化したパン戦争は今後さらに熱を帯びていきそうだ。

関連記事

トピックス

なかやまきんに君が参加した“謎の妖怪セミナー”とは…
なかやまきんに君が通う“謎の妖怪セミナー”の仰天内容〈悪いことは妖怪のせい〉〈サントリー製品はすべて妖怪〉出演したサントリーのウェブCMは大丈夫か
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン