ライフ

和食が苦手な外国人に「旨い」といわせる方法 近道は焼き目

外国人はタコが苦手

 海外の人でも虜にする和食の定番とはなにか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 「和食」の世界無形文化遺産登録を目の前に、さまざまなメディアで「世界遺産企画」が行われている。例えば朝の情報番組では「世界遺産になる和食。果たして外国人にどれだけ受け入れられるのか」という企画を放送していた。つまり外国人と日本人の味覚の違いについて実際に口にしてもらうことで、その違いを浮き彫りにしようという企画で、コメントを求められて一部収録にも立ち会った。

 よく海外の人が「苦手」だという和食は何種類かに類型化できる。その多くは「食感」と「香り」に起因する。例えば食感で言えば、外国人が苦手なのは大きくふたつ。「粘り気」と「かみ切れないかたさ」だ。前者が苦手な人は納豆はもちろん、とろろなども苦手で、あのズルズルと引きずるような粘りに得体のしれない気持ち悪さがあるというのだ。外国人の多くは生卵も苦手なように、同じような食感が想起されるという。

 「かみ切れないかたさ」はイカやタコなどの刺し身が代表格。とりわけ処理のあまりうまくない、いつまでもかみ切れないようなイカ・タコに当たると「サイアク!」(38歳・アメリカ人男性)だという。もっともこれも調理法次第で、同じイカやタコでも巧みに隠し包丁を入れ、身肉の繊維を断ち切ったものについては「ナニコレ!? オイシイ」と感嘆していたからわからないものだ。

 においで言えば「魚の生臭さ」や「発酵臭」が挙げられる。前者はいやな匂いなら、日本人でも苦手な人は多い。ただ後者において、日本人と外国人の差は如実に出る。納豆や漬物のようなわかりやすい発酵臭だけではなく、醤油や味噌などの日本人にとってはなんということのない発酵臭も苦手な人が多い。

 ほかにも「おでんのにおいがダメ」「炊けたごはんのにおいがダメ」という例もある。とりわけ時間のたったおでんや、そのどちらも、どことなくすえたような匂いが感じられる。例えば同じ人にもていねいに出汁をひき、決して沸騰させないよう、味を入れたおでんは外国人も喜んで食べていた。ごはんは白飯が苦手な人も多いが、炊き込みごはんや混ぜごはんにするととたんにもりもり食べるようになる。

 そしてこれらすべての悩みを解決するのが「焼き目」だ。過去に日本に来たゲスト(確かアメリカ人男性)に、築地場内の名店で魚の一夜干しを食べさせたら、”My best grilled fish!!“と言い残して、帰途につきました。とりわけ好評なのが魚を醤油や酒、味噌や幽庵地などにつけたものだ。

 焼くと外国人にとってのイヤな魚や発酵臭が落ち着き、代わりに焼き目で起きた「メイラード反応」や「カラメル化」により、香ばしい香りが漂い、海外の人にとっての苦手な香りをマスキングしてくれる。もっといえばこの「焼き目」こそが、世界中の人々が共通体験を積んできた「旨い」なのだ。外国の方をもてなすのに難しいことをする必要はない。

 ここに揚げたいくつかの品を参考に、「これは!」と思った品に焼き目をつける。それだけで身近な「和食」に対する評価は激変するはずだ。ただし、決して焦がしてはならない。それは、料理も人間関係も同じことである。

関連記事

トピックス

店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン