ビジネス

飲みニケーション否定派が抱く「同調圧力への怒り」の鎮め方

 社内の人間同士で飲みに行く「飲みニケーション」、あなたはやってますか? ネットでは不評の習慣、最近は会社の制度として取り組むところも増えてきているそうで。コラムニストのオバタカズユキ氏が「飲みニケーション」の効用を考える。

 * * *
 このところよく、「飲みニケーション」という言葉を目にする。会社関係者との酒づきあいを表した造語で、誕生したのは高度経済成長期だろう。使用されていたのはバブル期ぐらいまで。以来、ずいぶん長いこと死語化していた。それが、数年前から復活、最近は議論の対象にもなっている。

 議論は大きく二極に分かれている。「飲みニケーション」を再評価する復活肯定派と、そうした世間の動きに眉をひそめる復活否定派だ。

 肯定派の多くが言っていることはわりとシンプル。仕事仲間と酒を飲みながら語らえば、職場では口にしにくい思いや情報を共有できて、親しくなれるといった意見だ。若手社員の多くが、実は上司から飲みに誘ってもらいたいと思っている、とのアンケート結果を示しながら、部下の扱いに困っている中年上司を励ます。そんなビジネス系のメディア記事もけっこうある。記事を自分のブログやフェイスブックなどで紹介して、「飲みニケーションの大切さを再認識しました!」などと書いている人も少なくない。

 対して、否定派はさほど簡単な話ではないという。一緒に飲んだとしても、相性の悪い人間同士は仲良くなれない。そもそも酒の力を借りなければ本音を出せないような職場のあり方自体が問題。それを「飲めば分かる」と安易に考える上司がいたら、パワーハラスメントの危険性を指摘したほうがいいのではないか。そのように肯定派を批判している。ブログでロジカルに批判する人もいれば、ツイッターで吐き捨てるように「飲みニケーション」を腐している人も多い。

 もちろん、中間派や是々非々派など、二極のどちらにも振れていない意見もあるのだが、ネット上ではどちらかというと否定派の声のほうが大きい印象だ。たしかに酒席ではそれこそ文字通り声の大きな者、力の強い者が場の空気を支配しがちだといえる。これまでそうした場での「被害」を我慢してきた人々が、「飲みニケーション」という言葉を目にした瞬間、「そんなのウソだ!」と告発しているようである。

 このような議論をいろいろ読んでいくと、酒席が好きな私としては微妙な気持ちになってしまう。どちらの言いたいことも分かる気がする。けれども、酒を仕事仲間と飲むというだけの行いに、これほど賛否両論が渦巻くというのも悲しくないか。嫌煙論争までは激しくないが、ここでも断絶が生まれている……と、うな垂れてしまうところがある。

 肯定派で「飲みニケーション」を押しつけるようなことを言っている人は滅多にいない。そのかわりに、少しでも目の前の部下との関係が滑らかになるなら、ぜひとも「飲みニケーション」を活用したい、という意気込みのようなものを大勢が発している。それだけ職場の仲間同士が一体感を持って働くことが難しくなっているのだなと思わされる。その根幹に、家族主義的な経営をキープするだけの体力が会社になくなったことがあるのは言うまでもない。

 否定派の声には、日本の職場がそこで働く人々に求めてきた、過剰な同調圧力に対する怒りの感情が含まれている。「参加は自由だとしても、同僚のみんなが参加するなら自分だけ断るわけにはいかない。それが日本の職場の平均像だ」という旨を匿名ブログで綴っている会社員がいた。いつまで経っても減る気配のないサービス残業と地続きの構造を「飲みニケーション」にも連想してしまうのだ。これもまたリアルな話である。

関連記事

トピックス

店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
乱戦の東京15区補選を制した酒井菜摘候補(撮影:小川裕夫)
東京15区で注目を浴びた選挙「妨害」 果たして、公職選挙法改正で取り締まるべきなのか
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト