ライフ

ベトナムで高まる日本語ブーム 現地で教えた元教師が述懐

92年ホーチミン市の光景

 ベトナムで空前の日本語ブームが起きているという。かつてホーチミン市で日本語教師をしていたフリーライター・神田憲行氏がベトナム人の日本語熱について語る。

 * * *
 9日の朝日新聞の報道によると、ベトナムから日本への昨年度の語学留学生は前年比の4倍になり、ハノイやホー・チ・ミンの日本語学校は、現地に進出している日本企業への就職を狙ったベトナム人学生たちが増えているという。

 私も今から20年ほど前、ホー・チ・ミン市で日本語教師をしていた。日本人教師が私を含めて6名、生徒数は約600人。市内でも最大規模の外国語学校だったと思う。生徒さんの大半は社会人だった。

 日本語を学ぶ目的は日系企業への就職や、日本人相手の商売であることは今と変わらないが、2国間の関係が大きく異なる。当時、日本はベトナムに経済制裁を加えており、まだ日本の大企業は本格的に進出していなかった。日本の領事館に長期の滞在届けを出している市内在住の日本人は100人前後だと言われた。また、入国するのにビザ、入国した後は滞在届け、他の都市に移動するには移動許可証が必要で、そんな面倒くさい国に観光に来る人も少なかった。

 そんな少ない可能性のなかで、大半の生徒さんは熱心だった。それだけでなく、次第に日本語が上達してコミュニケーションが密になってきて、驚くような知性のきらめきや豊かな人間性を感じさせてくれる人も多かった。彼らと毎日接していて、私は自分を省みるようになっていった。

 役割として「先生」をしていてそう呼ばれるが、それはひとえに私が「日本人」に生まれたからであり、日本人に生まれたことに私は1ミリも努力していない。翻って生徒さんたちはどうだろう……。他人にモノを教える行為は、人を謙虚にさせる。私はベトナムの人々を尊敬するようになった。

 あれから20年、当時月給20ドルの化学教師だった生徒さんは売れっ子ガイドとして活躍している。オートバイが買えず、サビの浮いた自転車で学校に通ってきた人はベトナムで大きなレストランを経営している。彼らは賭けに勝ったのだ。

 日本語を学んでくれる外国の人が増えるのは嬉しい。でもそこに、教える側の傲慢さが潜んではならない。日本を取り巻く国際環境が厳しい中、我々が学ぶべき相手は我々の言葉を学んでくれる人々である。

トピックス

岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン