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元自衛隊統合幕僚長 戦時下の米軍機撃墜体験を初めて明かす

 戦後の自衛隊の中心を担ったのは、実は旧日本軍の精鋭たちだった。日本陸軍飛行第244戦隊の専任飛行隊長だった竹田五郎大尉は、戦後、航空自衛隊のトップである統合幕僚会議議長(現在の統合幕僚長)まで上り詰めた。その竹田氏がこれまで語ることのなかった自身の戦争体験の一部を、初めて明らかにした。元日本軍エースパイロットたちの戦場秘話を集めた話題の新刊『撃墜王は生きている!』(井上和彦著、小学館)より紹介する。

 * * *
 昭和20年7月、飛行第244戦隊は、第11飛行師団の隷下となり、八日市飛行場(滋賀県)へと転進した。本土決戦に備えるためである。

 しかし、精鋭部隊である飛行第244戦隊は、陸軍にとっていわば“虎の子”であり、来たるべき本土決戦に備えて兵力を温存するため、敵機が来襲しても出撃することは禁じられていた。敵機の攻撃を、指をくわえて見ていろというのである。

 上級司令部からのこのような命令に、血気盛んな若いパイロットたちは、歯ぎしりするような悔しい思いにかられていた。

「いったいどうすれば、敵機と戦うことができるだろうか」

 竹田大尉はそのことを考え続けた。そして、ある妙案を思いついた。「『演習』で空に上がればいいんだ!」──隊長に具申すると、小林戦隊長は「よし明日は戦隊訓練だ!」と即決合意したのである。

「演習といっても、もちろん実弾を積んでいますから、上がったときに『たまたま』敵機が来たのだから、攻撃してもいいじゃないかという理屈をつけたわけです。昭和20年7月25日、その日は早朝から整備して上がりました。高度差をとって各飛行隊が敵機を待ち受けていたんです。

 私が指揮した飛行隊は、最上空について上空直掩を担当しました。空中戦闘というのは、相手機よりも高い高度に位置して攻撃をかければまず勝つんです。そうしたら運良く、十数機のF6F『ヘルキャット』が八日市飛行場を銃撃し始めたんです。ところが我々はすでに上空にあって、いまかいまかと待ちわびていたわけですから、まさに『飛んで火に入る夏の虫』でした。我々は高空の優位な位置から攻撃を仕掛けたんですよ。不意をつかれた米軍機は次々と友軍機に撃ち墜とされていきました」(竹田氏)

 このとき竹田大尉は1機を捕捉し、後方から近づいた。敵機は竹田機に気づいていないようだった。

「高度を下げていくと、私の目の前を敵機が飛んでいたんです。そこで機関砲弾を浴びせかけ、命中弾を食らわしたんですが、その途中で突如機関砲が故障してしまった。そこで私は上昇しながら機関砲の故障を調べているうちに、今度は私が敵機の銃弾を浴びることになったんです。別の1機が私の後方に忍び寄っていたんですよ。翼端に敵機の銃弾を浴びながら、私は急上昇しました。すると敵機は失速して落ちていったんです。

 もし乗っていたのが『飛燕』だったら、撃ち墜とされていたでしょうね。私は、『五式戦』のおかげで命拾いしましたよ」

 この日、飛行第244戦隊は大勝利を収めたのである。

※井上和彦・著/『撃墜王は生きている!』より

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