学費の安い公立で、高校入試がなく6年間一続きで教育が受けられる。そんな公立中高一貫校が人気を集めている。学校によっては合格倍率が10倍を超えることもあるが、新しい教育制度のため、実態がなかなか見えてこないという声も。公立の中高一貫校には、どんな特徴があるのか。
書籍『公立中高一貫校選び 後悔しないための20のチェックポイント』を上梓した学校教育ライター佐藤智氏にその魅力と内情を聞いた。
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現在存在する、少なくない数の職種が20年後、30年後にはなくなっているといわれています。つまり、「こんな仕事に就かせる」という教育には、もはやあまり意味がなくなっているのです。未来が予測できない社会においてどんな教育が必要か……それは、いかなる状況においても自分で考え、すべきことを見つけて推進できる力を養う教育だと思います。
公立中高一貫校の大きな魅力は、そうした新たな社会の中で道を拓く力を養おうとしている点にあります。
6年間という期間があるので、大学入試対応のためだけの学力育成だけでなく、思考させたり他者と協働させたりする時間を十分に確保することができます。また、適性検査(公立中一貫校の入学テストのこと)では、国語・算数など各教科の知識を問うのではなく、教科横断的な問題が出されて、子どもの「考える力」が測られます。どんな人間に育てていきたいかというメッセージが入学段階で示されているのです。
公立のため私学と比較して学費が安いという点や、大学進学実績が堅調な点ももちろん魅力の一つですが、実際に学校が行っている教育内容に目を向けることで、お子さんと公立中高一貫校の教育が合致しているかを推し量ることができます。
確認事項としては、例えば、以下のようなことが挙げられます。
・中高一貫校ならではのカリキュラムを作成できているか
・行事や部活動は6年一貫の強みを生かしたものになっているか
学校で教える内容は学習指導要領で定められていますが、公立中高一貫校の場合、例外措置が認められています。そのため、学校の特色をより強めた授業が行えます。具体的には、「グローバル教育」や「理数教育」など、各校の教育方針に合わせて特別な授業が設定できます。こうした授業が実際に実施されているかどうかを、学校の授業公開日などに行って確認するとよいでしょう。
また、中高一貫校では中高生が一緒になって行事や部活動をつくり上げることが多いので、一般の学校よりも規模は大きくなります。中学生は高校生を見てより成長を促されますし、高校生は中学生を引っ張っていくことによりリーダーとしての意識を養うことができます。実際に、学校に行事を見学しにいくことで、どんな人間教育が成されているかを垣間見ることができるはずです。
10月は公立中高一貫校の学校説明会が多く開かれる時期。確認すべきポイントを踏まえて学校に足を運んでみると、志望校を固めていくきっかけになるでしょう。子どもと学校のミスマッチを防ぐためにも、親御さんがよりシャープな「学校選択の視点」を持っていくことが重要になっていくのではないでしょうか。