台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されたシャープ、不適切会計問題に揺れる東芝など、日本の家電メーカーには厳しいニュースばかりが続いている。しかしながら、長年培ってきた技術力、商品開発力は伊達ではない。中国人が欲しがるのも、やっぱり日本の家電だ。いま一度、「日の丸家電」の強みを見直そうではないか。
「家電俳優」として家電に造詣が深い細川茂樹氏は、日の丸家電の日本人ユーザーに特化した製品作りこそが強みだと説く。
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日本の家電はとにかく多機能。それはときに批判されることもあるけど、僕はそうした製品に出合うたび、「何だコレは!」「どう使うんだ!?」とワクワクしてしまう。
例えば、東芝が開発した冷房・除湿機能を搭載するドラム式洗濯機。風呂上がりの洗面所や脱衣所をクーラーで快適にするという粋な計らいが気に入り、僕は即買いした。空気をキレイにするだけでなく、加湿機能までついた空気清浄機も日本のメーカーの開発だ。
高機能の製品に膨大な時間とコストをかけて、プラスアルファの機能を追加するのが日本家電の真骨頂と言える。技術者が「コレはどうだ」とオマケの機能を付け加えると、日本の消費者は「エッ、こんなの作ったの」「すごいじゃん」と面白がる。未知の機能でも受け入れて新しいライフスタイルを築き、生活を向上させてきたのが日本人と家電の関係だった。作り手と良好な関係で結ばれ、かつ多くの機能を使いこなせることが日本人ユーザーの誇りなのだ。
ところが今は効率が重視され、失敗や責任を怖れるメーカーは冒険せず、グローバル化を意識するあまり、日本家電はチャレンジ精神や高い志を失いつつあるように見えてしまう。PR戦略やアフターサービスを含め、“黒船家電”の優勢は否めない。
携帯電話同様、家電も日本人に特化した製品開発を「ガラパゴス」と批判されるが、僕はガラパゴスのままでいいと思う。高機能かつ、痒いところに手が届く日の丸家電をリスペクトして使い続ければ、その魅力は必ず海外まで伝わる。本当に日本製品が好きな外国人ならば、海を越えて日本まで買いにくるだろう。