老後の健康問題で最も辛いことは何か──意外にも「死」よりも「目が見えなくなること」をあげる人は少なくない。厚生労働省の調査(2008年)によれば、失明した人のうち、緑内障の割合は20.9%にのぼる。
とにかく失明を防ぐために最も大事なことは、早期発見に尽きる。緑内障かどうかは検査を受けてみなければ分からないからだ。大半の人は少し見えにくくなった程度では眼科を受診しないだろうが、こんな症状が緑内障に繋がることもある。
「目がかすんで何となく見えにくいと思っていたが、メガネを拭いても治らない。年のせいかと思っていたが、免許更新の際、片目が見えなくなっていたことが分かった」(埼玉県在住の40代男性)
「道路を歩いていると横から来る人にいきなりぶつかるようになって、『何かがおかしい』と感じた」(都内在住の30代後半の女性)
このように緑内障の初期~中期でもちょっとした自覚症状から、早期発見に繋がる人はいる。
日本緑内障学会評議員で東中野とみどころ眼科院長の富所敦男氏の協力を得て、7項目のポイントを挙げた〈緑内障チェックリスト〉を作成した。
1:前に比べ、何となく見えにくくなった(1点)
2:歩いている時にものや人にぶつかることがある(1点)
3:40歳以上である(1点)or 60歳以上である(2点)
4:兄弟姉妹が緑内障である(2点)
5:親が緑内障である(3点)
6:近視である(1点)or 強度近視である(2点)
7:偏頭痛がある(1点)
→1~7までの合計が6点以上の人は緑内障リスクがあるので眼科で検査を受診したい。
〈監修・富所敦男(日本緑内障学会評議員)〉
富所氏が解説する。
「見えにくくなったり、いきなりものや人にぶつかることがあれば要注意です。また、緑内障のリスクは加齢とともに高まる。遺伝要因と環境要因のどちらが高いかは不明ですが、家族が緑内障だと自分もそうなる割合は高いです」
視神経が弱い近視の人や、血流の悪さが原因の偏頭痛もリスク要因とされることが一部研究で分かっている。
「リストで6点以上だった人は既に緑内障になっている、あるいはなるリスクがあるため、早めに眼科を受診してください」(同前)
検査は、眼球内の水の圧力を調べる「眼圧検査」、視神経の減り具合を調べる「眼底検査」、見える範囲を調べる「視野検査」の3つで、全て合わせても早ければ1時間程度で済む。たった1時間が将来の「明暗」を分けるのである。
※週刊ポスト2016年5月20日号