広島県福山市にある塾「フジゼミ」塾長の藤岡克義さん(40才)は「人生、回り道してもマイナスじゃない」と説く。藤岡さん自身、中学で非行少年になり、高校に進学するも2度中退。19歳で一念発起し、「This is a pen.」から勉強して20歳で大学に進学した。そんな経験をもとに、“普通の道”から外れても再出発できる「再生の希望」を綴った著書『大切なのは「つまずき 寄り道 回り道」小さな塾「フジゼミ」塾長と生徒たちの昨日、今日、明日』が話題を集めている。なぜ人生に回り道が必要なのか? 同書より、一部引用して紹介する。
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ぼくは講演で話したり、塾生や塾生の保護者と話すときに、「寄り道や回り道は大切な経験です」と伝えています。それはなぜか。自分自身が、遠回りした人生を歩んだからです。
中学生で非行の道に足を踏み入れ、高校は2回退学になりました。親元を離れて、働いたり、地元に戻ってきて夕方から朝方まで働くゲーム喫茶の店長をやったり、ずいぶんと同級生たちとは違う道を歩きながら、20歳のときに大学に入学したのです。
まさか自分が大学に行くなんてことは、中学生や高校生だった頃には考えてもみないことでした。ましてや、希望通りの企業に就職して、そこを辞めて塾を開くなんてこともまったく予想していなかったことです。
想像もしていなかった未来が、いま現実になっているのは、ぼくが寄り道をしているなかで出会った人たちがいて、つまずいた経験がたくさんあるからだと思っています。大学に行くことができたのも、大学生というこの世で最も自由な身分と時間を謳歌して、就職できて、塾を開くことができたのも、寄り道や回り道をしたから。
ところが、いまの社会はそんな遠回りが許されないような空気感があるような気がします。子どもたちは、敷かれたレールの上に乗って、義務教育を終了したら、自動的に高校に行って、高校3年間を過ごした後、大学に行く。それが当たり前になっています。なにも考えなくても、さらに言えば、努力をしなくとも入れる高校や、進学できる大学は無数にある。
自動的に大学卒業まで進めてしまうのではないでしょうか。でも、その先に残るのは、就職難や不安定な職だったりします。いざ大学を卒業してみたら、やりたいことがわからないという子どもも多い。
将来どんな風になりたいのか、夢ってなにか、大学にはどうして行くのか、どこの大学に行きたいのか、もっともっと立ち止まって考える時間があってもいいはずなのに、それができなくなってしまっているのは、子どもにとってとてももったいないことだと思っています。