コラム

マイナス金利の「失敗」は決して見通し難いものではなかった

マイナス金利はなぜ失敗したのか?

 日銀の黒田東彦総裁が今年1月にマイナス金利導入を発表して以降、日本株は冴えない展開が続いている。黒田総裁による過去2回の金融緩和では株価が大きく跳ね上がったにもかかわらず、なぜマイナス金利ではそうならなかったのか。かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門の一員として活躍した赤城盾氏が解説する。

 * * *
 マイナス金利は、量的緩和が技術的に困難なユーロ圏などで採用されてきた非伝統的な緩和政策である。

 もし、銀行の預金金利や貸出金利が広範にマイナスになったとしたら、相応に景気を刺激するかもしれない。

 しかし、一般の預金からマイナスの利息を徴収することは、法律的にも政治的にも問題が大きすぎてほぼ不可能である。結局、マイナス金利は日銀が銀行から徴収するだけのものであり、その実質的な効果は銀行に対する課税に他ならない。

 そういう事情で、既にマイナス金利を導入したヨーロッパでは、銀行の利益が激減して銀行株が暴落していた。それを見てきた海外投資家は、当然、日本の銀行株の投げ売りに走る。連動して日本株全体が売られ、条件反射的に円が買われた。長短金利はたしかに低下したが、対外投資の拡大がもたらすはずの円安期待は、株安のリスクオフによって吹き飛ばされてしまった。

 日銀のマイナス金利政策は、量的緩和の行き詰まりという市場の懸念を煽るだけの失敗に終わったと評してよかろう。

 この失敗は、決して見通し難いものではなかった。その証拠に、マイナス金利導入が決定された1月の金融政策決定会合の票決は、5対4の僅差である。総裁1名、副総裁2名を除いた賛成票はたったの2票しかない。

 さらにいえば、賛成した2委員は、ともに金融業界の経験を持たない。金融政策に関してはほぼ素人であり、おそらく、執行部にいわれるがままに票を入れるマシーンのような存在なのであろう。

 即ち、金融政策のあり方に独自の知見を有し、将来その判断の正否に職業的な責任を問われることになる業界関係者は、全員が反対票を投じたのである。

 黒田総裁は、独断専行のスタンドプレーを好む。これまではそれで一定の成果も上げてきた。しかし、今後は、市場を動揺させないような丁寧なコミュニケーションを心がけて欲しい。

 マイナス金利のような分かりにくい政策を、審議委員すらろくに説得できない状況で、国民に押し付けるのは勘弁願いたい。

※マネーポスト2016年夏号

トピックス

【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
各局が奪い合う演技派女優筆頭の松本まりか
『ミス・ターゲット』で地上波初主演の松本まりか メイクやスタイリングに一切の妥協なし、髪が燃えても台詞を続けるプロ根性
週刊ポスト
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン