芸能

作曲家・水森英夫氏「紅白は演歌、歌謡曲にとって最高の舞台」

作曲家の水森英夫氏が紅白の思い出を振り返る

作曲家の水森英夫氏が紅白の思い出を振り返る

 年の瀬に放送される紅白歌合戦に出場することは、歌手にとって最大の名誉。そして、作曲家にとっては、自分の楽曲が紅白で歌われることもこの上ない喜びだ。作曲家の水森英夫氏が紅白の思い出を振り返る。

 * * *
 天童よしみさんが苦節23年で初出場を決めた1993年、私が作曲した『酒きずな』が選曲されました。私自身も44歳で初めて自分の曲が歌われる。それで会場に行ったのですが、控室前の通路は余りに人が多かったので、近くの東武ホテルに移動し、テイチクのディレクターと宣伝マンとテレビで観ました。天童さんは歌い終わると、唇を噛み締めた。私も堪えていた涙がウワッと飛び出した。皆で握手して喜んだことを覚えています。

 私は26歳で歌手を辞め、作曲家に転身しました。しかし、10年経ってもヒット曲が出ない。一方、副業で始めた赤坂のスナックは絶好調で、多店舗展開を考えていました。そんな時、店のお客さんに「最近、どんな曲を作ってるの?」と訊かれ、ギターで弾き語りをしました。

 その直後、店の構想を話すと「……それはどうかな。店は俺でもできる。でも、こんな良い曲は作れない。3年、必死に売り込むべきだよ」と説得されました。その曲が『酒きずな』だったんです。

 氷川きよしは高校卒業後、私の弟子になりました。何を歌わせても60点でしたが、股旅ものを歌うと90点近くなる。3年が過ぎた頃、事務所にデビューの話を持っていきました。当時、男性演歌歌手は不遇が続いており、9社断わられた末、長良プロダクションに決まった。

『箱根八里の半次郎』を聴いてもらうと、長良じゅん社長が「キャッチーな言葉がほしい」と仰り、『やだねったら やだね』というフレーズを入れました。僕が麻雀で振り込まれた時によく言っていたセリフなんですよ(笑い)。

 氷川には敢えて茶髪とピアスをさせ、ギャップを作った。本人から紅白出場の連絡があった時は、思わずバンザイをしました。紅白は演歌、歌謡曲にとって最高の舞台。弟子が私の曲を歌うことほど嬉しいことはありません。

【プロフィール】
水森英夫(みずもり・ひでお)/1949年9月18日生まれ、栃木県出身。1963年、『悲しきジンタ』で歌手デビュー。1977年、作曲家に。弟子の山内惠介も、2015年に『スポットライト』で初出場。

※週刊ポスト2021年1月1・8日号

関連記事

トピックス

被害男性は生前、社長と揉めていたという
【青森県七戸町死体遺棄事件】近隣住民が見ていた被害者男性が乗る“トラックの謎” 逮捕の社長は「赤いチェイサーに日本刀」
NEWSポストセブン
体調を見極めながらの公務へのお出ましだという(4月、東京・清瀬市。写真/JMPA)
体調不調が長引く紀子さま、宮内庁病院は「1500万円分の薬」を購入 “皇室のかかりつけ医”に炎症性腸疾患のスペシャリストが着任
女性セブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
1980年にフジテレビに入社した山村美智さんが新人時代を振り返る
元フジテレビ・山村美智さんが振り返る新人アナウンサー社員時代 「雨」と「飴」の発音で苦労、同期には黒岩祐治・神奈川県知事も
週刊ポスト
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
女性セブン
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
タイトルを狙うライバルたちが続々登場(共同通信社)
藤井聡太八冠に闘志を燃やす同世代棋士たちの包囲網 「大泣きさせた因縁の同級生」「宣戦布告した最年少プロ棋士」…“逆襲”に沸く将棋界
女性セブン