2004年の放送開始から18年目を迎えるプリキュア。その最新シリーズ『トロピカル~ジュ!プリキュア』が2月からスタートし、話題を集めている。コロナ禍の今、プリキュアが注目される理由とは? コラムニストのペリー荻野さんが綴る。
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2月28日にスタートした新番組『トロピカル~ジュ!プリキュア』は、なかなかに感慨深い内容になっている。今回のヒロインたちは、「コロナ禍でできないこと」を次々と体現して見せてくれるのである。
主人公の夏海まなつは、父が海の家とダイビングショップを営む南の島から、母が水族館スタッフとして勤める都会にやってきた中学一年生。「よーし、都会でトロピカッちゃおう」と張り切る彼女は、とにかくやる気全快、走れば砂嵐を巻き起こし、勢い余って鼻からシューッと蒸気を噴射する。
その後、浜辺で偶然「心の中にきらめく太陽を持った人間」を探していた人魚のローラと出会い、伝説の戦士プリキュア「キュアサマー」に変身して、人間のやる気を吸い取り支配とようと企む「あとまわしの魔女」の手下の怪物たちと戦うことになるのだ。
2004年から続くプリキュアシリーズ。チャーミングな女の子のチームが悪者を蹴散らす爽快なストーリーはすっかりおなじみだが、今回のポイントの第一は、変身に欠かせないのが「メイク」ということだ。まなつは島から離れ、元気を出そうと母にもらったリップをつけたり、初対面のローラに「メイクって魔法」と言いながら、リップを塗ってあげる。そして、いざプリキュアに変身するときには、人魚の国に伝わるキラキラのパクトを開け、「レッツメイク!!」と言いながら、チークやアイ、ヘア、リップとメイクを続けてチェンジして、華麗な姿になる。
視聴者は長く続くマスク生活で、思う存分メイクをして外出する機会は、減ってしまった。そこへ出てきた“メイクで変身するキャラクター“は、メイクの楽しさ、自由を思い出させてくれた気がする。
また、ヒロインが島から街へとのびのびと旅をしたことも刺激的。ぴかっと光る太陽の下、輝く海へと繰り出す…といった旅を自粛している視聴者も多いはず。あとまわしの魔女の召使であるチョンギーレが操る怪物ヤラネーダたちが、ヤシの木や水辺によくあるパラソルやチェアを巨大化させたものというのは、さすがトロピカルという感じだが、トロピカルという言葉自体、夏の解放感と旅心をそそるものだ。