日本でもようやくワクチン接種が本格化し始めた。ワクチンを接種していない人が、いまのような“大多数”から、“マイノリティー”へと変わっていく近い将来、少数派にはどのような視線が向けられるのか。すでにワクチンを接種した人の周辺や、コロナに敏感な職場で働く人に話を聞くと、あなたの身にも降りかかるかもしれない、うすら寒い未来が見えてきた。
前提として、昨年12月に成立した改正予防接種法の附帯決議に、知っておくべき大切なことがあると医療ジャーナリストの鳥集徹氏は語る。
「附帯決議には、“接種するかしないかは、国民自らの意思に委ねられるものであることを周知せねばならない”と明記されています。つまり、国民に選ぶ権利があり、打ちたくない人の権利も守られなければならないのです」
しかし、静岡県で看護師として働くAさん(50代女性)は、権利を守られている気はしなかったという。
「アレルギーがあるので絶対に打ちたくありませんでしたが、知らぬ間に接種スケジュールが病院に決められていました。勤務している病院の患者がコロナにかかったことがあったので、断れない状況でしたが、こちらの希望も聞いてほしかったです……」
医療現場では、選択の自由を行使するのも難しいのが現状のようである。日常生活で必要不可欠なサービスを受けるにも、“生きづらさ”を感じると答えたのは神奈川県のBさん(60代女性)。いきつけの美容院で、美容師から意外な言葉をかけられて、不安が募ったという。
「『次回来るときは、ワクチンを打ってから来てくださいね』と言われました。半分冗談のような言い方でしたけど、ワクチンを打たないとこれから通えなくなるかもと不安になりました。クリーニング店でもワクチンを打ったかどうかなんて世間話をされるし、まだ打ってないけど『打ちました』という方が日常生活が楽なんじゃないかな、と思ったくらいです」
ワクチン接種の有無で客対応がガラリと変わるなら、Bさんのように嘘をつくことが頭にちらつく。だが、そうはさせまいとするのが、「ワクチンパスポート」の存在だ。
「ワクチン接種の証明書です。一部の国ではすでに導入されていて、日本も経団連が導入を働きかけています。もし導入されれば、紙ではなくスマホなどに登録する可能性が高く、『持ってくるのを忘れちゃったわ』なんて言いづらい。嘘をつくことは許されないのです」(科学ジャーナリスト)
接種の有無がそのまま生活圏の通行手形になる日も近いというわけだ。