3度目の緊急事態宣言により、東京、大阪で無観客試合となったプロ野球。宣言前日の4月24日には斉藤惇コミッショナーらが会見を開き、政府への不満をぶちまけた。
「完全に統制された下で行なわれるプロ野球やJリーグと、非監視下で集合、飲食をするグループと、一律に緊急事態宣言下で全く同じ条件にとどめるのは我々としては納得がいかない」
「球場に5000人や1万人入れるときに、厚労省は絶対にCOCOA(接触確認アプリ)を義務づけると言ったわけです。だから入り口でお客さんにCOCOAを入れてくださいとやったわけですよね。そうしたらそのCOCOAは動いてなかった。こういうお粗末な姿でしょう」
なかでも記者らを驚かせたのがこの発言だった。
「五輪と絡んだ合理的な説明と経済的な補償がなければ簡単には受け入れられない」
プロ野球がダメなら五輪はどうなんだ──こう疑問を呈したのだ。これまで開催に向けて協力してきた球界トップの言葉は重かったが、翌日の全国紙やスポーツ紙の見出しは「補償を要望」ばかりで、多くのメディアが「五輪と絡んだ」発言そのものを報じなかった。
メディア文化評論家の碓井広義氏は指摘する。
「メディアは本来、開催の是非を問う立場ですが、本音は開催してほしい。逆風の中で、波風を立てないようにしているのではないか」
発言をカットした大手メディアは五輪特需を当て込んでいるだけでなく、こぞってスポンサーになっている。こちらも“大本営発表”に近づきつつある。
※週刊ポスト2021年5月21日号