厚労省が40~70歳の男女に実施した『国民健康・栄養調査報告』(平成26年)によると、高血圧(140/90mmHg以上)の割合は男性60%、女性40%に上る。高血圧と診断されれば、降圧剤は「生涯飲み続けなければならない薬」とのイメージが強い。
しかし、徳島県の坂東ハートクリニックには、全国から“降圧剤をやめたい”という患者が訪れ、「5年ほど前から新規患者を受け入れられない」ほどだという。
同院の坂東正章院長は、「正しいプロセスを踏めば、多くの高血圧患者は降圧剤を減量し、最終的にはやめることが可能です」と語る。そのために必要なことは何か。
「降圧剤をやめられない人の多くが、正しく血圧を測れていません。血圧を下げる第一歩は、自宅で正確に血圧を測ることなのです」
坂東医師によると、緊張しがちな病院で測定するより、自宅で計測した家庭血圧が実態に近い数値になるという。朝なら起床後1時間以内で朝食前、夜なら就寝前の排尿後。血圧計は誤差が少ない上腕式を使用し、椅子に座った状態で、腕帯は心臓の高さにし、血圧計に正面を向いた無理のない姿勢で計測する。
「前屈みや正座だと数値が上がります。私の上の血圧は110~120ですが、前屈みで半身の姿勢で測定したところ143と計測されました」
坂東ハートクリニックでは、血圧の測り方を指導したうえで、降圧の目標数値を決めていく。
「たとえば降圧目標が家庭血圧で135/85未満の患者さんの場合、130未満が3日間続いたら薬を減らします。この指導を繰り返します」
坂東医師は家庭血圧が120台で維持できるようになれば「通院の必要なし」と伝えるという。
「家庭血圧の計測を習慣づけると、どのようなことで自分の血圧が上昇するのかわかるようになります。代表的なのは外食による塩分過多、睡眠不足、家庭や仕事のストレスなどですが、なかには蛙の鳴き声を聞くことで血圧が上がる人もいます。自分の血圧が変動する要因を把握できれば血圧上昇を避けるための習慣もわかってくるのです」