ライフ

鮮やかによみがえる「終戦と復興」写真のカラー化がもたらす記憶の“解凍”

1946年1月25日、新発売の煙草「ピース」を求める人々が銀座松屋に列を成す。写真=庭田杏珠 × 渡邉英徳『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社 2020年)より

1946年1月25日、新発売の煙草「ピース」を求める人々が銀座松屋に列を成す。写真=庭田杏珠 × 渡邉英徳『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社 2020年)より

 白黒写真を解析して彩色する手法が進化し、遠い昔に撮影された風景もリアルに迫る。東京大学大学院教授の渡邉英徳氏らのチームは、「忘れ去られようとしている貴重な記憶を未来に残したい」との想いで白黒写真のカラー化に取り組んできた。

 カラー化するには、まず「空は青」「雲は白」という一般的なデータを持つAI(人工知能)が、形状から判断して自動で色付けを行なう。だが、それはまだ推定の段階だ。たとえば原爆雲は、戦争体験者や専門家の指摘により本来の色へと着実に近づいていく。

 渡邉氏によれば、彩色にはAIによる自動色付けを行なうが、そこで色が確定するのは全体の1割程度とのこと。モノクロの世界ではピンクも黄色も薄緑も淡いグレーとなるため、正確な着色には資料や当時を知る人、専門知識を持つ人との対話が欠かせない。特に戦争体験者の多くは高齢で、記憶も曖昧になりつつある。

 しかしAIで大まかにカラー化された写真を前にすると、彼らの記憶が「解凍」されたかのように鮮烈によみがえり、不確かだった服や花の色が瞬時に判明することもあるという。あとは画像編集ソフトを用い、彼らの情報に沿うよう部分ごとに色補正を重ねる手作業が続く。こうして完成したカラー化写真は8月6、7日にニューヨークで開催される「テクノロジーでつながる平和活動展」でも展示されるなど、国境を超え記憶を紡ぐ力を持つのだ。

 ここでは、忘れ得ぬ殲滅の兵器、原爆を撮ったものを、玉音放送とともに降伏の事実を知った終戦のときを迎えた様子、生き残った者たちが復興をめざす戦後のカラー化写真をお届けする。

【プロフィール】
渡邉英徳/東京大学大学院情報学環教授。「ヒロシマ・アーカイブ」をはじめ記憶の継承をテーマに研究を進める。

※週刊ポスト2022年8月19・26日号

1945年9月8日、原爆投下から約1か月経った広島市内を歩く男女。写真=庭田杏珠 × 渡邉英徳『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社 2020年)より

1945年9月8日、原爆投下から約1か月経った広島市内を歩く男女。写真=庭田杏珠 × 渡邉英徳『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社 2020年)より

関連記事

トピックス

一部メディアが盛んに報じている「佳子さまの結婚のお相手候補」(写真/宮内庁提供)
【本命は島津家の御曹司か?】過熱する佳子さま「結婚相手報道」 眞子さんと小室圭さんの騒動で「佳子さまのお相手のハードルが上がった」
週刊ポスト
二児の母にして元クラリオンガールの蓮舫氏
【全文公開】都知事選立候補表明の蓮舫氏、不可思議な家族関係 元自民大物議員と養子縁組した息子との“絶縁”と“復縁”大騒動
女性セブン
全国ライブ中の沢田研二
《ファンの声援にブチ切れ》沢田研二が「見てわからんか!」とステージ上で激怒し突っ込んだ「NGワード」
NEWSポストセブン
日本中を震撼させた事件の初公判が行われた
【悲劇の発端】瑠奈被告(30)は「女だと思ってたらおじさんだった」と怒り…母は被害者と会わないよう「組長の娘」という架空シナリオ作成 ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン
長所は「どこでも寝られるところ」だと分析された(4月、東京・八王子市。時事通信フォト)
愛子さま、歓迎会の翌日の朝に遅刻し「起きられませんでした」と謝罪 “時間管理”は雅子さまと共通の課題
NEWSポストセブン
中村芝翫と三田寛子
《愛人との半同棲先で修羅場》それでも三田寛子が中村芝翫から離れない理由「夫婦をつなぎとめる一通の手紙」
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告
【父親とSMプレイの練習していた】瑠奈被告(30)の「女王様になりたい」に従った従順な両親の罪
NEWSポストセブン
藤井聡太八冠、満員電車で予期せぬハプニング 隣に座った女性が頭をカックンカックン…冷静な対応で見せた“強メンタル”
藤井聡太八冠、満員電車で予期せぬハプニング 隣に座った女性が頭をカックンカックン…冷静な対応で見せた“強メンタル”
女性セブン
佳子さま
【不適切なクレームが増加?】佳子さまがギリシャ訪問中に着用のプチプライス“ロイヤルブルーのニット”が完売 それでもブランドが喜べない理由
女性セブン
田村瑠奈被告
【戦慄の寝室】瑠奈被告(30)は「目玉入りのガラス瓶、見て!」と母の寝床近くに置き…「頭部からくり抜かれた眼球」浩子被告は耐えられず ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン
中村芝翫と三田寛子(インスタグラムより)
《三田寛子が中村芝翫の愛人との“半同棲先”に突入》「もっとしっかりしなさいよ!」修羅場に響いた妻の怒声、4度目不倫に“仏の顔も3度まで”
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
【独占スクープ】中村七之助が京都のナンバーワン芸妓と熱愛、家族公認の仲 本人は「芸達者ですし、真面目なかた」と認める
女性セブン