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【書評】『Tシャツの日本史』 歴史の軸となるのは「イン」するか「アウト」するか

『Tシャツの日本史』/高畑鍬名・著

『Tシャツの日本史』/高畑鍬名・著

【書評】『Tシャツの日本史』/高畑鍬名・著/中央公論新社/2200円
【評者】武田砂鉄(フリーライター)

 年がら年中、Tシャツにサンダルで出歩き、対談相手から「キミは銭湯帰りみたいな格好をしているね」と言われた経験もある自分が読まないわけにはいかない一冊だ。ファッションの世界は「逆に」を繰り返しており、これがブームだったけど、これからは逆にこうするのがいい、となる。母親のタンスから引っ張り出して着てみたら可愛くて……という意外性をめぐる語りをよく見聞きする。

 Tシャツの歴史の軸となるのは、裾をインするかアウトするか。自分(現在42歳)は学生時代からずっと「アウト」だが、その前の世代にも後の世代にも「イン」の時代がある。今から20年前、オタクの男性が主人公となった『電車男』がブームとなり、その男性は裾をインしていた。

 それは、ダサい男性の象徴でもあった。ところが、最近では「衣装合わせのときに、カーテンの奥で着替えた俳優たちが、Tシャツをタックインして出てくるようになった」とスタイリストが語るように、インするのがトレンドになった。

 ファッションは個性を際立たせるものでもあれば、同調圧力を受けるものでもある。その昔、Tシャツにジーンズ姿で写真に収まっていた白洲次郎の存在はモダンに映ったが、それには「白くまぶしかったTシャツが、1940年代に国防色に染まった」ことからの脱却、自由を取り戻す意味合いもあったのか。

 Tシャツにまつわる歴史を事細かに調べるあまり、同じアニメ作品の中でTシャツのインとアウトが分かれており、モブキャラ(ストーリーにかかわることがない群衆や通行人など)を制作会社に任せたことで主要なキャラとのズレが生じていると考察するくだりなどに唸る。

 古着のバンドTシャツが高値で取引されるなど、Tシャツをめぐる変化が続く。こちらはアウトにしっぱなしだが、これからどう評価が変わるのか。

※週刊ポスト2025年10月10日号

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