ライフ

家失った被災者「金持ちも、モノ持ってる人も羨ましくない」

岩手県・釜石市。3・11まであと60日を切って、希望の年へと踏みだした街は、いまどうなっているのか。人々の生活感覚に、どんな変化が起きているのか。作家の山藤章一郎氏が報告する。

* * *
釜石市第6仮設住宅――ここは、内閣府の資料が指摘する〈超高齢社会〉を迎える予習の場といわれる仮設団地である。

海と、のっぺらぼうを見下ろす町はずれの240戸に、商店街を完成させた。美容室、薬局、電気店、酒屋、食料品店。みな、プレハブである。

津波に破砕された地元のスーパー〈みずかみ〉もここに仮設で再オープンした。住居は3種に分かれ、170戸が一般ゾーン、10戸が子育てゾーン、これに60戸の高齢者、障害者を守るケアゾーンがある。

中心に大手介護事業者が運営するサポートセンターもある。脳トレ体操、高齢者のデイサービス、買い物の手伝いなど、介護士らが24時間待機する。女性だけが集って、趣味やおしゃべりができるママハウスも用意された。

ケアゾーンの小渡正夫さん(70)、寿子さん(66)夫妻の住まいに邪魔した。夫は、新日鉄釜石の元ラガーマン、伝説の7連覇の少し前のウイングだった。現在、肺がんで通院している。寿子さんは陽気に笑い飛ばす。

「こんなことになると思わなかったから懐中電灯2個持って逃げたの。だからな~んにもないの。

下駄箱に靴は2足、お皿もお茶碗もふたつずつ。あとはカセットコンロと鍋と水があれば暮らせるのよ。前はあれも要る、これも欲しいだったけど、3月11日からコロッと変わって、そういう気持ちは全部なくなった。

アパートより自宅がいいと思ってたけど、借家がいいわ。自分の土地がいくら増えても全部、地球のモノでしょ。流されれば一瞬で自分のモノじゃなくなる。いまは、お金持ちも、モノを持ってる人も羨ましいと思わない」

※週刊ポスト2012年1月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン