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リストラ後に残った不要な人は“柵で囲った牧場”にと大前氏

 日本企業の大幅リストラが続いている。だが、分社化ばかりが目立つ、まるで“引っ越し”のようなリストラに、大前研一氏は疑問を呈する。本来、あるべきリストラとはどんなものなのか。大前氏が解説する。
 
 * * *
 本社部門とは、もともと社長1人がやるべきことが分化したものである。創業時は社長本人が従業員の採用から雑巾がけまで1人で全部やっていたはずだ。それが会社が大きくなるにしたがって分化し、本社部門になったのである。

 そのうち支店や営業所ができてくると、支店長や営業所長の仕事の大半は本社対応になり、経理部や人事部や総務部など本社の各部門が要求してくる同じような内容の本社向け報告書をバラバラのフォーマットで作成する業務に追われることになる。

 だから私が企業の間接業務を簡素化する仕事を請け負った時は本社部門の人員の25~40%削減を目指し、まずはフォーマットの統一からスタートする。そうやって重複する間接業務をどんどん整理していくと、人員を25~40%削減しても、業務には何の支障もないのである。

 しかも、そこまで間接部門をカットすると、支店や営業所の「内向き」の仕事が減って「外向き」の仕事ができるようになる。本社部門の人員削減には人件費削減にとどまらないメリットがあるのだ。

 フォーマットを統一したら、次は本社部門の中で「要る人」と「要らない人」を識別し、要らない人に辞めてもらわなければならない。もし要らない人も残しておかざるを得ないなら、柵で囲った牧場のような、他の部署とは区別した部署に所属させ、要る人と分けなければならない。

 なぜなら、会社の組織は絶対に“霜降り”にしてはいけないからである。事業には要る人と要らない人しかいない。赤身(要る人)と脂身(要らない人)が混ざって霜降りになっていると、必ず要らない人がはびこって要る人の仕事の足を引っ張るのである。

 たとえば、要らない人は「1の仕事」を0.7しかしない。0.3は遊ぶから、本来2人でできる仕事を3人でやることになる。また、この人たちは午後2時には仕事が終わるので、5時までは仕事をしているふりをする。
 
 もっと悪質な場合は、仕事もないのに残業しているふりをして、残業代まで稼いでいる。そういう“0.7社員”がいればいるほど、一生懸命仕事をしている社員に悪影響を与えて組織全体が腐っていくのである。

 だから必ず全員が「1の仕事」をするように、要る人だけを囲い込み、要らない人をとことん追い出して脂身を削ぎ落とさなければならないのだ。私の経験では、本社部門の人員を40%削っても支障があった会社はないので、1回、目をつぶって40%リストラし、仕事を定義し直すべきである。

※週刊ポスト2012年7月13日号

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