国内

大前研一氏 風力など再生可能エネルギー比率20%は非現実的

 東日本大震災から1年半が経とうとしているのに、いまだに国の新たなエネルギー政策はまとまっていない。各事故調の報告書は「人災」「不手際」を指摘するだけで事故の本質に迫れず、原発の存廃論議は平行線だ。日本の命運を決する次なるエネルギー戦略はどうあるべきなのか? 元原子炉設計者でもある大前研一氏が、検証する。

 * * *
 政府の中長期エネルギー政策では2030年時点で、原発依存度に関係なく、再生可能エネルギーの比率を30%にしている。このうち水力発電が約9%だから、水力以外の再生可能エネルギーで約20%ということになる。

 水力以外の再生可能エネルギーでは、風力、太陽光、地熱の三つが有力といわれている。しかし、風力は風頼み、太陽光はおひさま頼みであり、稼働率は風力が平均20%、太陽光は同15%くらいでしかない。したがって風力と太陽光で20%を安定供給するためには、極論すれば、日本に必要な電力量の「100%」を発電できる施設を作らなければならなくなる。これは明らかに非現実的である。

 なぜなら、太陽が照りつけ風が吹きまくった時はこの二つだけで全体の需要を満たしてしまうので、火力や原子力を止めなくてはならない。しかし、火力や原子力の大型発電施設は需要に合わせて操業するには適していない。これほどの容量を蓄電池に貯めることもできない。

 一方、風も太陽もダメ、という時は火力で追加的に20%発電しなければならない。これは普段から20%の余剰発電力を温存しておかねばならない、という超無駄なことになる。原子力のパーセントを決める前に再生可能エネルギーを30%と決めたこと自体に大きな問題があるのだ。

※週刊ポスト2012年8月17・24日号

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン