国内

大津いじめに教育長「家庭に問題あるなら学校が騒いではだめ」

 次々と“教育ムラ”の隠蔽体質が明らかになる滋賀県大津市のいじめ自殺問題。ジャーナリストの鵜飼克郎氏が、役人たちの“事なかれ主義”の実態を報告する。そして、同氏は澤村憲次・大津市教育長にインタビューを行った。

 * * *
 7月4日、テレビや新聞が、存在すら公にされていなかった2回目のアンケートの回答内容を報じると、校長はすぐさま反応した。朝の校内放送で「報道内容には嘘がある。自殺の練習は嘘です。マスコミの人の質問には答えないように」と生徒たちに言い訳し、口止めまでした。

 事実が露見しても、組織防衛を続けた。生徒たちはそれを見抜いていた。「新聞に出るたびに先生の言うことがコロコロ変わる。嘘をついているのは校長先生のほうだとみんなわかっている」(中1男子)

 そして、この状況でなお、「いじめ以外の家庭での問題がある」と主張を続けたのが、澤村憲次・大津市教育長だった。同氏への直撃取材では、こんなやりとりもあった。

――なぜこの期に及んで「男子生徒の家庭に問題があった」と言うのか。

「(家庭の問題は)具体的に言えない。いろいろ誤解を招いていることはわかっているが、学校からは亡くなったお子さんの家庭環境に問題があると聞いている。学校に関係すること、本人に関係すること、家庭に関係すること、この3つを調べなさいと文科省は指導しています。学校については私たちが調べるが、他の2つは調べられない。警察や外部の第三者委員会が明らかにしていくわけだが、全体を見ないと真相がわからないのでは、と言っているのです」

――いじめはあった?

「我々はいじめがあったと認めている。ただ、加害者の子供たちは、遊びやゲームの中のことでいじめだと認めていない。そこは私もわかりませんが、文科省が言っているいじめに該当するでしょうから、いじめはあったと思っています。学校は、亡くなるまでいじめがあったという認識がなかったというから、なかったのだと思います」

 周到に「文科省が…」「学校が…」といったフレーズを挟み込む。声を荒らげることもない。「命の重みを感じて対応しているのか」という問いに対してはこう答えた。

「当然のことながら、一報を聞いた時にどうしちゃったんだ、何があったんだと驚きました。ただ、ご遺族から『これは学校の問題じゃない。家庭の問題なので表に出さないで欲しい』と申し出があったと聞いている。もし家庭に問題があるなら、学校が大騒ぎしてはいけないと判断した。3日目になってご遺族から『いじめがあったのではないか』と申し出を受けた。校内でも生徒たちが2日目から『いじめがあったのでは』と騒ぎ始め、学校も調査を始めたということだった」

 嘘だと断じるのは厳しすぎるとしても、少なくとも問題を大きくしないほうへと逃げようとした印象は拭えない。

※SAPIO2012年8月22・29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン