11月に開催されていた欧州遠征のテストマッチで2連勝という快挙を成し遂げ、2019年に母国開催となるワールドカップ(W杯)に向けて幸先の良いスタートを切ったラグビー日本代表。だが、「日本ラグビー史上最高の司令塔」と称された松尾雄治氏は、敢えて日本ラグビー界の将来に苦言を呈す。
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最近の日本代表のラグビーを見ていて、「日本のラグビーはどこに行ってしまったのだろうか」というのが正直な感想ですね。
日本ラグビーはパスとキャッチの多いチームプレー、いわゆる「全員ラグビー」が信条だったでしょう。一人では何もできないけれど、全員で頑張って点を取るというラグビーの根本精神が、日本の企業や教育に受け入れられてきた歴史がある。
私の現役時代も「松尾のチーム」などと評されたことがありましたが、チームメートがいたからこそ勝てたのです。今こそその原点に立ち返らねばならない。日本ラグビー界は今、発想を転換し、長い目でラグビーの発展を考えるべき時に来ています。
課題は色々ありますが、まず今の日本ラグビー界にはやはり外国人選手が多すぎます。日本代表だけではなく、トップリーグや学生まで含めると外国人選手は軽く200人を超える。それも、日本でプレーさせる目的が「チームの勝利」のためだけというから問題です。
実際その弊害として、頑張っても、外国人選手に代表やチームでのポジションを奪われ、子供の頃からの夢が終わってしまうという日本人選手がたくさんいる。それでは本末転倒です。
確かに外国にはいい選手がたくさんいるし、そういった選手が3~4人加わればチームは強くなる。しかし、それはパワー的に強くなるだけで、チーム全体、日本全体の底上げには繋がらない。外国人選手の「力の借り方」が間違っているのです。
私は強い日本ラグビーを構築するため、外国人選手には「練習相手」になってもらえばいいと考えます。例えば、助っ人として来日している外国人選手だけでチームを作り、日本代表との練習試合を組む。日本代表も色んなパターンで招集し、様々な可能性を試す。
そしてこの試合は全国各地を転戦する。試合開催地に合わせて、西日本の選手を中心に招集したり、関東のチームだけで外国人選手と戦ってみる。選手強化の観点から見てもメリットは大きいが、何より、この全国行脚はファンの拡大に繋がります。
※週刊ポスト2012年12月7日号