一方、日本にも、これ以上の円安に対する懸念がある。貿易赤字だ。財務省が4月に発表した3月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆4463億円の赤字。前年同月は3568億円の赤字だったため、前年比では赤字額は約4倍になっている。しかも、貿易赤字は21か月連続。
中身を見てみると、輸出額は前年同月比1.8%増にとどまっているが、輸入額は18.1%増になっている。円安になれば輸出が増えると言われていたが、現実は輸出が伸び悩み、輸入が大きく膨らむ結果になっている。アベノミクスのスタートから1年以上が経過しており、経済の教科書的に言えば、すでに「Jカーブ効果」(為替レートが切り下がると当初は貿易収支が悪化するが一定期間後は改善する)が起きている時期のはずだが、そうはなっていない。
これまで、日本経済には円安が良いとされてきた。だが、その考えを根本的に見直す必要があるのではないだろうか。日本の金融当局も、現時点からの大幅な円安には警戒感があると思われる。
※マネーポスト2014年夏号