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「弱者が強者の嫌がる行為しても許容すべき」がネットの常識

 ネットの世界において「弱者」の取り扱いは非常に繊細だ。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏がその面倒くささについて解説する。

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 他人を責め、クレームをつけることの正当性がいかにあるかをアピールするのが今のトレンドである。さらには、当事者でもないのになぜか特定人物や組織を糾弾する「怒りの代理人」もウジャウジャ湧いてくるからタチが悪い。

 たとえば、前田敦子のモノマネをしたお笑いタレントのキンタロー。と小林礼奈は「バカにし過ぎている」と前田のファンから叩かれまくり、「あっちゃんに謝れ!」と怒られた。小林は芸能界から去った。もはや前田のモノマネをすることはリスキーな行為なのである。

 キンタロー。や小林を叩いている瞬間は楽しいのだろう。自分が絶対的正義の行為をし、あまつさえ、前田のことを助ける白馬の王子様になったような気分になれるんだからな。ただし、この「完全正義」のつもりであっても、冷静な目で見ればただの非常識な人であることも。嵐のライブのチケットはなかなか当たらないことで知られているが、チケットが当たったことを喜ぶツイートをすると叩かれるのだ。叩きの文句は「落選した人の気持考えろ、まず犯罪。人としてありえん」が代表的だ。

 ネットにより誰でも公の場に意見表明ができるようになったことから、権利意識が増し、不快なこと、傷ついたことを表明し、謝罪を要求しなくちゃ損、損! 状態となっている。そして、強者は徹底的に叩かれる。約220万のフォロワーを持つきゃりーぱみゅぱみゅに街中で会い、素っ気ない対応をされた匿名IDの女性がツイッターで「性格悪い」と書き、盗撮画像も公開した。

 これをきゃりーが晒したら、「あなたの影響力を考えなさい!」ときゃりーが叩かれるのである。ここでは「フォロワー多い人=強者」「フォロワー少ない人=弱者」の構図があり、「弱者が強者の嫌がる行為をしたとしても強者は許容すべき。批判するなどもってのほか」となっている。その一方できゃりーのファンも、女性に対して「ビビってツイート削除する前に謝罪しろよ」と書き、「謝罪無間地獄」状態である。

※SAPIO2014年9月号

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