国内

空自パイロット試験不正告発者 幹部に5時間の威圧受け辞職

 昨年まで、青森県にある航空自衛隊三沢基地の空自第3航空団飛行群本部で空士長を務めていた山本和樹氏(仮名)。パイロットの飛行管理や資格管理を主な任務とする飛行管理員を務めていた山本氏は、覚悟の告発をした。

 空自のパイロットが1年に1度受けなければならない資格試験で、不正が横行しているという内容である。試験会場がなく、試験監督もいない。問題用紙と答案用紙をパイロットに渡し、空いている部屋で解かせる。解答を調べながら答案をまとめてもバレないので、落第する人はほとんどいなかった。ベテラン幹部たちには模範解答のコピーさえ渡されていたという。組織的なカンニングの横行に、山本氏は、やがて罪の意識に苛まれるようになった。
 
「私はパイロットたちの適性を見極める立場。それが遺憾ながら組織的なカンニング、点数の改ざんに手を染めてしまった。それらの行為は公文書偽造罪にあたる可能性もあります。何より国防を担う立場にいる人間が、不正をしていいわけがない。私は罪の意識に押しつぶされそうになり、昨年、航空自衛隊を辞めることを決意したのです」(山本氏)
 
 山本氏は直属の上司である主任に辞意を告げた際、理由を問われ、試験の不正と、その片棒を担ぐことに耐えられなくなった旨を伝えた。驚いたことに上司は「自衛隊のやり方が合わなかったんだな」と、あっさり受け流したという。
 
 上司の反応にショックを受けた山本氏は、自衛隊員の秩序維持に従事する警務隊に告発することを決意した。告発文書を提出し、ヒアリングも受け、不正の中身を説明した。彼らは驚いた様子で、不正を知らなかったようだったという。
 
 警務隊に告発したことで、不正を正すことができる──当然、山本氏はそう考えた。しかし、期待とは真逆の結果が待っていた。
 
「私の告発文には、不正に加担していた上司の実名を挙げていたのですが、彼らから即刻、事情聴取を受けました。三沢基地の複数の幹部に囲まれ、私は恐怖を覚えるほど厳しく詰問されました」(山本氏)
 
 山本氏は彼らに脅迫めいた言葉を何度も浴びせられたという。
 
「ある幹部からは『こんな文書を提出するなら名誉毀損で訴えるぞ。頭で戦うか? 俺は負けない』といわれ、別の幹部からは『俺は法律に詳しいんだ。政治家の知り合いもいる。やり合うなら全力で潰す』とか『国家権力を使って追い詰めるぞ』とまでいわれました。5時間にわたる彼らの威圧的な態度と言葉に耐え切れず、『この告発を取り下げろ』という彼らの要求をそのときは受け入れてしまいました」(山本氏)

 これが事実であれば脅迫罪にあたる可能性がある。

 しかし翌日、このまま不正を野放しにすることだけは避けたいと思い、三沢基地を所管する北部航空方面隊に内部通報し、自衛隊を辞職した。

※週刊ポスト2015年2月6日号

関連キーワード

トピックス

米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
埼玉では歩かずに立ち止まることを義務づける条例まで施行されたエスカレーター…トラブルが起きやすい事情とは(時事通信フォト)
万博で再燃の「エスカレーター片側空け」問題から何を学ぶか
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン