数々の検問所を通過して、ラッカ市内に入ったのは夕方5時。夕日に照らされたユーフラテス川を越えて15分ほど南下すると大きな建物の敷地に入った。規模と造りからして以前は学校だったと思われる。庭には韓国製セダンや日本製4WDなどが停めてあった。武器を手に覆面やスカーフを巻いた男たちが広場の隅々で談笑している。ついにISILの中枢に来たのだ。
ここは、シリア国内はもちろん外国からISILへの参加を希望する兵士たちが最初に送られる施設だった。
様々な国籍の兵士が集結し、あちこちからアラビア語、フランス語、ロシア語などが聞こえた。英語が達者な若者に呼び止められたので話を聞くと、彼は22歳のエジプト人で裕福な家庭を捨ててISILに参加したという。彼の案内で建物の内部を案内され仲間の兵士たちに紹介された。皆、日本からはるばるやってきた私を歓迎してくれた。さっきまでの不安は徐々に安堵へと変わっていった。
大部屋では20代の10人の兵士が、床の上で車座になり食事をしていた。兵士たちに招かれ食事を共にした。
「美味しいですか?」
隣に座っていた大柄な若者から話しかけられた。彼はオーストラリアから来たという。
「シリアに来て1年が経ちました。オーストラリアでもモスクに通っていましたが、そこには諜報機関に通じているスパイがたくさんいて心が休まることがありませんでした。シリアに来て初めて兄弟と呼べる男たちに出会いました」
話していると、反対側にいたアラブ系の若者が聞き耳を立てていたので、「どこから来たのか」と聞くと、シンガポールだと言う。それから、「スイス、フランスなどヨーロッパから来た戦士も多いです」と言った。
※SAPIO2015年4月号