「消費税率10%への引き上げを延期して以来、官邸では財政再建への熱意がすっかり冷めてしまった。黒田さんは、日本は財政再建に取り組まずにこのまま国債をどんどん発行できるような状況ではないのだと、総理や閣僚に強く釘をさしたかったのだと思う」
日銀総裁が国の経済財政運営の基本方針を決める“御前会議”で国債価格への懸念を述べたこと自体、国債売りのきっかけになりかねない重大な発言だ。そもそも国民の前で経済再生を強調してみせる姿と180度違うだけでも重大な国民への背信である。
だからだろう。問題部分の発言については、黒田氏が、「ここからは議事録に載せないでほしいが」と断わって語り始めたという情報や、事務方の判断で削除されたという情報がある。
当日の議事録(議事要旨)を見ても、黒田氏の箇所には「日本銀行としては、政府による財政健全化に向けた取り組みが着実に進んでいくことを強く期待している」という当たり障りのない言葉が記録されているだけで、件の国債危機発言は1行も書かれていない(内閣府の担当者は「議事要旨は事前に関係者に確認していただき、削除や加筆の要請があれば反映させている」と説明)。
※週刊ポスト2015年4月10日号