確かに放送法では、担務を公表して同意を得るとは書いていないが、誰が何を担当するのか分からなければ、同意はできない。それで議論になったこともあった。以上の通り、理事会の審議結果には拘束力がなく、経営委員会の権限も限定的なため、籾井会長の独裁を許すことになっている。
事実、籾井会長の存在によって、現場は萎縮している。そのことは、例えばNHKのOB1400人が籾井会長の罷免要求を申し出たことにも表れている。1400人といえば、NHKの関連会社も含めた総数の1割に相当する。OBとはいえ、それだけの関係者が籾井会長を問題視しており、当然、現役局員も同じ思いだと察せられる。
また籾井会長は、強権人事も行っている。理事に日付白紙の辞表を提出させる一方で、昨年3月、湧川高史・経営企画局副部長が秘書室長に特進した。湧川氏は、国会審議で籾井会長を支えてきた人物だ。このような人事が行われれば、現場が萎縮するのは当然だろう。
経営委員会の過半数の賛成が得られれば、籾井会長を罷免することが可能だった。だが仮に罷免要求が否決された場合、籾井会長はむしろ「信任された」ことになり、それでは逆効果と考え、なかなか罷免動議を出すこともできなかった。
経営委員会の中には、官邸が支えているうちは厳しいという思いもあったのではないだろうか。
※SAPIO2015年5月号