「生産手段の社会化といっても、具体的な構想は正直なところありません。もともとは国有化が念頭にありましたが、ソ連がすべての産業を国有化してうまくいかなかった。資本家の手にあるのはマズいから社会全体の手に移します、という話だが具体像はない。
共産党では『マルクスは未来の理想図を後世に押し付けなかった。青写真は描かなかった』という話をよくします。具体像は今なくてもいい、ということです」
一方で天皇制や自衛隊のような具体的な政策課題もある。それらについては現実路線への修正が重ねられてきた。党綱領は少しずつ改訂され、2004年に不破哲三・議長のもとで大改訂が行なわれた。
それまでは「天皇制の廃止」を掲げていたが、現在の綱領では「天皇の政治利用をはじめ、憲法の条項と精神からの逸脱を是正する」「その存廃は、将来、情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべきもの」と表現されている。
「かつての綱領では天皇制を君主制と規定したので打倒すべき存在としなければならなかった。不破綱領では天皇に政治権限はないので君主制ではないと解釈を変えたわけです。
かつての共産党は改憲政党でした。天皇条項廃止を主張し、核兵器も『ソ連の核は米国の野望を抑えるキレイな核だからいいんだ』と大真面目に主張していた。それが今では護憲、核兵器廃絶が党是になっている。かつて社会党がいっていたこととほとんど一緒ですよ」(筆坂氏)
※週刊ポスト2015年5月1日号