■ダメだと思ったら戦法を変えろ!

中川:小野さんも俺も、雇われるのに嫌悪感があるんだよ。俺なんか4年しか博報堂に居られなかった。それ以来、14年間ずっとフリーなんで。

小野:でも就活はしてよかったと思ってる?

中川:圧倒的に思ってる。それは、「元博報堂」って肩書きを得たからです。あとは、企業の論理ってヤツがわかったからこそ、フリーになってお金が稼げている。フリーしかやったことない人って「なんでそんな煩雑な手続きが必要なんだ。企画の合否なんて今そこで決めちゃえよ」なんて思うけど、会社という組織では、稟議があって、必要な部署を通したりする必要もある。その手順を理解しているかいないかが、「発注主の気持ちが分かるフリー」ってことになり、それで金もらってるようなもんだからね。

小野:それはそうですよね~。肩書きはあるならあったほうがいい。中川さんの「内定童貞」はどんな読者に読んでもらいたいですか?

中川:この本は、「内定童貞」に出て来たOくんみたいな学生に捧げたい。

小野:あの、OB訪問した際にさんざん「広告代理店に向いてない」「君はメーカー向きだ」って言われ続けたのに頑なに広告だけを目指して撃沈した、Oくん?

中川:そう。そもそも向いてないなら、戦法を変えろ! 得意分野で勝負しろ!

小野:この本は就活本と銘打ってはいるものの、読んでいると、中川さんの人生に対する姿勢や、生きる上での戦法が伝わって来て、仕事だけじゃない、全ての悩みに効く気がします。……中川さんが、そういう戦法を持ちはじめたのはいつからですか?

中川:人を変えるのは難しいっていうのを、アメリカの高校に行っている時に、さんざん白人との軋轢で学んだんだよね。日本人嫌いの白人に、日本人のよさを分かってもらうのは難しい。じゃあどうするか?避ける、もしくは別の道を行くしか無い。

小野:他人は変えられない。でも自分は変えられる。そういうふうに私も就活の時から考えられたらよかったんですけどね。

中川:とか言いつつ、小野さんは、夢、叶えてんじゃん!

小野:まあそうですけど、夢ってレベルじゃないですよ。あくまでも低いレベルの「目標」をこなしていたら、気がついたらできていた、という感じ。階段の一段目でつまずいたことで、しょぼい自分の現状を把握して、違う上り方で上って行く方法を見つけて行ったというか…。あとは、やりまんにはなるな!ってことですね。

今井:小野さんは「傷口から人生。」をどういう人に読んでもらいたいですか?

小野:「傷口から人生。」は、就活や親子問題、学歴コンプレックスをこじらせてリアルな世界になかなか一歩踏み出せない「精神的処女」が、どうやって心の処女膜をブチやぶって、社会に適合してゆくのか、その過程を描いた本なので、そういう意味では、「内定童貞」と経る過程は一緒かも。

今井:中川さんの本が就活の特効薬としたら、「傷口から人生。」は社会に出る一歩手前でうじうじ迷っている人への、劇薬って感じですかね。

小野:そうですね。中川さんの「内定童貞」で就活の戦略を立てて、もしつまずいてどうしても上手く行かなくなったら、その時はこちらを読んでもらうといいかなぁ。
これから就活をするみなさん、あんまり真面目にならずに内定童貞&処女を脱してください!! 童貞を捨てよ、社会へ出よう(?)。

小野美由紀(おの・みゆき)
ライター・コラムニスト
1985年東京都生まれ。慶應大学文学部仏文学科卒業。卒業後、無職の期間を経て2013年春からライターに。幻冬舎プラス「キョーレツがいっぱい」ALICEY「未婦人公論」など、連載多数。2014年12月、絵本『ひかりのりゅう』(絵本塾出版)を出版した。2015年2月、デビュー作『傷口から人生。~メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』を発売。

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