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【書評】「松下幸之助」後のトップ人事をめぐる凄まじい戦い

【書評】『ドキュメント パナソニック人事抗争史』岩瀬達哉著/講談社/本体1380円+税

岩瀬達哉(いわせ・たつや):1955年和歌山県生まれ。ジャーナリスト。おもな著書に『血族の王 松下幸之助とナショナルの世紀』(新潮文庫)、講談社ノンフィクション賞を受賞した『年金の悲劇』、『年金大崩壊』(いずれも講談社)など。

【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)

 本書は、書名の通り、日本を代表する大企業のトップ人事を巡る抗争の歴史を元役員ら上層部に取材して描いたノンフィクション。

 本書によれば、創業者・松下幸之助氏は、娘婿で2代目社長だった松下正治氏の力量を早くから見限り、序列25位からの「山下跳び」で3代目となった山下俊彦氏に、正治氏を引退させるよう命じた。だが、山下氏は自分を抜擢した正治氏に鈴を付けられず、4代目谷井昭雄氏にその任を託した。谷井氏はそれを忠実に実行しようとするが、正治氏の猛反撃を食らう。

 そこからパナソニックの混乱と低迷が始まるのだが、そのトップ人事のあり方は呆れもするし、生活を左右される一般の社員からすればたまったものではないだろう。

〈人事抗争の後遺症は、とめどない悪循環を生みだし、その後、約20年にわたって経営の足を引っ張り続けることになった〉

 谷井氏が引退に追い込まれ、後任の5代目に就任したのは、早くから候補と見られていた実力者ではなく、正治氏の後ろ盾を得た森下洋一氏だった。森下氏は谷井氏が将来に向けて打っていた布石を次々と覆していった。

 6代目の中村邦夫氏は正治氏や森下氏に阿る(おもねる)一方、下に対しては強権を振るったが、プラズマで大失敗する。7代目に就任したのはその中村氏が院政を敷きやすい大坪文雄氏だった(現在の津賀一宏氏は8代目)。

 本書は“反正治”の側に立って歴史を叙述する。その歴史観がどこまで正しいのかはわからないが、当事者ですら把握できていなかったトップ人事の全貌を知ることができ、またトップ人事が会社の経営に与える(マイナスの)影響の大きさを反面教師的に学べるという点で有意義だ。

※SAPIO2015年6月号

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