ライフ

豚レバーの生食禁止 背景に「E型肝炎感染者5倍増」の調査

この数年でホルモンなど内臓肉の 扱いは激変した

 豚レバーの生食が禁止された。「食文化」と「安全」とどう天秤にかけるのか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が語る。

 * * *
 ついに豚レバーの生食が禁止された。食品衛生法の規格基準が改正され、この12日から飲食店などで生食用としての豚肉の提供が禁止された。落胆の声も耳にするが、そもそも豚レバーの生食が全国で一般的になったのはごく最近のこと。理屈ではリスクがあることをわかっていても、口にしたときにどの程度のリスクがあるかを実感するのは難しかった。

 しかし、国立感染症研究所の調査結果を見ていると「疑わしきは豚」が浮きぼりになる。各年の患者数を見ていくと、2011年まで全国で60人だったのが2012年に119人に倍増。2012年は牛レバーが禁止され、その代用として豚レバーを提供する店が増えた年だ。

 2010年1月~2015年5月までのE型肝炎の患者数は全国で延べ605人。10年前、1999~2005年までの報告例が120人であることを考えると全国で5倍に膨れ上がっている。豚のレバーを生食用として出す店が激増したタイミングである。実は全国的に患者数が急増した2012年にも119人の患者のうち、実に3分の1以上に当たる40人が北海道で報告されている。

 実は北海道は、長く豚の加熱不十分が指摘されてきたエリアでもある。例えば「丸ホル」という北海道の焼肉店に特徴的なメニューがある。洗った豚の直腸を輪切りにしたもので、火を通しすぎずに食べるのがいいという店も多い。以前は裏メニューとして出されることが多かったが、人気が高く近年では提供する店も増えていたという。

「以前は、年配の人が好んで食べていたけど、最近では知られるようになったこともあって、若い人もよく注文してます。焼き過ぎると、脂が落ち切っちゃうんでややレア気味がいいとされていました」(札幌市・40代・男性)

 一方、因果関係だけでなく、新しい病原体の発見により、食中毒自体が最近になって明らかになったものもある。例えばヒラメなどの魚の筋肉に寄生する「クドア」という寄生虫によるクドア食中毒や、馬に寄生する「ザルコシスティス」という原虫によるザルコシスティス食中毒は近年までその原因が特定されなかった食中毒だ。どちらも比較的症状は軽く、一定の条件での冷凍や加熱により病原性を失うので、必要以上にヒラメや馬肉の刺身を遠ざける必要はないが、まだ原因が特定されない食中毒が存在するのもまた事実だ。

関連記事

トピックス

5月8日、報道を受けて、取材に応じる日本維新の会の中条きよし参議院議員(時事通信フォト)
「高利貸し」疑惑に反論の中条きよし議員 「金利60%で1000万円」契約書が物語る“義理人情”とは思えない貸し付けの実態
NEWSポストセブン
殺害された宝島さん夫婦の長女内縁関係にある関根容疑者(時事通信フォト)
【むかつくっすよ】那須2遺体の首謀者・関根誠端容疑者 近隣ともトラブル「殴っておけば…」 長女内縁の夫が被害夫婦に近づいた理由
NEWSポストセブン
曙と真剣交際していたが婚約破棄になった相原勇
《曙さん訃報後ブログ更新が途絶えて》元婚約者・相原勇、沈黙の背景に「わたしの人生を生きる」7年前の“電撃和解”
NEWSポストセブン
なかやまきんに君が参加した“謎の妖怪セミナー”とは…
なかやまきんに君が通う“謎の妖怪セミナー”の仰天内容〈悪いことは妖怪のせい〉〈サントリー製品はすべて妖怪〉出演したサントリーのウェブCMは大丈夫か
週刊ポスト
令和6年度 各種団体の主な要望と回答【要約版】
【自民党・内部報告書入手】業界に補助金バラ撒き、税制優遇のオンパレード 「国民から召し上げたカネを業界に配っている」と荻原博子氏
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン