◆仲間なのであれば、大勢の敵の中に突撃していく必要はない。
今回、業界人は佐野さんをネット上で優しく擁護するものの、押し寄せるアンチとはケンカをしない、というスタンスで情報発信をしました。そして傷ついたら身内に慰めてもらう。このあまりに紳士的振る舞いが普段のネットの風景とは異なり、私の目からは「広告人と一般社会の乖離」を感じる結果となりました。
だったら今回業界人はどう振る舞えばよかったのか。多分ネットでは特に情報発信はせず、知り合いなんだったらメールで慰めるとか、食事に誘うとかする程度で良かったような気がします。
我々のようなネット業界で仕事をしている人間は、広告業界人とは比較にならぬほど、頻繁に炎上します。しかし、「○○さんは本当にいい人なので、そんな意図はなかったはず!」ってな感じで業界内からの擁護は来ません。それは、「炎上状態の時に何を擁護してもムダ」ということを経験則上分かっているからです。味方からの擁護が結果的に足を引っ張ることは理解しているからこそ、そっと傍観し、次に顔を合わせた時に「○○さん、大変でしたねw」程度の冗談めかした慰めをしておく。
いわゆる「一流企業」とされる会社がそれほどネットでは愛されず、ガリガリ君の赤城乳業や、ペヤングのまるか食品といったB級感のある会社が愛されるのは、彼らが一般社会の目線に立ってネット民とコミュニケーションを取っているからです。
私も博報堂出身ですが、「生活者発想を持て」と常に言われていました。でも、タクシーに乗るのは当たり前。新入社員の頃から山手線内のオートロック付きマンションに住むのもフツーのこと、といった感覚を味わっていただけに、「生活者」のことなんて分かっていなかったんだな、としみじみ今回の騒動を見て思うのでした。