そもそも、ホステルのような形態の宿泊所にニーズがあると日本人が気づいたのは、2002年日韓共催ワールドカップのとき。サッカー観戦のためにやってきた大きなバックパックを担いだヨーロッパからの若者たちが、ホテルではなく観光客を想定していなかった簡易宿泊所を積極的に利用したのだ。その後、訪日外国人向けホステルが次々と誕生し好調が続いたが、2011年3月に東日本大震災で大きく状況が変わった。
「都内の外国人向けホステルなどは、震災で外国からの予約が90%キャンセルされ、新規の宿泊客も確保できない。そのため、日本国内のお客さんにも利用してもらおうと楽天トラベルやじゃらんnetといった旅行予約サイトにホステル側が登録し始めました。そのときホステルの楽しさを知った20代の若者を中心に、小規模であれば500万円ぐらいの元手で開業できるノウハウが確立されたこともあり、新規でホステルを始める人も爆発的に増え始めました。
今はアベノミクスの観光立国政策と東京オリンピックを見越した需要で訪日外国人の宿泊用にと異業種からの新規参入やグループ化された規模が大きなホステルの開業も相次いでいます。都市部の中規模物件以上では、事務所に使っていた古いビルやラブホテルに料亭、観光客に人気の京都では古い町家を改装した極小規模な物件も目立ちますね。ホステル業界の成長傾向は、まだしばらく続くと思います」(前出・向井さん)
日本政府観光局によれば、2015年上半期(1~6月)の外国人旅行者数は前年同期比較で46%増、このまま推移すれば2015年は過去最高の1800万人に達する見込みだ。2020年東京五輪を迎えるころには、日本は今以上におもてなしの国になっていそうだ。