ビジネス

秒読みに入った米利上げ 他国の情勢に配慮して政策決めない

 2015年の外国為替市場における最大の注目は、アメリカの利上げがいつ行なわれるのかだろう。為替のスペシャリスト、松田トラスト&インベストメント代表の松田哲氏が解説する。

 * * *
 アメリカの利上げが秒読みの段階に入っている。9月16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げの実施が決まる公算が大きく、私も利上げの開始は9月と考えている。アメリカの利上げの動きを背景に、今年後半の外国為替市場のメインテーマは「米ドル高」になるだろう。

 米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は「年内の利上げが適切」との認識を示しているが、具体的な開始時期は現段階では明言していない。私がなぜ9月開始と予測するかというと、経済が回復してきていること以上に、イエレン議長の利上げに踏み切る本来の目的が「金融政策の正常化」だからである。

 アメリカが緊急避難的に実施した特別な低金利策は、歴史的にも「禁じ手」だ。これを本来あるべき姿に戻す必要がある。利上げのスタンスを強めているイエレン議長の本音は、「早く正常に戻したい」だろう。「金融政策の正常化」が目的であるならば、9月に利上げを開始し、経済指標が許せば、12月にも再利上げを実施する可能性が高い。12月に続けて利上げしないとしても、比較的早い段階で再び利上げすると思われる。

 出口戦略としての金融政策の正常化には、FF金利 (フェデラル・ファンド金利)は少なくとも1.25%必要だろう。もしまた何か非常事態が発生した時、この水準ならば利下げが可能になり、効果も出る。今回の正常化のターゲットは2%と思われ、できれば1.25%以上の水準にしておきたいというのが、バーナンキ前議長から出口戦略のバトンを引き継いだイエレン議長の思惑ではないか。

 1回の利上げ幅は0.25%と予想される。回復基調の景気を腰折れさせないように、徐々に持続的に金利を上げていくと思われる。

 経済の状況にもよるが、その利上げのスタンスを示す意味でも9月、12月、3月と連続して利上げを行なって3回連続で0.25%ずつ上げると、1.00%に届く。この水準まで順調に引き上げてくれば、目標値に向けて軌道に乗ったと判断できる。それだけ金利が動けば、為替相場はドル高方向により力強く進むだろう。

 一方、不安定な中国株の世界経済への影響、弱くなっている新興国通貨などを理由に、「アメリカは利上げ時期を考慮するのではないか」との意見も聞かれる。9月の利上げを見送る可能性もあるが、仮に見送ったとしても決してそういう根拠ではない。歴史的にみても、アメリカの金融政策はアメリカだけをみている。他国の状況に配慮して自国の金融政策を決めることはないのだ。

※マネーポスト2015年秋号

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
“もしトラ”リスクも…(写真/AFP=時事)
【緊迫する中東情勢】イラン・イスラエルの報復合戦、エスカレートすれば日本にも影響 “もしトラ”リスクが顕在化
週刊ポスト