ところで、ボルトの点検とはどんなことをするのだろう。締まり具合を確かめるような機械があるのだろうか。大槻さんは続ける。
「たとえばハンマーによる打音検査ですね。トンネルや橋などを留めている大きなねじをハンマーを持った職人さんがコンコンと叩いて、音の違いによって緩みを見つけだすんです。みなさん、恐ろしいほどの聴覚を持っていますよ」
鉄橋も鉄筋も、飛行機もロケットも職人さんの耳が頼りだったとは、だんだん心細くなってきた。実際のところ、奥深くの小さなねじの緩みまでは、打音検査はできず、結局、分解しないとわからないという。
そこで大槻さんは、《未来製品 こんな“ねじ”実現する? 緩みを感知するシステム》と題した、同紙が業界にねじの未来形を示した記事を見せてくれた。記事は飛行機の整備を例に、次のように記している。
《飛行機の重用保安部品に取り付けられているボルトは、全てボルト内部に埋め込まれているチップによって部品IDで管理されており(中略)緩みを感知できるトルク感知センサーも内蔵されている。
運行を終えて一機の飛行機が整備場に入ってきた。整備士が受信機のようなものを持ちながら各所を歩いている。右翼エンジンに近づくと受信機からアラームが鳴った。エンジン内部にある1本のボルトが緩んでいるようだ。(中略)メンテナンス部門は直ちに異常個所を把握して、増締め・交換など適正に処理。事故を未然に防ぐことができた》
「すごいっ。これができたら産業革命ですね!」
記者が興奮して身を乗り出すと、「たぶん、そう遠くない未来には…」と、なんとも意味深な答えが返ってきた。
(取材・文/野原広子)
※女性セブン2015年11月12日号