現在、空き家数が全国一多い東京でも、大田区、墨田区、新宿区などが空き家対策のための条例を施行。足立区は解体費用として最大100万円を助成する制度を定めた。文京区では解体費用を200万円まで助成するかわりに跡地を区が10年間無償で借り受け、広場などの公共スペースとして活用する制度を設けた。
こういった動きは、空き家の持ち主にとっては助かるが、個人の所有物の解体に公金を使用することへの批判もある。
横須賀市では10月26日に、特措法に基づいて、空き家が取り壊された。全国初となったこのケースでも、市民の税金を投入することについて、行政内に慎重な意見があったという。横須賀市都市部建築指導課の担当者・松尾啓意さんが明かす。
「当然ながら、税金を投入することには、市の中で慎重な意見もありました。しかし、放置しておくと周辺住民にけがをさせる危険性があることは看過できない。結局、税金と市民の安全性を天秤にかけて、その結果、解体を決めました」
たしかに、住民サイドからは歓迎の声がある一方、実際こんな反対意見もあった。
「市が解体してくれるのはありがたいけど、税金を使うのは納得いきません。土地を競売でもして、解体費用を回収できればいいのだけど」(近隣住民)
今回の横須賀市のケースでは、150万円の税金が投入されたが、仮に820万戸の空き家すべてを同じ程度の公費で解体すると、費用は単純計算で12兆3000億円に達する。もちろん、半数以上が持ち主がわかっているため、そこまで莫大な金額になることはないが、国や地方の財政危機が叫ばれるなか大きな出費になることは免れない。そしてこのツケは住民に返ってくることになる。
※女性セブン2015年11月26日号