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三池崇史監督の分煙提案が業界に波及 撮影所にメッセージも

日活撮影所の「新喫煙所」でたばこの煙を燻らせる三池崇史監督

 受動喫煙防止の目的などから職場内で進む分煙対策。いまでは大企業を中心に屋内・屋外に専用の喫煙スペースを設ける事業所は増えた。ところが、喫煙者にとってみたら、必ずしも「快適な空間」とはなっていない。

「ウチの会社の喫煙所は質素なプレハブづくりで4人も入ればギュウギュウ詰め。たばこをゆっくり吸いながら気分を落ち着かせるなんてことは到底できません。

 屋外にも喫煙所はありますが、建物の裏手にある倉庫脇、しかも日の当たらない場所で、〈私語厳禁〉〈長時間の喫煙禁止〉〈吸い殻以外のゴミを出すな〉なんて注意書きだらけ。ささやかな休憩も後ろめたい気分になります」(千葉県内にある機械メーカーの従業員)

 これでは仕事で張り詰めた緊張を解きほぐす“一服の効用”など望めるはずもない。

 しかし、こんな空間だったらどうだろう――。喫煙所をはっきりと示すデザイン調の共通標識。そのスペース内には、灰皿と街中のオープンカフェを思わせるオシャレな赤いチェアが数脚置かれている。

 そして、各喫煙所の壁面には、

〈議論の火花は散らしても、火の粉は散らすな〉
〈常識をこえた作品を。スペースをこえない喫煙を〉
〈物語の行方と煙の行方は、最後まで見届ける〉
〈マナーを守ると、現場の空気はちょっとよくなる〉

 といった、センス溢れるキャッチコピーの書かれたプレートが掲げられている。コピーライターの岡本欣也氏が手掛けた、さり気なくも目を引く文言が喫煙者を和ませつつ、マナー啓発にも役立っている。実に気の利いた喫煙所だ。

 これは映画会社、日活の調布撮影所(東京・調布市)内で今秋整備されたばかりの喫煙スペース。日々、独創的な作品づくりに追われる映画会社らしい分煙対策といえるが、発案者は『十三人の刺客』や『クローズZERO』、『ヤッターマン』などの作品を次々と世に送り出す三池崇史監督だった。自らもスモーカーの三池監督は、兼ねてより撮影所の喫煙スペースの在り方について、一家言を持っていたという。

「愛煙家の側から理想的な分煙を発信していこうという思いから始まり、吸う人にも吸わない人にも心地よい環境を作ることがテーマでしたが、空間をデザインするというのは本当に難しい。

 なんせ、撮影所というのは各社に個性があり、それはその撮影所の歴史が作り上げているもの。そこに自然に存在できる喫煙所空間をつくることは、そこで創られてきた映画そのものと溶け合うような不思議な感覚があります」(三池監督のコメント)

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