国内

国立競技場再コンペ ゼネコンとJSCの大罪を浅田彰氏が指摘

4年後の姿はまだ見えてこない(国立競技場跡) 共同通信社

 新国立競技場の“やり直し”コンペが終了し、新たな設計者が決定し、あとは完成に向けてまっしぐらとなることだろう。しかし、前回のコンペは日本の建築史上最大の汚点となると懸念するのは批評家・浅田彰氏だ。

 * * *
 私は建築の専門家ではありませんが、伯父が丹下健三研究室のマネージャー役だったこともあり、建築については常に興味をもって眺めてきました。その観点から見ても、いや社会問題として見ても、新国立競技場を巡る問題はひどいと言うほかありません。

 まず国際コンペが行われ、安藤忠雄を委員長とする審査委員会がザハ・ハディドの案を選んだ。設計会社とゼネコンが加わってその案を具体化していったところ、1300億円の予算を大きく超える2500~3000億円の費用が必要だとされた。

 初期の案を縮小してもその額が一向に減らない。その過程が延々と続いたあげく、とうとう安倍晋三首相が白紙からの見直しを指示した。「首相の英断」と言いたいところだろうけれど、実は問題は悪化しこそすれ何ら改善されていません。

 イラクで生まれ、ロンドンで学んだザハが一躍有名になったのは1983年の香港のピーク・レジャー・クラブのコンペで選ばれたときのことでした。

 実は、最終選考には残っていなかったザハの案を拾い上げ、審査員たちを説得して最優秀賞に選んだのは、日本を代表する建築家・磯崎新です。これはアンビルト(未建築)に終わりましたが、それはクライアントの財政危機が原因です。

 ザハにはその後もアンビルトの案がいくつもあるけれど、ローマの国立21世紀美術館をはじめ、注目すべき建築もたくさん建ててきています。

 彼女の建築の中では新国立競技場案はとくにいいとは思えなかったものの、悪いわけでもなく(ただし縮小案は当初の魅力を失っている)、当選したのもおかしなことではありません。

 むしろ本質的な問題は、これが大まかなコンセプトとイメージをもとに「デザイン監修者」を選ぶコンペだったことです。選ばれた「デザイン監修者」は、日本の設計会社およびゼネコンと言われる元請け建設会社と組んで具体的な設計案を作る。そこではむしろ日本側が主体であり、ザハは「監修者」に過ぎません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
埼玉では歩かずに立ち止まることを義務づける条例まで施行されたエスカレーター…トラブルが起きやすい事情とは(時事通信フォト)
万博で再燃の「エスカレーター片側空け」問題から何を学ぶか
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン