森喜朗一覧

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政界の“親プーチン人脈の巨魁”森喜朗氏はプーチン氏を助長させたのか
政界の“親プーチン人脈の巨魁”森喜朗氏はプーチン氏を助長させたのか
 ロシアのプーチン大統領の非人道的なウクライナ侵略は2014年のクリミア併合から始まった。だが、日本には、併合後もプーチン氏の甘言に騙され、たらし込まれた協力者たちがいる。 その筆頭が安倍晋三・元首相だろう。北方領土返還に意欲的だった安倍氏は、首相在任中、プーチン氏と27回の首脳会談を行なった。領土交渉では国の「四島返還」方針を「二島返還」へと事実上転換、「北方領土は日本固有の領土」という主張さえ封印して譲歩を重ねた。その年5月の日露首脳会談では8項目の経済協力を表明し、カネも出したが、結局、成果はなかった。まんまと騙されたのだ。そうしたクリミア併合を黙認するかのような安倍氏の姿勢が、プーチン氏を“西側の経済制裁など切り崩せる”と慢心させたと批判されても仕方ない。 日本の親プーチン外交は、もとを辿ると森喜朗・元首相から始まっている。森氏はプーチン氏が大統領に就任する前から親交を結び、「イルクーツク声明」【*】に署名。【*2001年3月にロシアのイルクーツクで森氏とプーチン氏が会談した後に署名した文書。1993年の東京宣言に基づいて北方四島の帰属問題の解決に向けた交渉を促進することに両首脳が合意したことが明記されている】 安倍政権では“指南役”として親露路線をバックアップした。ロシアのクリミア併合で日本が経済制裁に加わったことにプーチン氏が怒ったときには、安倍首相の特使としてなだめに行って経済支援の道筋をつけている。プーチン氏を甘やかした政界の親プーチン人脈の巨魁といえる。軍事・政治評論家の篠原常一郎氏が指摘する。「森氏が自分がお膳立てしたロシア外交を安倍氏に引き継がせ、北極海共同開発などの旗振りをしたことが、平和条約をなおざりにしたまま日本をロシアとの経済協力に前のめりさせることにつながった」 鈴木貴子・外務副大臣もいる。森氏の側近で長年、ロシアに太いパイプを持ってきた鈴木宗男・参院議員の長女だ。 ロシアの軍事侵攻に際してウクライナのコルスンスキー駐日大使が林芳正・外相と約1か月面会できなかった問題では、同大使が「(自分と)会いたくなかったのは鈴木さんです」とツイート(後に削除)するなど、“面会要請放置疑惑”が報じられた。鈴木氏は会見で「事実無根」と否定したが、父親譲りの親露派であることは知られている。 クリミア併合に動いていた2014年3月には、産経新聞が当時の坂田東一・駐ウクライナ大使の「国連憲章を含め国際的な約束ごとを破り、それに挑むロシアの行動は世界の安全保障秩序を大きく揺るがしている」との発言を報じると、鈴木氏は〈「産経記事」に書かれている坂田大使の一連の発言は適切であるか〉と政府に質す質問主意書を提出、ロシア寄りの姿勢を鮮明にした。 鈴木氏は事務所を通じて、「ロシアによるウクライナ侵略は、明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難します。(質問主意書については)いろいろ事実誤認があるようですが、北方領土隣接地域を代表する国会議員として、元島民をはじめ関係者の方々の声を受けて働いてまいりました」と回答した。 彼らにプーチン氏を諫めるパイプはないのか。※週刊ポスト2022年4月8・15日号
2022.03.30 07:00
週刊ポスト
『ハリー・ポッター』シリーズの作者 J・K・ローリングさんは、ジェンダーを巡る発言でたびたびネット炎上している(AFP=時事)
過激化するキャンセルカルチャー 処分を短絡的に決めてしまってはいないか
「キャンセルカルチャー」とは、特定の対象の言動などを取り上げ糾弾し、排除や排斥、追放やボイコットしようとするムーブメントのことだ。それは現在の行いだけでなく、過去に遡って問題にされ、不買運動をしたり辞任させたりなど、社会的制裁を積極的に求めるのがネット炎上と異なる。SNSによってこの動きは拡大している。キャンセルカルチャーはなぜどのような時に起きるのか。ネットやSNSの問題に詳しい成蹊大学客員教授でITジャーナリストの高橋暁子さんに聞いた。 * * * あるアーティストのファンだったという人は語る。「過去にひどいいじめをしていた言い逃れようがない証拠が出てきて、すごく残念だった。大きな仕事から降ろされただけでなく、アルバムも白紙になってしまい、作品自体は何も変わらないのに、もう純粋に楽しめなくなった。ただ、テレビとかで連日糾弾されていて、気の毒にも感じた」 著名人による問題ある言動が取り沙汰されたが最後、それまでの活躍や能力などに関係なく徹底して叩かれ、社会的に葬り去られることが増えてきた。 キャンセルカルチャーとはこのように、主に著名人などの過去の犯罪や不祥事、不適切な発言などを掘り起こし、それを元に批判し、社会的地位を失わせるなどして排斥する現象のことだ。数年あるいは数十年前の言動でも対象となり、一度問題視されれば、謝罪するか社会的地位などを失うまで糾弾され続ける。 SNSやネットの過去の発言などが掘り起こされて起きることも多く、ソーシャルメディアが普及した2010年代後半から増えたと言われている。また、以前から見られた、大勢の前でミスや誤りなどを糾弾するさらし行為、「コールアウト・カルチャー」の一つとされる。オリンピックで続いたキャンセルカルチャー『ハリー・ポッター』シリーズで知られる作家のJ・K・ローリングさんは、2020年6月、複数回にわたりTwitterでトランスジェンダー差別だと受け取れる発信をしたとして、繰り返し批判を集めていた。SNS上の過去の言動から、トランスジェンダー排斥をする人物なのではないかという疑惑が浮上していたタイミングだったこともあって非難の声がおおきくなったのだが、謝罪しても責任を問う声は収まらなかった。これもキャンセルカルチャーの一つと言われている。 東京オリンピックでも、同組織委員長だった元首相の森喜朗さんが女性蔑視発言で辞任に追い込まれている。森さんは、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」「組織委員会に女性は7人くらいおりますが、皆さんわきまえておられて」などと発言し、国内外から批判を集めた。 また同じくオリンピック開会式で作曲者の一人だった小山田圭吾さんは、1994年に発行された『ロッキング・オン・ジャパン』、翌年の『クイック・ジャパン』に掲載されたインタビューが元で、辞任することになった。小山田さんはインタビュー中で障害者をいじめていたことを自慢げに告白しており、障害者をいじめた人物がパラリンピックに関わることを問題視されていた。 今年2月には、「CYCLOPS athlete gaming」に所属するプロゲーマー「たぬかな」選手が、不適切発言によって契約解除された。たぬかなさんは生配信の中で男性の身長について話題が移ったとき、「165はちっちゃいですね。だめですね。170はないと、正直、人権ないんで。170センチない方は、『オレって人権ないんだ』って思いながら生きていってください」などと発言し、批判を集めていた。 どの場合でも共通するのは、発言などから激しく糾弾され、役職や仕事、契約など社会的地位を失っていることだ。#MeToo運動から派生して誕生 キャンセルカルチャーは、「#MeToo」運動から派生したと言われている。私も(MeToo)受けた過去のセクハラや暴力をシェアし問題を考える、という米国での#MeToo運動は、もともと2007年に性暴力被害者支援のスローガンとして提唱されたものだったが、2017年に大物映画プロデューサーハーヴェイ・ワインスタインのセクハラや性的暴行に対する集団告発をきっかけに世界に広まった。ワインスタインは2018年5月に逮捕され、2020年には有罪が確定、23年の禁固刑が言い渡されている。 SNSが普及したことで一般人でも声を上げられるようになり、人々の声が社会を動かし、弱者を救済するなどの大きな力を持つようになった。キャンセルカルチャーと言われると、過剰に罰を与える負の側面のイメージがつきまとうが、これまでは封じ込められてしまった問題が明るみに出やすくなるなど、ポジティブな面もあるのだ。 やはり一方で、キャンセルカルチャーは過激化し、その結果、言論の自由をなくし、分断を生んでいるとも言われている。キャンセルされた側にも復帰の機会を 先日、社会復帰のための雑誌『Chance!!』に掲載された、ピエール瀧さんへのインタビュー記事が話題となった。ピエール瀧さんがコカイン使用の疑いで逮捕されたのは2019年のこと。バンド「電気グルーヴ」のメンバー、石野卓球さんの「(解散)するわけねーだろ、ばーか」という発言でも話題となった。 インタビュー中でピエール瀧さんは、「ネットに書き込まれる悪口を見ていて思ったのは、とにかく”罰したい欲”がすごいなと」と、当時を振り返っている。「誰かを攻撃することでスッキリしたり精神の平静を保っているのでしょう」ともいう。 自分の不安な気持ちを落ち着かせるために、ネットで人を攻撃するという側面は確かにあるようだ。デジタル・クライシス総合研究所による新型コロナウイルス関連の炎上事案分析(2020年5月)によると、コロナ禍で炎上の数は急増。コロナ前の1月の82件から、コロナ禍後の4月は246件と3倍になっている。SNS上の誹謗中傷などもニュースになることが増えた。 このような増加の背景には、コロナ禍でのストレスや不満、不安などを、他者に当たることではらしている人がいると考えられるだろう。 炎上は、実際はごく少数の人たちによる繰り返しの投稿から成り立っていることが分かっている。キャンセルカルチャーにおいても、はじまりには正当な批判があっても、途中から無関係で問題に関心も持たない人々がただ引きずり下ろすことを目的に参加してはいないか。そして炎上と同様に、ごく少数の人達が騒ぎ立てているだけという可能性がある。 確かに“キャンセル”された人々の言動には問題があったし、非難すべきものは非難すべきだ。しかし引きずり下ろすことが目的となっていては、かえって問題の本質がぶれてしまうのではないか。 ピエール瀧さんには、戻れる場があった。石野卓球さんや家族など、理解して支える人がいるからこそ、社会復帰できたのだろう。しかし、そのように恵まれた人たちばかりとは限らない。一度問題ある言動をしたら社会から抹殺される社会は、我々にとっても住みよい社会とは言えない。 問題ある発言は問題にすべきだが、必要以上に強く糾弾したり、処罰が厳しすぎることはないか。糾弾された側も、処分を短絡的に決めてしまってはいないか。そのようなことはしっかりと考えていくべきだ。そして、キャンセルされた側に再起できる道を用意することも、必要なのではないだろうか。
2022.03.13 16:00
NEWSポストセブン
プーチン大統領(SPUTNIK/時事通信フォト)
プーチン氏、過去に「女性じゃないから機嫌の悪い日はない」性差別発言
 ウクライナ軍の徹底抗戦で思わぬ苦戦を強いられているロシアのプーチン大統領。国際社会からも孤立を深めている状況に、苛立ちを隠せないという。全国紙の元モスクワ特派員が解説する。「米NBCが情報当局者からの情報として伝えたところでは、戦況の報告を受けたプーチン氏が、閣僚に激怒したそうです。プーチン氏は感情のコントロールが利かなくなっているのではないか、といった分析も各国の情報機関から出てきています。冷静沈着なイメージが強かった以前のプーチン氏では考えられないことです」 かつてプーチン氏は、自身のドキュメンタリーを撮影したオリバー・ストーン監督のインタビューに応え、こう語っていた。「私はまったく怒鳴ったりしないよ。怒鳴ると、相手によく聞こえなくなるからね。相手にはこちらの話をすべて聞いてもらわなければならない。怒鳴って大声を出すと、相手はこちらが何を言わんとしているかをよく理解できなくなる」(『オリバー・ストーン オン プーチン』土方奈美訳、文藝春秋刊) 現状のプーチン氏を見ると説得力に欠ける発言だが、感情のコントロールに関するストーン監督とのやり取りのなかでは、さらに見逃せない発言をしている。〈──あなたにも機嫌の悪い日はあるのだろうか。「女性じゃないからね。機嫌の悪い日はないよ」──(笑)ほら、これでアメリカ国民の五〇%が侮辱されたと思うよ。そう受け取られるだろう。「誰かを侮辱するつもりはないさ。自然の摂理だ」──つまりあなたから見ると女性のほうが男性より感情的であり、あなたは感情が理性に入り込んでくるのを好まない、とこういうわけだろうか?「自然のサイクルというものがあって、男性にもおそらくあるが、女性ほどはっきりとはしていない(以下略)」〉(同前) 性差別と考えられる発言だが、ストーン監督は聞き流しており、この発言が国際的に問題になることもなかった。「プーチン氏はこれまで何度もセクハラ的発言や性差別発言を繰り返してきましたが、多少物議は醸すもものの不問に付されてきました。イスラエルのモシェ・カツァブ元大統領に強制わいせつ容疑が持ち上がったときには、『10人をレイプした強い男性でうらやましい』と失言しまたが、このときも強烈なブラックジョークとして扱われただけでした。 自戒を込めて言いますが、日本を含めた西側諸国のメディアは、プーチン氏に対して“今では自国から消えたマッチョな男性像”を投影して、持ち上げてきた側面がある。実は発言だけ聞くと、盟友である森喜朗氏の『女性の会議は長い』発言と同レベルなのですが、なぜかプーチン氏の場合は容認されてきた。そうしたメディアの報じ方も今後、見直すべきかもしれません」(同前) 冷静沈着というイメージそのものも正しかったのかどうか、検証が必要だ。
2022.03.09 07:00
NEWSポストセブン
ジェンダー研究で知られる東京大学名誉教授の上野千鶴子氏(写真/共同通信社)
上野千鶴子氏に聞いた「美しい人に『美人』と言ってはいけない理由」
 2021年は、「女性蔑視」が厳しく追及される騒動が続いた。五輪組織委会長だった森喜朗氏は「女性がたくさんいる理事会は時間がかかる」と発言して辞任に追い込まれ、静岡県の川勝平太知事も「学力と容姿」を結びつけた発言で大炎上した。女性蔑視は許されないが、違和感があったのが、福島県相馬市長の立谷秀清氏が連合の芳野友子会長を「美人会長」と呼んで謝罪に追い込まれた一件ではなかったか。前後の文脈を含めて批判されたとはいえ、そもそも女性を「ブス」と貶めるのではなく、「美人」と称えることの何がいけないのだろうか? ジェンダー研究で知られる東京大学名誉教授の上野千鶴子氏に、率直に質問をぶつけた──。【前後編の前編、後編は〈上野千鶴子氏、ルッキズムをやめられない男性に「地域社会で排除される」〉】 上野氏は「美人」発言の問題点について「すでに『ブス』という言葉がタブーになりましたから、その対極にある『美人』も言っちゃダメというのは、論理的にも当然のことですよね」と指摘したうえで、次のように説明する。「近年、ルッキズム(外見至上主義)という言葉が登場しました。この“イズム”というのは、セクシズム(性差別)、レイシズム(人種差別)などの言葉にも使われているように、“差別”という意味です。ルッキズム(外見差別)という新しい概念の言葉が登場し、イズムがついているということは、外見についてとやかく言うのは差別であり、“やってはいけないこと”に認定されたということです。それは、“褒める”という行為でも同じこと。 たとえば妻やガールフレンドと一緒に歩いている男が、前から来る別の女を見て、『お、美人だな』とか『お、ブスだな』とか何気なく言ったりするでしょ。その瞬間に、女は一元的な序列のどこかにサッと位置づけられてしまうことになる。そんなこと頼んでもないのに。当然、不愉快ですよね。男というのは、そうやって女をランキングする権力が自分にあると無邪気にかつ傲慢に信じているのです。それが近年になってやっと『そんな権利、アンタたちにはないよ』ということが浮かび上がってきた」 それならば、女性が男性に「イケメン」などと言うことも問題視されるべきではないのだろうか。「よくある反論ですが(苦笑)、女の場合は一元尺度でランクオーダーされるのに対して、男は多元尺度なんです。たとえばイケメンじゃなくたって、学歴とか地位とか、そういった尺度が男にはある。男の尺度の中で一番強力なのは金力(稼得力)であり、イケメンかどうかなんてことは、男にとってはマイナー尺度です。つまり男女のランクオーダーは非対称ですから、『女だって同じことをやっているだろ』とはなりません」まずは「建前」を変化させる ただ、いくら女性を容姿でランク付けしてはいけないと説かれても、心の中で美人かどうか“評価”することまでは、なかなか止められない。 上野氏も「オジサンの腹の中は死ぬまで変わらないでしょうね」と認めたうえで、男性たちにこう釘を刺す。「私は社会の変革というのは、本音の変化ではなく建前の変化が重要だと思っています。オジサンの下心とか、人間の卑劣さというのはいつの時代もどこにだって存在するけれど、少なくとも公共の場でそういうことを言ったら地雷を踏むということは肝に銘じてほしい。男は時代の変化に合わせて自分をアップデートしなければ、自分が不利益を被ることになります」 女性の容姿に全く触れないとなると、同僚や友人とどんな話をしたらいいのか。「これはセクハラかも」「ルッキズムと言われるのでは」と怯えていては、日常会話もままならない……。 そんなふうにコミュニケーションが取りづらくなることを危惧する声にはこう応じる。「若い女の子たちからも、そういうことはしょっちゅう言われます。バイト先などでおニイさんやオジサンたちが口をきくのに神経を使って、職場がピリピリしてしまう、とか。でも、もし彼らが神経を使わなくなったら何が起きるのか。オジサンたちからすれ違いざまにお尻や胸を触られるなんてことがずっと続くことになります。そんな職場で女性は働きたいと思いますか? 1989年に『セクハラ』が流行語大賞になった時に男性週刊誌は堂々と“セクハラは職場の潤滑油”“(だからなくなったら)職場がギスギスする”みたいな記事を載せていました。『週刊ポスト』にもあったはずです(笑)。それに比べれば、セクハラがアウトになったのは大きな進歩。気を使って職場がピリピリするくらいが、ちょうどいいんです」 ピリピリした結果、「女性に対して一切話しかけない」という極端な選択を取る男性も出てくるが、上野氏は女性に配慮した「褒め方」や「コミュニケーションの取り方」がちゃんとあると言う。「ジェンダー研究の世界では、“女だからかわいい”とか“男だから泣くな”のようなジェンダーに依拠した説明や解釈のことをDoing Gender(ジェンダーを実践する)と呼びます。逆にジェンダーに依拠しない説明や解釈をUndoing Genderといい、たとえば“キミは根性があるね”のように、男も女も関係ない言い方のことを指します。 女性のことを褒めたい時には、このUndoing Genderの言い方にすればいい。たとえば、“女子力が高いね”ではなく“気配りができるね”という言い方にするんです。“かわいいね”という言い方でなく“チャーミングだね”と言えばいい。美人というのは一元的な尺度だけどチャーミングという表現には多様性がありますからね。人によって意味合いは様々だし、男にとっても女にとっても最高の褒め言葉だと思いますよ」 相馬市長の「美人」発言直後、本誌・週刊ポストは『美人論』著者で国際日本文化研究センター所長の井上章一氏に見解を聞いたが、そこでは〈オフィスで女性社員から『○○さんは美人だよね』と語りかけられたら、『僕もそう思う』と答えてはいけないのでしょうか〉(週刊ポスト11月19・26日号)と疑問を述べていた。その問いにはこう答える。「そういうシチュエーションでは、その女性の話には乗らないほうが賢明でしょうね。女だって、男性的な価値観を内面化していますから、一元尺度でセルフランキングくらいしますよ。でも『僕もそう思うよ』とか言うと、女たちは内心シラケてしまうと思う。『まあ、人それぞれだね』とか『そういうキミも十分魅力的だよ』くらいの返しをすればいいのではないでしょうか」【後編〈上野千鶴子氏、ルッキズムをやめられない男性に「地域社会で排除される」〉へ続く〉】【プロフィール】上野千鶴子(うえの・ちづこ)/1948年生まれ。東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。著書に『おひとりさまの老後』『男おひとりさま道』『在宅ひとり死のススメ』などがある。※週刊ポスト2022年1月1・7日号
2021.12.25 07:00
週刊ポスト
ジェンダー研究で知られる東京大学名誉教授の上野千鶴子氏(写真/共同通信社)
上野千鶴子氏、ルッキズムをやめられない男性に「地域社会で排除される」
 2021年は、「女性蔑視」が厳しく追及される騒動が続いた。五輪組織委会長だった森喜朗氏は「女性がたくさんいる理事会は時間がかかる」と発言して辞任に追い込まれ、静岡県の川勝平太知事も「学力と容姿」を結びつけた発言で大炎上した。女性蔑視は許されないが、違和感があったのが、福島県相馬市長の立谷秀清氏が連合の芳野友子会長を「美人会長」と呼んで謝罪に追い込まれた一件ではなかったか。前後の文脈を含めて批判されたとはいえ、そもそも女性を「ブス」と貶めるのではなく、「美人」と称えることの何がいけないのだろうか? ジェンダー研究で知られる東京大学名誉教授の上野千鶴子氏に、率直に質問をぶつけた──。【前後編の後編。前編は〈上野千鶴子氏に聞いた「美しい人に『美人』と言ってはいけない理由」〉】 * * * リタイア後の男性は家庭内での発言にも注意が必要になってくるという。「ひとり暮らしでなければ、男は会社を退職した後も家庭とは関わり続けることになる。夫が常日頃から、よその女性を見るたびに『お、キレイなネーチャンだなぁ』とか発言したら、そのつど妻の心は削られますよ。妻は長い間、それを受忍してきたのでしょうけど、歳をとると受忍の限度がどんどん下がっていく。夫のほうが先に要介護になるケースが多いから、そうなると妻の逆襲が始まり、こっそりオムツ交換の頻度を減らされるかもしれません(笑)。家でも本音ダダ漏れはやめたほうが賢明です」(上野氏、以下同) 一方で愛想を尽かした妻が離婚を切り出すことは意外に少ないという。「離婚時年金分割ができるようになっても妻が受け取れるマックスは2分の1なのに対し、遺族年金は夫の年金受給額の4分の3で、さらに相続では資産も居住権も保障されます。離婚しないほうがトクと『妻の座』権は法律で手厚く保護されています。ただし、これは妻の地位が上がったわけではなく、“あとちょっと我慢して夫を看取ったほうがトクだよ”と妻に思わせ、夫が“看取り保障”を得ているのだと私は解釈しています。まあ、死ぬのを待っていると、夫はなかなか死なないんですけどね(苦笑)」 リタイア後の男性にとって家庭の他に居場所となりうるのは地域社会だが、ここでも言動に気をつけないと冷遇される可能性があると続ける。「リタイア後の男性は、家庭の外の地域社会に関わるケースもあります。男が地域社会で本音丸出し発言を繰り返したら、必ず地域の女性たちから顰蹙を買い見放されます。 会社組織とは違い、家庭や地域などの利害の伴わない集団の場合は、『美人』などと言って女性を分断するような男は排除されてしまいます」 地域社会で円滑な人間関係を築ける男性は、リタイア前の“助走期間”に共通点があるという。「今は人生100年時代で、65歳のリタイア後も人生はもう1ラウンド20~30年続きます。そこにソフトランディングするかハードランディングするかは大きな違いです。 ソフトランディングする人たちの共通点は、現役時代からちゃんと人間関係のマルチチャンネルを作っている。企業というのは軍隊のような指揮命令系統の組織ですが、それとは関係ない人間関係を築いています。そういうことができる男になるには、ルッキズムのように人間を一元尺度で序列化する認識を持っていてはダメでしょうね」 それでもあなたは「美人」と言い続けますか──上野氏はすべての男性にそう問いかける。【プロフィール】上野千鶴子(うえの・ちづこ)/1948年生まれ。東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。著書に『おひとりさまの老後』『男おひとりさま道』『在宅ひとり死のススメ』などがある。※週刊ポスト2022年1月1・7日号
2021.12.25 07:00
週刊ポスト
森喜朗氏は「発言の前後が消えている」と報道を批判するが(AFP=時事)
2021年「政治家の失笑発言大賞」、勝手に選定してみた
 口は災いの元、だが政治家はその言葉こそすべてだ。コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。 * * * 2021年も、あとわずか。去年から続いたコロナ禍、ワクチン騒動、東京オリンピック・パラリンピック、衆議院選挙、総理大臣の交代、鉄拳の素顔公開……などなど、大きな出来事がたくさんあった一年でした。そんな中で、政治家の“トホホな発言”も花盛り。誰がどんなことを言ったかを忘れないために、印象的な発言を振り返ってみましょう。 呼び方ですが、「失言」だと「悪気なくうっかり口がすべった」というニュアンスになりかねません。多くは「暴言」のほうがふさわしそうですけど、年末にケンカ腰になるのも控えたいところ。本人は大真面目に発しているものもあります。批判や軽蔑や呆れた気持ちをより強く込めるために、まとめて「失笑発言」と呼ぶことにしました。【政治家の失笑発言大賞トップ10】(肩書は当時、飛び出した順)●森喜朗東京オリパラ組織委員会会長「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」(2月)●小泉進次郎環境大臣「プラスチックの原料って石油なんですよね」(3月)●河村たかし名古屋市長「最大の愛情表現だった。金メダル獲得は、あこがれだった。迷惑を掛けているのであれば、ごめんなさい」(8月)●菅義偉首相「そのようなご指摘は当たりません」(9月など多数)●岸田文雄自民党総裁「岸田文雄の特技は、人の話をしっかり聞くということであります」(9月)●麻生太郎副総理「温暖化したおかげで北海道のコメはうまくなった」(10月)●吉村洋文大阪府知事「ブーメランが刺さりました」(11月)●二階俊博自民党元幹事長「(菅前首相に)『辞めてもらう』とか言う資格があるか。任命権者だと思っていたら大間違いだ」(11月)●福田達夫自民党総務会長「この事務費はしっかりとすぐに(市中に)流れるので、考えようによっては経済対策の一部にはなる」(12月)●石原伸晃内閣官房参与「まだ十分に体力、能力ともにあると思っているので、役に立つアドバイスをしたい」(12月) 順に振り返ってみます。森氏の発言は激しい怒りを買い、翌日あわてて謝罪会見を開きました。しかし、開き直りとも逆ギレとも取れる態度でさらなる批判や失笑を集め、結局会長を辞任することになります。小泉氏はラジオ番組で得意げにこう発言。聞いていた多くの人は、失笑しつつ「知ってるよ!」と突っ込んだことでしょう。 河村氏はソフトボール日本代表選手の金メダルを勝手に噛んだことが批判され、この謝罪コメントを出しました。しかし、謝る気があるとは思えない文面で、さらなる怒りと失笑を買ってしまいます。菅氏は首相時代、これに限らず多くのお決まりフレーズが失笑を招きました。「安心安全な大会を」「仮定の質問にはお答えできません」などなど。 岸田氏の発言は、自民党総裁選で勝利を収めた直後の挨拶で述べたもの。この段階では少しだけ期待を持たせてくれましたが、いまあらためて見ると失笑を禁じえません。ここに出てくる「しっかり」は岸田氏の口癖であり、おもにあんまりしっかりやる気がない場合に、ことさら念入りに使われがちです。 麻生氏は、日本を代表する失笑発言メーカーのひとり。温暖化云々は科学的には大間違いだし、何より生産者の努力を無神経に踏みにじっています。吉村氏の失笑発言メーカーっぷりも、なかなかパワフル。国会議員が1日の在職でも丸ごと1月分の文書通信交通滞在費が支払われていることを厳しく批判したまではよかったのですが、自分も6年前にその恩恵を受けていたことが判明しました。そのことを受けての自虐ギャグです。 二階氏も、幹事長時代は多くの失笑発言を繰り出してくれました。これは11月に都内で講演を行ったときの発言。8月末に当時の菅首長から幹事長の交代を打診されたことを振り返って、憎々しげに語りました。いや、実際には総裁が任命権者なんですけどね。また、司会者に「菅前首相と対等な関係か」と問われて、「対等でもなんでもないけど、生意気いうもんじゃないよ」と怒りを見せる場面もあったとか。 福田氏の発言は、18歳以下への給付を現金とクーポンに分ける“正当性”を主張したもの。要するに「クーポンにすれば間に入った会社が儲かるから」と白状しているわけで、その迂闊っぷりに失笑せずにはいられません。石原氏の発言は、岸田首相が強引に内閣官房参与のポストを与えたときのもの。10月の衆議院選挙で落選したことについても「私の不徳の致すところ。勝負は時の運だ」という失笑発言をしてくれています。 いずれも甲乙つけがたい、というか丙丁つけがたい味のある失笑発言ばかり。無理を承知で年間大賞を選ばせていただきます。ジャカジャカジャカ……。2021年「政治家の失笑発言大賞」は、混迷の五輪イヤーを象徴するという意味で、森喜朗氏の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」に決定です。おめでとうございます! このトップ10、最初は政治家に絞るつもりはなかったんですが、あっという間に政治家だけで10の枠が埋まってしまいました。2022年も、いろんな政治家がいろんな失笑発言をしてくれるでしょう。頼もしい限りですね。
2021.12.12 16:00
NEWSポストセブン
自民党に戻るのか?(左から大塚、松本、田野瀬。時事通信フォト)
岸田・自民が銀座豪遊議員に対抗馬立てず 伝統芸の「追加公認」か
 10月31日投開票の総選挙に向けて、各党が候補者を固めている。自民党は10月15日に2次公認を公表し、小選挙区では277人の公認候補が決まった。連立を組む公明党の小選挙区の候補者が9人いるため、合わせて286人。小選挙区は全国に289あるので、候補者のいない選挙区は3つということになるが、その顔ぶれを見ていくと、自民党の選挙戦略が、スキャンダル議員の“復党”ありきで進んでいることが透けて見える。 自民党、公明党のいずれの公認候補もいない小選挙区は東京15区、神奈川1区、奈良3区の3つだ。ベテラン政治ジャーナリストはこう言う。「3つの選挙区はいずれも、不祥事を起こして自民党を離党した議員のいる選挙区です。 東京15区は、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡る収賄罪などに問われて一審で実刑判決を受け、控訴している秋元司氏が議席を持っていた。後任選びが難航し、自民党は無所属で立候補する柿沢未途氏、今村洋史氏を推薦するという玉虫色の決着とした。柿沢氏か今村氏か、勝ったほうを自民党が『追加公認』するとみられている。 残りの2つの神奈川1区と奈良3区は、コロナによる緊急事態宣言中に銀座での豪遊が発覚して自民党を離党した松本純氏、田野瀬太道氏の選挙区です。両氏は今回、無所属として出馬しますが、この選挙で当選すれば“禊が済んだ”ということで、自民党に復党させるつもりだと考えられます」 今年1月、緊急事態宣言が発出されていたにもかかわらず、銀座のクラブを訪れていたことが発覚したのは、松本氏、田野瀬氏、そして大塚高司氏の3人。3人とも自民党を離党したが、大塚氏が大阪8区からの出馬断念を表明した一方、松本氏、田野瀬氏は無所属として出馬することを選択した。「大阪8区にしても、大塚氏が出馬断念を明らかにするまで、自民党は後継候補の選定を進めていなかった。この3人については、批判を一時的にかわすために離党したものの、選挙後の復党ありきのシナリオが描かれていたとみるのが自然でしょう。 とりわけ松本氏は麻生太郎・自民党副総裁の側近中の側近として知られています。麻生氏の支援を受けて自民党総裁選に勝利することができた岸田文雄・首相のもとで、対抗馬が立てられるはずもないでしょう」(前出・ベテラン政治ジャーナリスト) 無所属で出馬した候補を選挙後に「追加公認」するのは、自民党の“伝統芸”である。自民党関係者はこう話す。「かつての中選挙区時代には、ひとつの選挙区に複数の保守系候補が立つことは珍しくなかった。そうしたなかで、自民党からの公認を得られなかった保守系の候補が、“選挙に通ったら自民党に入れる”というかたちの処理がなされるケースが少なからずあった。 たとえば森喜朗・元首相はもともと、岸信介氏の側近だった今松治郎・衆院議員の秘書を務めていたが、1969年に旧・石川1区から出馬した際には自民党からの公認が得られなかった。無所属候補として出馬し、下馬評を覆してトップ当選を果たすと、自民党に追加公認された。 鈴木宗男氏(現・日本維新の会参院議員)も、中川一郎・元農相の秘書から1983年に旧・北海道5区に初出馬した際は無所属だった。中川氏の長男である昭一氏(元財務相)と激戦の末に当選を果たし、自民党に追加公認された」 神奈川1区の松本氏や奈良3区の田野瀬氏は、今回は「無所属」とはいえ、自民党が同選挙区で候補を立てていない以上、“事実上の自民党候補”であり、「追加公認」が視野に入っていることは想像に難くないだろう。コロナ禍のなかでの銀座豪遊議員の復党が許されるのか、有権者の判断に注目が集まる。
2021.10.19 07:00
NEWSポストセブン
葬儀場には安倍前首相から贈られた供花も(写真提供/河村建夫事務所)
森喜朗氏の失言で注目された女性秘書 永田町に捧げた89年の生涯に幕
 永田町で「議員より偉い」と謳われた伝説的な大物秘書・中内節子さんが8月21日、肺炎のため逝去した。享年89。節分生まれの節子さんは、故・田中龍夫元文部大臣、後継の河村建夫元官房長官と二代、58年にわたって秘書を務めた。 中内さんは最近、森喜朗元首相のこの発言で一躍“時の人”となった。「河村さんの部屋に大変なおばちゃんがいる。女性というにはあまりにもお年だ」 女性蔑視発言で五輪組織委会長を辞任した直後とあって世間からは猛批判を浴びたが、当の中内さんは意に介していなかった。 中内さんが秘書人生をスタートした1963年、森元首相も岸信介側近の衆議院議員・今松治郎氏の秘書をしており、二人は秘書仲間だった。「角福戦争」と呼ばれた熾烈な政治闘争では、ともに福田赳夫陣営の同志として参戦。酸いも甘いも噛み分けた「戦友」だったのである。 その後、田中龍夫氏が引退し、旧・山口1区で後継となった河村氏が田中氏の事務所も秘書の中内さんもそのまま引き継いだ。中内さんはすでに秘書歴30年近い大ベテランで、河村氏に対して「早く中内さんから独り立ちしないとな」と皮肉交じりにからかう人もいた。 だが、河村氏は公設秘書の定年である65歳を超えても中内さんを私設秘書として雇い続けた。それだけ中内さんの存在が大きかったということだ。 首相になったばかりの頃の小泉純一郎氏に「あら純ちゃん、あなた偉くなったわねえ」と声をかけ、同じ山口県選出の安倍晋三前首相については「子どもの頃、夜行列車で騒いでいたから注意したのよ」とピシャリ。大物政治家との逸話には事欠かない。 しかし決して偉ぶらず気さくな人柄で、30年前、山口県でNHKの新米記者をしていた筆者にも親しげに話しかけてくれた。「あなた、いい人いるの?」「いいえ、いません」「それなら紹介してあげるわ。素敵な方を紹介するから写真を撮らせて」 事務所の壁際に立たされ、使い捨てカメラで写真を撮られた。ところが間もなく私に「いい人」ができて、「すみません。あのお話はなかったことに」とお詫びした。 中内さんの葬儀は親族のみで行なわれたが、それでも安倍晋三氏からは供花が届いていた。 来る9月16日に都内でお別れの会が催される予定だという。そこはさながら“弔問外交”の場となるだろう。 なにせ河村氏の地元・山口3区には、参議院議員で将来の総理総裁候補と目される林芳正氏が鞍替え立候補を表明したからだ。総裁選を巡る政局が混迷を極めるなか、それぞれが所属する二階派、岸田派の「代理戦争」の様相を呈してきた。 角福戦争はじめ数々の政争を目の当たりにしてきた中内さんは、“後輩たち”の党内政局を天国からどう見るのだろうか。●相澤冬樹(ジャーナリスト)※週刊ポスト2021年9月17・24日号
2021.09.07 11:00
週刊ポスト
五輪関係者の発言を忘れない(写真は山下泰裕・JOC会長/AFP=時事)
山下、橋本、丸川、森、バッハ…「亡国五輪」に誘った関係者の妄言集
 東京に4回目の緊急事態宣言が発令されるなか、東京五輪は「無観客」で強行開催される。政治家や五輪貴族たちは、国民に根拠なき楽観論を振りまいて開催へ“特攻”していった。そんな彼らの“亡国の発言”をきちんと記録しておく必要があるだろう。 五輪に向けて調整に懸命なアスリートを自分たちの「保身の楯」に使っているのがJOC(日本オリンピック委員会)や組織委員会の首脳たちだ。 山下泰裕・JOC会長は会見(6月28日)で「一部の選手に心ないメッセージが届いている」としたうえで、国民にこう呼びかけた。「叩くんだったらJOCとその会長の私を叩いて」 五輪開催に対する不安と不満の矛先が何の責任もない選手に向けられていることを批判し、選手を守っているつもりかもしれない。 だが、JOCや組織委員会が国民の不安に正面から向き合い、解消する努力をしてこなかった結果、国民の一部はどうしようもない怒りを選手に訴えるという間違った方向に向けた。そうした事態を招いた責任を棚に上げて「叩くならJOCと私」とは悲劇のヒーロー気取りでしかない。「選手を楯」に開催を正当化する発想は組織委員会の森喜朗氏の次の発言からもわかる。「無観客だっていいじゃない。お客さんのために五輪があるわけじゃない」 組織委副会長を務める遠藤利明・元五輪相の政治資金パーティー(7月6日)でそう語り、「やっぱり一生懸命努力してきたアスリート(のためにある)」と続けた。 選手たちはオリンピズムをわかっていない人が組織委の会長をやっていたのかと暗澹とした気持ちになったはずだ。 五輪は、「文化・国籍などさまざまな差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」(JOCのHPより)ことを目的としている。 それを“アスリートのために五輪を開いてやる”と言わんばかりの森氏の発言は、開催の不満が一層選手に向けられかねない。 競泳の池江璃花子選手らにSNSなどで出場辞退を迫る書き込みが行なわれたことに、「アスリートが責められるべきじゃない」と言う橋本聖子・現組織委員会会長は、こうも話した。「選手が“ぜひやりたい”とすら言えない状況にある」 アスリートを五輪開催正当化に利用する発想が“父”と慕う森氏と同根である。 国民の「平和の祭典」に対する期待をしぼませた発言は多い。 丸川珠代・五輪相は、今年3月には「厳しい生活を続けている国民の皆さまの理解を得る」と語ったが、4月になると「IOC(国際オリンピック委員会)のコーツ調整委員長の『必ず開催する』という言葉は非常に心強く思っている」と語り、IOCに責任転嫁してみせた。 さらに、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂・会長が国会で「パンデミックの中での五輪開催は普通ではない」と証言するとこう批判してのけた。「全く別の地平から見てきた言葉をそのまま言ってもなかなか通じづらい」 国民には尾身証言のほうが実感に近い。丸川氏は自分が“国民とは全く別の地平”に立って開催を推進していることを自ら白状したに等しい。 IOC幹部たちも開催国の国民の気持ちを逆なでする発言を残してきた。トーマス・バッハ会長は東京で緊急事態宣言が発出された場合の開催についてこう語っていた。「(緊急事態宣言は)五輪とは関係ない」 ジョン・コーツ副会長はもっとはっきり、「緊急事態宣言下での開催? 答えはイエスだ」と発言。IOCの古参委員でオリンピック放送機構会長を務めるディック・パウンド氏は「アルマゲドンが起きない限り大会は開催される」と言い切った。 こうした発言で国民の心は五輪から離れ、無観客開催決定で東京は五輪の“ロケ地”となった。「テレビでも十分感動できる」 西村康稔・経済再生相はNHKの番組でそう語ったが、国民全員テレビで見るなら東京で開催する意味はない。 政治家や五輪貴族たちの無責任な言葉によって、国民は逆に五輪不信と感染への不安を募らせている。この国の政治家が五輪強行で日本の「コロナ敗戦」を覆い隠そうとしているとしか見えないのだ。※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号 
2021.07.20 07:00
週刊ポスト
陰謀論が現れる背景は?(写真はイメージ)
反政権も政権擁護もある陰謀論 共通するのは「マスコミへの不信感」
 今、日本ではかつてないほど「陰謀論」が流行している。ネットで語られている陰謀論には、政府を黒幕と位置づけるようなものも多い。政権の不祥事から世間の目をそらすために、芸能ニュースになる事件を政権が仕掛けている──という陰謀論は、しょっちゅう出てくる。 2019年11月に女優の沢尻エリカが麻薬取締法違反容疑で逮捕されたのは、国会で安倍政権が「桜を見る会」を巡る疑惑で野党から激しく追及されている頃だった。 この件についてタレントのラサール石井は、ツイッターで「まただよ。政府が問題を起こし、マスコミがネタにし始めると芸能人が逮捕される。これもう冗談じゃなく、次期逮捕予定者リストがあって、誰かがゴーサイン出してるでしょ」とつぶやき、鳩山由紀夫元首相も、「みなさんが指摘するように、政府がスキャンダルを犯したとき、それ以上に国民が関心を示すスキャンダルで政府のスキャンダルを覆い隠すのが目的である」とツイートして話題になった。「日本の縦割り行政で、領収書や資料の破棄と芸能人の逮捕のタイミングを合わせるのは至難の業です。行政の現場を理解していれば分かるはずですが……」(陰謀論に詳しい評論家の真鍋厚氏) 最近でも、「星野源と新垣結衣の結婚発表は、自衛隊のワクチン接種の予約システムに欠陥があったことをごまかすため」という言説が出ている。 日本ではなく海外が黒幕というパターンもある。 東京五輪組織委員会の森喜朗会長が女性差別とも受け取れる発言の責任をとって会長を辞任した際には、「中国が新疆ウイグル問題で出てきた北京五輪ボイコット論を打ち消すため、森氏の発言を拡散し、騒ぎを起こして注目を逸らそうとした」という説がまことしやかに伝えられた。 このように陰謀論には反政権もあれば政権擁護のものもあるが、両者に共通するのはマスコミ報道への不信感だと、ノンフィクション作家の田中聡氏(著書に『陰謀論の正体!』は言う。「たとえば、政府はコロナ後遺症やワクチンの副反応について大々的に公表しないし、テレビ、新聞もあまり取り上げません。そうなると、『マスコミ報道では何が本当なのかわからない』という不信感が高まり、ネットで調べたりすると、マスコミとは違った情報が溢れていて、情報の落差に驚く。すると不信感がますます募り、陰謀論の“真実”も受け入れやすくなります」※週刊ポスト2021年6月11日号
2021.06.01 11:00
週刊ポスト
国民の声よりも、自分たちの利権を優先か?(写真/共同通信社)
コロナ対策費で恩恵受ける専門家たち 五輪に「NO」と言えない状況に
 五輪開催に突き進む日本政府。菅義偉首相には、後戻りできない政治的事情もある。背後で「何が何でも開催しろ」と睨みを利かす安倍晋三・前首相の存在があるからだ。安倍氏は昨年、五輪の1年延期を決めた張本人だ。「当時は森喜朗先生も感染収束にかかる時間を考えて2年延期に傾いていたが、総理として開会式に臨みたい安倍さんが自分の任期中に開催できるように1年で押し切った」(自民党ベテラン議員) 結果的に安倍氏は退陣したが、自分のレガシーを優先した私利私欲の判断が今回の事態を招いたことは間違いない。「五輪中止となれば菅首相が政治生命を絶たれるだけでなく、安倍さんも運命共同体だ」(同前) その安倍氏は菅首相が衆参トリプル選挙で全敗すると、「当然、菅首相が続投すべき」と擁護した。菅氏に9月まで総理を続けて五輪を開催してもらわなければ自分が窮地に陥るからだ。一方で、求心力が下がった菅首相は、安倍氏の顔色をうかがわなければ政権を維持できない。 政府による感染対策費の大盤振る舞いも、五輪中止論の“口封じ”につながっている。 感染拡大以来、医師会の幹部や在野の感染症専門家からは「五輪中止」の声が強まっている。ここで政府に感染対策をアドバイスする立場の新型コロナウイルス感染症対策分科会や厚労省のアドバイザリーボードの専門家たちが、「五輪開催は無理だ」とはっきり勧告すれば、政府は方針転換を迫られるはずだ。 しかし、厚労省医官出身の尾身茂・分科会座長は、「議論すべき」というだけで、他のメンバーも政府に遠慮して「中止」を突きつけようとはしない。この政府の感染症専門家集団の中心が、PCR検査や変異株検査などを取り仕切る国立感染症研究所(感染研)だ。 分科会会長代理で厚労省アドバイザリーボードの座長を兼務する脇田隆字氏は感染研の所長。ボードメンバーはその脇田氏をトップに感染研感染症疫学センター長の鈴木基氏、感染研OBで内閣官房参与の岡部信彦氏(川崎市健康安全研究所長)などが顔を揃えて感染対策に大きな影響力を持つ。 この感染研、コロナで予算が急増している。年度から定員が2倍(716人)になり、予算も前年度比41億円増の106億円へと増えた。 研究者個人への科研費(科学研究費助成)も増えた。 たとえば、厚労省の「新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業」の助成金は、コロナ前の2019年度は総額3億4320万円に過ぎなかったが、2020年度はコロナ対策補正予算などで40億5341万円へと10倍超に増やされ、内閣官房参与の岡部氏など研究者41人に助成された。そのうち感染研の現役研究者(15人)に9億円以上が配分されている。中には狂犬病やポリオの研究などコロナと関係がなさそうな研究への助成など、焼け太りが疑われるものもある。 政府のコロナ対策費の大盤振る舞いの恩恵を受けているから、分科会や厚労省のアドバイザリーボードは、菅首相が強行する「五輪開催」にNOと言えないのだ。※週刊ポスト2021年5月28日号
2021.05.21 07:00
週刊ポスト
森喜朗氏と女性秘書との関係は?(時事通信フォト)
森喜朗氏「あまりにお年」発言の女性秘書は永田町の伝説だった
 わずかひと月でまたやった。3月26日に河村建夫元官房長官(78)の議員在職30年を祝うパーティーで「河村さんの部屋に大変なおばちゃんがいる。女性というにはあまりにもお年だ」と挨拶した森喜朗元首相(83)。 女性蔑視発言で東京五輪組織委会長を辞任したばかりとあって猛批判を浴びたが、一方でこの女性秘書との関係は語られていない。パーティーの主催者・河村氏が語る。「秘書の中内節子さん(89)です。1963年からこの世界にいらして、元々は福田赳夫さん(元首相)の側近だった田中龍夫さん(元通産大臣)の秘書でした。森さんが今松治郎さん(元衆院議員)の秘書をしていた頃の先輩格に当たります。大学も森さんと同じ早稲田の英文科卒。2人は50年来の付き合いです」 現役議員秘書ではおそらく最古参。「今はうっかり使える言葉ではないけれど、あの方は“女傑”。親しみを交えて、ああ言っちゃったんだろうな」(同前) 森氏は、昨年2月に中内氏の米寿の祝いにも駆けつけたという。「来てもらうのは申し訳ないから、声をかけなかったんです。そしたら『どうして俺を呼ばない』と怒られて、当日も挨拶してくださった」(同前) 中内氏の交友は森氏だけに留まらない。河村氏の秘書で、長男の河村建一氏はこう語る。「安倍(晋三)先生や小泉(純一郎)先生とも親交があります。小泉先生が総理に就任した頃(2001年)、レストランで偶然小泉先生に出くわしたんです。中内さんは『あら純ちゃん、あなたも偉くなったわねえ! うちの先生(河村氏)を文科大臣にしてくれて、ありがとね』と声をかけていました。小泉先生も立ち上がって挨拶されていました」 中内氏は昨年末から体調を崩し、現在は休養中。総理経験者をもってしても中内女史は「あまりにも格上」の存在だった。●取材・文/西谷格(ジャーナリスト)※週刊ポスト2021年4月16・23日号
2021.04.07 07:00
週刊ポスト
下重暁子の生き方論「いい人と思われることになんの意味があるのか」
下重暁子の生き方論「いい人と思われることになんの意味があるのか」
 女性セブンで約2年にわたって連載された『夕暮れのロマンチスト』を再構成し、加筆、修正した下重暁子さん(84才)の著書『自分をまるごと愛する7つのルール』(小学館新書)が刊行された。下重さんが綴ってきた、日々を豊かに過ごすためのコツ、世の中を騒がせたニュースへの冷静な視点には、困難な時代を生き抜くための金言が詰まっている。新型コロナウイルスで一変した社会にいま、思うこととは──。コロナ警察の横行は不寛容極まれり 新型コロナウイルスが日本で初めて確認されてから約1年。2度にわたる緊急事態宣言や、リモートワーク、外出自粛、必須となったマスク着用など、世の中は一変した。「コロナ禍で目についたのが、“自粛警察”や“マスク警察”といった人たち。赤の他人がどう過ごしているかについて、執拗に気にし、バッシングしたりしているという報道に触れ、不寛容極まれり、と感じました。世界から寛容の文化が消えていき、アメリカのトランプ政権が加速させた分断の時代に突入したことは明らかですが、コロナによってますますその傾向が強まりましたね」(下重さん・以下同) 他人を気にしすぎるあまり、その行動が目につき、少しでも自分と相容れなければ“正義”を振りかざして攻撃する。根底にあるのはSNSによる、つながりすぎる社会ではないかと下重さんは指摘する。「以前なら、何か思うことがあっても自分の内側で抱えていて、親しい人に悪口を言うくらいですんでいたけれど、いまではネット上で発信すれば全世界に拡散していく。そしてそういう攻撃を称賛したりする人がいて、ウケたりするものだから、さらにネットに自分の“意見”をたやすく表明する。 私もスマホを持っているし、LINEもやりますけど、本当にごく親しい人、数人とだけ。みんなつながりすぎているんです。つながらなければという強迫観念に駆られて。そうすると、知りたくないことも知らなくていいことも、山ほど情報が流れ込んでくるわけです。 そういう他人の言動にいちいち反応して、攻撃する。それで結局はストレスになっちゃうんですよ。ストレスの原因を考えると、人とつながるということですよ。人と多くつながれば、それだけストレスは増えていくんです」人とつながることに大きな価値を見出す人が多すぎる『家族という病』や『極上の孤独』で説いたのは、家族こそ他人、人生には孤独が必要だということ。それはコロナ禍のいまこそ伝えたいことだという。「友人たちと食事に行きたいと思っても、なかなか行くことができない。お花見もできない。コロナの時期、人とつながれないからこそ、自分自身と向き合う時間がたくさんあるわけです。だから自分自身ととことんつきあう時間があるはずなんですよ。そうやってコロナをうまく乗り越えて、上手に時間を使えばいい。 でもコロナで文句ばかり言っている人、寂しいよねって言っている人は、まったく何も残らない。今度また人と会える時間がくると、同じようにべらべらどうでもいいことをしゃべってね。人とつながることがいちばんの価値、みたいなところがあるじゃないですか。 そんなことない。私は人とつながることに価値があるなんて思ってません。まず自分とつながらなきゃダメですよ。自分自身がどんな人間かを知らないで、人とつきあうなんてことはできません」 著書のタイトル「自分をまるごと愛する」に込めたのは、まさに「自分自身としっかりつながる」というメッセージだ。それこそがいまの時代に足りないと下重さんは喝破する。「自分のいいところは誰だって知っているし、愛してる。でも“まるごと”というのは悪いところ、嫌いなところも全部です。人って自分と向き合うのが怖いというようなことがあるけれど、自分のことをいちばん知らないのは自分。どんなときに落ち込むか、どんなときに憎しみを感じるか、嫉妬するか、そういう自分のイヤなところまで、自分自身を掘るんです。 自分が嫉妬深い人間だなんて思いたくもないけど、やっぱり心の底にはあって、だから嫉妬について書かれた本が売れたりするわけですよ。芸能人の不倫ニュースで盛り上がるのも一種の嫉妬。不倫がけしからんと道徳的に怒っている人なんてほとんどいない。あれは本音を言えば嫉妬です。本当は自分もそうしたいけれどできない。あいつだけうまいことやりやがって、という嫉妬心を正義感にすり替えているだけ。 自分のことを本当にわかって、見つめることができた人だけが人を理解することができる。自分自身の理解もできていないのに、人なんて理解できるわけない。おこがましいですよ。イヤな自分を含めて残念ながら自分です。嫌いな部分だけ切り捨てるわけにはいかないわ、と思えれば、他者への想像力を持つことができるようになります」森喜朗さんの発言だって笑える部分があるじゃない 森喜朗氏の女性蔑視発言など、世間のバッシングが高まる事象でも、捉え方は大きく変わる。「自分の中にもああいう差別的な感情はないか、悪気はないのにうっかりよからぬ発言をしてしまうことはないか、そう考えるとどうですか? 自分にも少なからずそういう一面があるということを知っていて、それも自分だと受け入れて赦していれば、他への想像力も働き、赦すことができるようになる。 森さんの発言だって、あぁまたやってしまったなとどこか笑える部分がありますよ。あんなこと言ったら叩かれるってわかっているのに言ってしまう。だけど女性たちだって“男らしくない”とか“仕事ができない男なんて”と軽口を叩いたりしますよね。自己愛というと、ナルシシズムのような自分勝手なイメージがあるかもしれませんが、真逆。自分を愛することで他人を大切にすることができるんです」 つながりすぎる社会の中で、他人の言動を気にし、他人からの視線を気にする生き方から解放されれば、多くの人が抱える“生きづらさ”が解消されるはず、と下重さんは言う。「大事なのは、他人からどう思われるか、ではありません。自分のことを自分がよくよくわかっていればそれでいい。いまの世の中はいい子になりたい人が多いけれど、いい人と思われることになんの意味があるんでしょう。 自分のことを本気で思ってくれる人なんてそうそういませんよ。家族だって、恋人だって、友達だって自分がいちばん大事。それでいいんです。だからこそ、他人に何か言われても、どう思われても、“そう?”と聞き流してしまえばいいんです。こうしてほしい、こう思われたいなんて人に期待するのではなく、自分に期待する。他人があって自分があるのではなく、あくまで主体は自分なのですから」 下重さんが実践するルールは7つ。ぜひ本書を手にとり、明日への指針にしてほしい。【プロフィール】下重暁子(しもじゅう・あきこ)/1936年生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。アナウンサーとして活躍後、民放キャスターを経て、文筆活動に入る。『家族という病』『極上の孤独』『明日死んでもいいための44のレッスン』など著書多数。※女性セブン2021年4月15日号
2021.04.07 07:00
女性セブン
森喜朗氏の問題発言について評論家の呉智英氏が考察する(時事通信フォト)
森喜朗氏の問題発言バッシングから考える「寛容になれという不寛容」
 公人が失言したとき、われわれはどのような態度をとるべきなのか。寛容に受け止めるべきなのか、厳しい視線を向けるべきなのか。森喜朗・元東京五輪組織委員会会長の女性蔑視発言へのバッシング問題について、評論家の呉智英氏はこう述べる。 * * * 二月十三日「週刊新潮」からコメントを求める電話があった。森喜朗オリ・パラ組織委会長の「女性蔑視発言」が問題になっているが御意見をうかがいたい、という。ああ、それは森喜朗が低学歴だからだね、と、私は答えた。受話器の向こうで、記者が笑っているのが分かる。でも、こんなコメント、記事にできないよな、と私。一応デスクに聞いてみますが、と記者。 なかなかしっかりした記者だ。学歴問題は脇へ置いといて、森発言バッシングについては…と、私は三十分ほど話をした。同誌二月二十五日号では、限られた字数内でよくまとめている。「こうした風潮を評論家の呉智英氏はこう斬る。『寛容になれという不寛容』が蔓延(はびこ)っている」 私の念頭には、昨年末に出た森本あんり『不寛容論』(新潮選書)があった。森本は二〇一五年には『反知性主義』がポピュリズム流行の風潮の中で話題となった。今度の『不寛容論』もいくつもの書評で取り上げられている。新大陸アメリカで寛容思想がどのように成立したか詳論し興味深い。しかも「寛容の強制」というパラドックスが成立することも指摘している。私が週刊誌でコメントした「寛容になれという不寛容」のことだ。 これは論理学・哲学で言う「自己言及のパラドックス」である。「全称命題のパラドックス」と言ってもいい。命題propositionとは、提案、提題、題を命(の)べる、という意味で、命(いのち)とは無関係だ。 自己言及のパラドックスは、古く聖書にも出てくる。「(クレタ島人が言った)クレタ島人は嘘つきだ」(テトス書1・12)。じゃ、その発言(命題)自体が嘘ではないのか、ということになる。仮にこれが「クレタ島人の半数は嘘つきだ」なら、こうしたパラドックスは生じない。全称命題だから、こういう逆説になる。部分命題ならパラドックスは起きない。 さて、寛容という規範について考えてみよう。これは、憲法や国際的宣言にもしばしば登場する大きな規範、いわば「全称的規範」ということになる。一方、小さな、部分的な規範も存在する。「早起き励行」などその一例である。勤め人や児童生徒などは早起きが励行されるべきだが、私などは九時前に起床したことがない。近所の新聞配達所の店主は、毎日十二時起きです、と言っている。もちろん深夜の十二時である。そうであれば、早起き励行が国際的規範になることはない。対するに、寛容はパラドックスが生じるような全称的規範になっている。 森本あんりは二月二十八日付産経新聞に寄稿し、「寛容は是認でも理解でもない」「是認できなくても、相手を拒絶せず」。「われわれにできるのはそこまでなのである」としめくくっている。 同じことは、自由、平等、人権についても言える。これだって全称命題のパラドックスが生じる。自由を否定する自由、平等に不平等を主張する権利、反人権の人権。「我々」からも「彼ら」からも「できるのはそこまで」なのか。【プロフィール】呉智英(くれ・ともふさ)/1946年生まれ。日本マンガ学会理事。近著に本連載をまとめた『日本衆愚社会』(小学館新書)。※週刊ポスト2021年3月19・26日号
2021.03.10 07:00
週刊ポスト
五輪組織委会長騒動 「女性にお鉢が回ってくるのは手詰まりのとき」
五輪組織委会長騒動 「女性にお鉢が回ってくるのは手詰まりのとき」
 森喜朗氏の女性蔑視発言騒動は、すったもんだの末に橋本聖子氏(56才)が東京五輪組織委員会会長の後任となったが、どことなく後味の悪い結末に多くの国民のモヤモヤは募るばかり……。体験取材などでおなじみの女性セブンの“オバ記者”こと野原広子が、森喜朗氏の失言騒動と後任の橋本聖子氏について、思いを明かす。 * * *「そうそう、橋本聖子と言えば、これよ。私の大ちゃんに、許せない!」 友人からLINEで送られてくるキス写真を見るたびに、私は思わず取り乱す。東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長に橋本聖子氏(56才)が就任して2週間近くたつけど、高橋大輔ファンの友人たちはいまだ納得できないのか、鬱憤ばらしなのか、橋本氏の話題になるたびにこの写真を送ってくる。 コトが起きたのは7年前で、騒動後、橋本氏は見るも気の毒なショゲっぷりでワイドショーのカメラの前で謝っているんだけどね。人の噂も七十五日──私は3年前から、アルバイト先の議員会館や国会議事堂で、何度も彼女を見かけている。けれど、その姿からチュー写真を思い浮かべたことはない。いつもこざっぱりしたパンツスーツ姿で、秘書と話しながら歩く表情にも、生真面目さがにじみ出ているの。「こういう人が、オリンピックに夏冬7度出場、なんてとんでもないことができるんだな」と、すれ違いざまに頭を下げちゃったこともあったっけ。……でも、それは平時の話ね。森喜朗氏(83才)の女性蔑視発言から始まったゴタゴタの中で彼女の名前が出てくると、どうしたことか、見る角度が変わっちゃう。「そもそも参議院議員になったのは、当時、自民党幹事長だった森喜朗から声をかけられたからよね」と、政治好きの女友達のK子から聞かされると、「てことは、彼女もしょせんは川淵(三郎)さんと同じ“身内”? 男社会で生きていくためには、結局は長いものには巻かれるしかないってこと?」と言いたくもなるんだって。 実際、国会の様子をこの目で見ると、“異様”としか言いようがない。何せ、本会議場にいる衆議院議員465人の大半が男性、というかおじさん、おじいさん。濃いグレーか濃紺のスーツで、目から入ってくるものが、一般社会とかけ離れて真っ黒なのよ(なぜかネクタイだけは、目の覚めるようなブルーが人気なんだけどね)。 これがヘンだと誰もが思っていると思う。古手のおじいさん議員が真顔で「どんどん女性に活躍してほしい」と、とってつけたように言うけど、言うだけで、何かする気はサラサラない。 で、女性にお鉢が回ってくるのは、橋本氏のように、おじいさんたちが手詰まりになったときよ。大投資をしちゃった東京五輪をやるか、やらないか、やれないか--会長になったら、最終決断のハンコを押さざるを得ないから、どう転んでもワリの合わない責任を押し付けられることになる。“火中の栗”どころか、火の中へ飛び込めという話じゃないの。私が橋本氏の友達なら、「会長になんかなるな、逃げろ!」と言うわよ。過去のアヤマチをほじくり返す人間もいるしね(私のように)。なのに、橋本氏は引き受けた。さすが五輪の申し子よね。 橋本会長は「新編成の東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会は、女性理事の比率を40%にする」と言う。これには大賛成! そんな図を想像しただけでうれしくなっちゃう。 でね。橋本聖子さんに提案があるの。会長になったんだから、森前会長の色を払拭しちゃわない? ちょっとずつ、なんて言わず、思い切ってズバッと。できたら、「森さんの手法はこうだったけど、私はこうします」と発表してくれたらいいんだけど、そこまでは望みすぎかしら……。 昔はよく「会社や組織では“ほうれんそう(報告・連絡・相談)”が大切だ」なんていわれていたけど、イマドキは「こまつな」や「きくな」なんだってね。「こまつな」は「困ったら・使える人に(仕事ができる人に)・投げる(任せる)」。「きくな」は「気にせず休む・苦しいときは言う・なるべく無理しない」。 そうそう、これよ。しょせん、おじいさんたちが尻に帆をかけて逃げ出した大役だよ。上手にアピールしながら、気張らず、やりたいようにやればいいんだって。 橋本さんはプライベートでも大変だと思う。9才上の夫と6人の子供がいる。これ、大変なことでね。現職国会議員で妊娠を発表したのは2人目で50年ぶりだったというけれど、考えてもみてよ。人から絶えず見られている国会議員でありながら、家に帰れば、先妻の子を交えた大家族の喧騒──そんな毎日、並の神経じゃもちませんって。  でも、これって大組織の長、っていうか、ビッグマザーの素質充分ってことじゃない? たしかにね、チュー写真はいただけないけど、一連の騒動を見ているうちに、気がついたら私はすっかり聖子ファンになっていたの。 そうそう、「こまつな」や「きくな」のほかに、「ちんげんさい」っていうのもあるんだってね。「沈黙する・限界まで言わない・最後までがまん」──そんなの、絶対にダメ。片意地張ったおじさんのマネをしたって、いいことなんか何もないもの。 とてつもない大役を引き受けた橋本さんに、私は心の中でエールを送っている。橋本さんの後に続いて、女性がどんどん政界に入って、国会の本会議場の色を、一般社会並みに変えてほしいな。【プロフィール】「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。※女性セブン2021年3月18日号
2021.03.04 19:00
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