当時の朱鎔基首相に中国内の無数の携帯電話会社を一つに統合するようアドバイスし、実際に「中国電信(チャイナ・テレコム)」という国有企業が設立され、アメリカの株式市場でIPO(最初の株式公開売り出し)を実施し、国外資本を集める方法で、みごとに成功させたのだ。「中国電信」はいまでは全世界でも10位以内に入る大企業となった。
中国には米日両国のような政府が全面支援して技術革新を図る「ナショナル・イノベーション・システム」が存在しなかった。だが米日両国は中国に求められると喜々としてそのシステムの構築を指導した。アメリカはとくに政府機関の全米科学財団が中国関連の事業に政府資金を豊富に支出した。中国の農業生産を飛躍的に高める肥料などの技術革新を援助したのだ。
中国は今後の5~10年もこうした手法でアメリカや日本の資本、技術、システムを利用し、借用し、必要なら技術はためらわずに盗み、自国の総合的国力の増大に努めるだろう。米日両国はこのような中国の動きを阻止するべきだ。なぜなら中国は自国独自の価値観の下での世界制覇を目指しているからだ。
●Michael Pillsbury/1945年、カリフォルニア州生まれ。スタンフォード大学卒業、コロンビア大学大学院博士課程修了。国連本部勤務、ランド研究所分析官などを経て、ニクソン政権から対中国政策を担当。現在は国防総省顧問、ハドソン研究所中国戦略センター所長。
聞き手■古森義久(産経新聞ワシントン駐在客員特派員)
※SAPIO2016年2月号