国内

男性拒絶や依存も 監禁事件の被害少女を悩ます後遺症

 埼玉・朝霞の中1女子監禁事件は、寺内樺風容疑者(23)の人物像や監禁生活の実態が捜査によって徐々に明らかになりつつある。次の焦点は、被害少女の円滑な社会復帰だろう。

 その点で参考になるのが、2000年に新潟・柏崎市で発覚した監禁事件である。被害少女は9歳から19歳までの9年2か月の間、犯人の自宅2階の部屋に監禁されていた。事件を追ったノンフィクション『14階段』著者の窪田順生氏が話す。

「被害少女は同年代とは明らかに違う19歳でした。外出もできずに栄養状態も悪く、足腰も弱っていたそうです。世の中のことはテレビを見て知っていたようで、犯人と競馬の予想をしたり、ときどき議論もしたりしていたそうです。それでも、学習面ではかなり立ち遅れていた」

 小学校高学年以降の9年間の教育を取り戻すのは至難の業だが、それ以上に深刻だったのはコミュニケーションの面だった。

「初めて会う人と話ができず、異性に対してずっと警戒心を抱いていたそうです。大人数と会うことも苦手で、人との関わりも親族と幼なじみの女の子などに限られていたといいます」

 朝霞の少女は寺内容疑者とともに外出する機会があったといわれるが、心理的な支配下に置かれていたのは新潟の少女と同じ。同様の症状が出る可能性があると指摘するのは、精神科医の姜昌勲氏(きょう こころのクリニック院長)だ。

「思春期の大事な時期に事件を経験しただけに、影響が出るとすれば対人関係でしょう。被害者の性格にもよりますが、異性を過度に拒絶したり、逆に過度に依存的になってしまったりということが考えられます。不眠状態が続いたり、前触れもなくフラッシュバック(再体験現象)が起きたりすることもある。専門家による継続的なケアと家族のサポートが欠かせません。

 一番悪いのは、『逃げられたのではないか』『少女も悪い』という世間の声です。そうした悪意ある雑音にさらすべきではありません」

 新潟の少女は現在35歳になっているはず。近況は不明だが、「事件から数年後には自動車教習所に通えるくらいに回復したと聞いた」(窪田氏)という。

 少女の青春を奪った寺内容疑者の罪は重い。

※週刊ポスト2016年4月15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

被害男性は生前、社長と揉めていたという
【青森県七戸町死体遺棄事件】近隣住民が見ていた被害者男性が乗る“トラックの謎” 逮捕の社長は「赤いチェイサーに日本刀」
NEWSポストセブン
体調を見極めながらの公務へのお出ましだという(4月、東京・清瀬市。写真/JMPA)
体調不調が長引く紀子さま、宮内庁病院は「1500万円分の薬」を購入 “皇室のかかりつけ医”に炎症性腸疾患のスペシャリストが着任
女性セブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
1980年にフジテレビに入社した山村美智さんが新人時代を振り返る
元フジテレビ・山村美智さんが振り返る新人アナウンサー社員時代 「雨」と「飴」の発音で苦労、同期には黒岩祐治・神奈川県知事も
週刊ポスト
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
女性セブン
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
タイトルを狙うライバルたちが続々登場(共同通信社)
藤井聡太八冠に闘志を燃やす同世代棋士たちの包囲網 「大泣きさせた因縁の同級生」「宣戦布告した最年少プロ棋士」…“逆襲”に沸く将棋界
女性セブン