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レクサス 逆張りの発想でドイツ車御三家の牙城崩した

 確かに、レクサスは大きな台形を2つ組み合わせたような“顔”(スピンドルグリル)や、滑らかな曲線を追求したボディで躍動感を出すなど、メルセデスやBMWに比べると突き抜けたデザインが特徴的だ。トヨタ幹部が「100メートル先からでも分かってもらえる個性的なデザインを目指した」と話すのも頷ける。

 あまり派手なデザインはかえってブランドを陳腐化させる懸念もはらむが、レクサスはジャーマンスリーとは“逆張り”の独自性で果敢に勝負してきた。その結果、2014年に発売したレクサスのSUV(スポーツ多目的車)「NX」は、欧州メーカーのデザイナーたちから“狼の皮を被った羊”と呼ばれ、称賛されているという。

〈世界の自動車業界では古くから、地味なスタイルなのに走りに関しては猛々しい性能を持っているクルマを表す比喩として、キリスト教の聖書に出てくる言葉を流用して「羊の皮を被った狼」という表現が使われてきた。NXはその真逆である。

 NXは走りの質感という点では、プレミアムセグメントのモデルのライバルほどではなく、まさしく羊のようなものだ。だが、デザインは狼に相当するくらいの存在感を持っているということなのだ〉(『レクサス トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』より)

 こうしてレクサスは高級車ブランドとして世界中で認められつつある。すでに海外販売は主力の北米市場を含め、過去最高の65万2000台を叩き出している。トヨタの豊田章男社長は、レクサスを〈本物を知るお客様が最後に行き着くクルマ〉と位置づけ、さらに良いクルマづくりに執念を燃やす。

 だが、前出の福田氏は敢えてこんな苦言を呈す。

「章男社長はレクサスに対しては台数を追わない戦略ですが、ジャーマンスリーの世界販売はレクサスの3倍、あるいはそれ以上を記録しています。

 世界の販売台数アップはもちろん、ホームグラウンドである日本でも年間8万~10万台をコンスタントに売るくらいの規模に成長しなければ、レクサス事業単体の収益が上がらないばかりか、トヨタの“おまけ”としか見られなくなってしまうでしょう」

 歴史が浅い分、レクサスがプレミアムカーとしての地位を確固たるものにするまでには、今後もかなりの時間と試行錯誤を要するだろう。だが、世界で年間1000万台以上の大衆車を売るトヨタだからこそ、“いつかはレクサス”と心に秘める潜在的ユーザーを掴むチャンスも限りなく広がっている。

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