そもそも、カタログ燃費といえども、クルマの燃費はひと昔前とは比べ物にならないほど良くなっている。
2015年の乗用車燃費ランキングを見ると、HVはトヨタの「プリウス」が1リットルあたり40.8kmとトップを走る。ガソリン車では「アクア」(トヨタ)が37.0km、「フィット」(ホンダ)が36.4kmを誇る。また、軽自動車でも「アルト」(スズキ)、「キャロル」(マツダ)がともに37.0kmを分け合うなど、「燃費水準は究極の域に達している」(業界関係者)。
もはや、エコランをしなくてもリッター20km以上は走るクルマが続々と出ている中、購入者が燃費だけでクルマを選んでいるとは限らない。ジャーナリストの福田俊之氏もいう。
「ホンダの『N-ONE』やスズキの『ハスラー』のように“クラスナンバーワン燃費”などと派手に謡わなくても売れるクルマはあります。そういう意味では、『パジェロ』に代表される力強い走りのイメージが強い三菱自工がいたずらに燃費を追い求めたこと自体が失策だったといえるかもしれません」
いずれにせよ、三菱自動車の不正は“クルマ離れ”を加速させる懸念もあるため、業界全体が結束して信頼回復に努めることが必要だ。また、監督官庁である国交省や総務省も自動車行政の在り方を見直す契機にすべきだろう。
「燃費測定は、例えばエアコン使用時のモードや高速走行パターンなどいろんな値をカタログに載せてユーザーの信用度を高める基準に変えてもいいと思います。また、軽くて燃費のいいクルマが免税の対象にならないケースが出るなど、歪な制度になっているエコカー減税の仕組みをさらに改善させる余地はあるでしょう」(前出・井元氏)
今回の三菱自工の不正により、燃費審査をメーカー任せの申告にしていた国交省の杜撰な管理体制も露見した。このままでは、「本当に三菱1社だけの問題なのか?」というユーザーの不安が増大し、業界全体に波及する可能性もある。
●撮影/横溝敦(記者会見)