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「グローバル」の連呼はやはり怪しむべきかという話

 朝日新聞の記事内では、「びっくりするほど支援の額を値切られた」(東日本の大学トップ)、「あれだけぶち上げておいてこれか」(西日本の大学)、「今も納得していない。でも、『文部科学省さま』に文句は言えない」(関東の私大)といった「声」が紹介されている。記事は有意義だが、ぜんぶ匿名か。日本の大学、情けないったらありゃしない。

 文科省も頼りない。私がかつてした批判は外れてしまった。格差の拡大につながるほど、金をばら撒けないのである。これからはスーパーグローバルだあ、とぶち上げて、札束ちらつかせて、それは見せ金にすぎなかったみたいな話だ。日本の教育予算支出の対GDP比が世界的に低いことはよく知られているが、あまりに手口がせこくて、この国は本当に貧乏なんだなと不安になってくる。

 経済的にも不安だし、おエライさん方の頭脳も心配だ。和製英語の「スーパーグローバル」を指して、〈西日本の大学の担当者は「なんで国内向けはわざわざ妙な名前にするのか。海外向けに翻訳する際、直す手間がバカにならない」とあきれ〉ていると記事にあったが、国も大学もやっていることがちっちゃい。どうでもいいところで空回りしている。

 だいたいが、「グローバル」のロクな定義を聞いたことがない。「グローバル」と言っておけば、とりあえず時代にキャッチアップみたいな単なるノリ、その中身はいかようにも解釈できるマジックワードとして使われまくっている言葉ではないか。「グローバル人材」という造語もよく見るが、あれはなんなんだ。日本語にしたら「地球人材」。わけが分からないではないか。世界中の人間を同胞と考える世界市民主義の「コスモポリタン」とは、もちろん関係ない。一昔前に「国際人」という、これまた考えるに意味不明な言葉が流行ったが、きっとその横文字版以上でも以下でもないのだ。

「国際人」を和英辞書でひいても出てこない。国際的な場ではそんな概念などないからだ。地球に住む人間が自分たちのことをわざわざ「地球人」と呼ばないのと同じことである。「我々、地球人としては」と真顔で語り出したら、頭のネジが飛んでいると怪しまれるだろう。そういうことだ。

 スーパーグローバル大学をこしらえるだけの金はないし、それ以前に、そこで養成しようという「グローバル人材」が具体的に何なのかも実体がない。

 たしかに、「SGU詐欺」とは言い得て妙なのである。詐欺師は口がうまくて、中身がない。だから、「グローバル」を連呼する者がいたら思いっきり怪しんで我が身を遠ざける、そういう振る舞いがこれからは必要らしい。

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