すると「鬼才」は問題にならないのか。
「問題ないと思います。辞書的には天才は生まれつきの才能を指しますが、鬼才は鋭い才能、卓越した才能の持ち主を指す言葉ですので、憲法解釈なんかで、他の研究者とはちょっと違う独特の鋭い解釈をされる方なら、違和感はない」
なるほどぉぉぉぉ!
ところで「鬼才」と聞くと、私が想い浮かべるのは升田幸三や坂田三吉といった伝説的な棋士たちである。今の将棋の世界にも「枕詞」は多いのか、将棋担当記者に聞いた。
「『権威』は使いませんが、『大家』とはいいますね。他に大御所、新鋭、俊英といったところでしょうか。あくまでイメージで、序列のような意味はありません」
そこでこの記者が枕詞を付けた棋士と憲法の先生を並べて見た。
・重鎮……小林慶大名誉教授と加藤一二三九段
・気鋭……木村首都大学東京教授と永瀬拓矢六段
・鬼才……石川東大教授と糸谷哲郎八段
「加藤九段は現役最年長なので。永瀬六段は23歳でタイトル戦の棋聖戦で挑戦者になりました。鬼才は、最近は似たような将棋が多い世界なのでなかなかぴったりハマる人が上位クラスの棋士にいないのですが、早指しで鳴らす糸谷八段を推しました」(将棋担当記者)
こうやって棋士に当てはめてみると、それぞれの憲法学者の立ち位置がよくわかるだろう(えっ、わからないですか?)。
残念なのは会社の中で使われる枕詞が、「営業のエース」ぐらいが良い意味で、あとは「○○グループの天皇」「秘書課のお局」「専務の懐刀」など、どちらかというとひそひそ話でしか語られないことである。枕詞はその人の紹介である同時に、その業界の隆盛を演出する効果もある。そこでこれからは「総務の鬼才」とか「新進気鋭の経理」とか、いろいろお互い名付けあってはみてはどうだろうか。なんだか自分が凄い会社にいる気分になれること請け合いである。実際と離れすぎていて後から寂しさが襲ってくるかも知れないが、それはそれとして。