昨年6月、山東省済寧市に住む主婦が購入した牛肉の塊を包丁で切ろうとした瞬間、肉が勝手に動いたとして大騒ぎになった。ネットの映像を見ると、確かに肉片がピクッピクッと動いて気味が悪い。
地元衛生局は「動くのは末梢神経が生きているから。肉が新鮮な証拠だ」と主張したが、購入から丸1日経っても肉は動いていた。動画は途中で終わっているため確認できないが、「寄生虫としか考えられない」と指摘されている。
実際、広東省で貿易を営む日本人は、「近所の市場で購入した牛肉を切ったら、血管の断面から白い寄生虫がウジャウジャ出てきた。以来、牛肉を食べられなくなった」と証言する。
今年1月には、10年以上も豚の生肉を食べ続けた女性が原因不明の痛みに侵され、病院でCTスキャンをしたところ、全身から無数の寄生虫が見つかったと中国メディアが報じた(豚を生で食べるほうも悪いが……)。
ネズミ肉やキツネ肉を羊肉に偽装したり、大量の有毒物質を食品に利用するなどの事件も相次いでいる。衛生当局による管理も杜撰で、業者の悪行は賄賂で簡単に見逃される。
キョンシー肉は中国国内で餃子やコロッケなどの加工冷凍食品となり、日本国内で流通している可能性がある。 毒食品の蔓延は日本にとっても対岸の火事ではない。
●おくくぼ・ゆき/1980年愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒業。2004年に渡米。ニューヨークの出版社・新聞社での勤務を経て帰国。2007年から1年間滞在した中国では、社会問題を中心に取材を行う。2008年に再帰国後は、週刊誌や月刊誌を中心に活動。『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社)など著書多数。
※SAPIO2016年6月号