習近平一覧

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二人の緊密な関係は、2013年から
【プーチンと習近平】世界でもっとも危険なふたり ウクライナ戦争で習が堕ちた“友情の罠”
【プーチンと習近平・連載第1回】ロシアによるウクライナ侵攻は国際社会から強烈な批判を浴びたが、中国だけは依然としてロシアをかばい続けている。『十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争』(小学館刊)で習近平が中国トップに上りつめるまでの覇権争いを明らかにしたジャーナリスト・峯村健司氏による、世界を混乱に導く2人の独裁者の“個人的関係”に迫るスクープレポートである。(文中敬称略) * * *トランプの一言に動揺 米首都、ワシントン市内で5月7日、米諜報機関、中央情報局(CIA)長官、ウィリアム・バーンズがロシアによるウクライナ侵攻について講演した。ロシアと関係を深める中国の国家主席・習近平の心情の分析を披露した。「ロシア軍によるウクライナへの残虐行為に関連付けられることによって中国の評判が落ちたうえ、戦争に伴って経済の不確実性が高まったことに動揺しているようだ。なぜなら、習近平が最も重視することが『予測可能性』だからだ」 バーンズは言葉を選びながら、習の心の内を読み解いた。伝聞調で語っているが、単なる憶測ではないだろう。全世界に広がる数万人といわれるスパイ・ネットワークから得た情報に裏付けられたものだからだ。 バーンズの「予測可能性」という言葉を聞いて、筆者は2017年4月に米南東部のリゾート地、フロリダ州パームビーチで取材したあるシーンが脳裏によみがえった。ドナルド・トランプの大統領就任後初めて、習が訪米して晩餐会を共にしていた時のことだ。デザートに差し掛かったところで、トランプがフォークを止め、こう語りかけた。「たった今、巡航ミサイルを発射した。あなたに知ってほしかった」 米海軍艦船2隻が発射した59発の巡航ミサイル「トマホーク」が、シリア中部の空軍基地を攻撃したことを告げた。シリアが化学兵器を使ったことに対する報復だった。 同席していた米政府当局者によると、チョコレートケーキを食べていた習は、10秒間の沈黙の後、動揺した様子で後ろを振り返って、「彼は今、何て言った」と通訳に聞き返した。当時の習の様子について、トランプも米テレビのインタビューに次のように答えている。「習氏は『子供に化学兵器を使う残忍な人には、ミサイルを使っても問題ない』と言った。怒らなかった。大丈夫だった」 この習のとっさの回答は、中国政府の外交方針を考えると適切とは言えない。米軍によるミサイル攻撃は、「内政不干渉」「紛争の平和的解決」という原則に反するからだ。米政府当局者が、当時の習の様子を振り返る。「大統領からの突然の通告に動揺しているのが伝わってきました。話しぶりは堂々としていますが、アドリブに弱く、慎重な性格の持ち主だと感じました」 この証言は、冒頭のバーンズの分析と符合する。中国側は、トランプの就任当初、政治経験のない「素人大統領」と軽くみていたが、この会談を転機に警戒を強めた。SNSを通じて政策を発表したり、中国を批判したりする「予測不可能」なトランプに、習近平は手を焼き続けていた。中国外交の原則から逸脱 トランプとは正反対に、18年間にわたりロシア大統領を務めるウラジミール・プーチンは、習にとって最も「予測可能性」が高い指導者の一人といえよう。新型コロナの影響で対面による首脳外交を約2年間控えてきた習が、その再開相手としてプーチンを選んだのは、いわば必然だった。 しかし、そのプーチンとの38回目となる会談が、習の「動揺」の引き金になるとは、予想もしなかっただろう。 北京冬季五輪が開かれた2022年2月4日午後、北京の空港に到着したプーチンを乗せた車列は、北京市内にある迎賓館、釣魚台国賓館に入った。芳華苑のホールで待っていた習は笑顔でプーチンを出迎えると、会談を始めた。「2014年、私はプーチン大統領の招待を受け、ソチ冬季五輪開会式に出席した。その時私たちは『8年後に北京で再会しよう』と誓った。今回あなたが来てくれたことで、私たちの『冬季五輪の約束』は実現したのだ。今回の再会が必ずや、中ロ関係に新たな活力となると信じている」 こう習が切り出すと、プーチンは同意するように左手で机をたたきながら不敵な笑みを浮かべた。「中国はロシアの最も重要な戦略的パートナーで、志を同じくする友人。21世紀の国際関係の手本だ。中国との協力を一層緊密にして、主権と領土を守ることを支持し合いたい」 プーチンも、最大限の賛辞で中国を持ち上げた。2人は会談後、早めの夕食をとると、五輪開会式が開かれる国家体育場「鳥の巣」に向かった。2時間20分の開会式が終わり、日付が変わった2月5日未明、国営新華社通信社が、両首脳による共同声明を発表した。5000字を超える長文には、これまでの声明にはない奇異な表現があった。「中国とロシアは、外部勢力が両国の共同の周辺地域の安全と安定を破壊することに反対する。外部勢力がいかなる口実を設けても、主権国家の内政に干渉することに反対する。NATO(北大西洋条約機構)の引き続きの拡張に反対し、冷戦時代のイデオロギーを放棄するよう呼びかける」 声明では、米国に対する強い不信感と対抗意識がにじみ出ていた。そして、ロシアがウクライナ侵攻の口実にした「NATO拡大反対」について、中国が支持を表明したことは踏み込んだ判断だった。そのうえで、両国関係については次のような記述があった。「中ロ関係は冷戦時代の軍事同盟にも勝る。中ロ友好に限界はなく、協力に禁じられた分野もない」 この表現を聞き、筆者は強い違和感を覚えた。これまでの中国外交の原則から逸脱しているからだ。 中国外交は1980年代から、鄧小平が唱えた「自主独立、非同盟」という考え方が基本方針となっている。NATOや日米などの軍事同盟について、中国政府は強く反対している。「友好に限界はない」という文言は、プーチンのウクライナ侵攻を見据えて、中国側が「支持」をしたとも受け止められる表現だ。米国からの情報を横流し 取材を進めていくと、中国がロシア側に協力していた可能性が浮上した。中国政治の動向を追う北京の米外交関係者が証言する。「米政府は昨年末から、入手したロシア軍がウクライナに侵攻することを示す極秘情報を内々に中国政府に伝えていました。ロシアが侵攻をやめるように中国が説得することを期待してのことです。ところが中国側は、情報を『中ロ関係を引き離すための陰謀』と受け止めて信じなかったうえ、ロシア側に提供していたようです」 米国に強い対抗心と警戒心を抱く習近平政権らしい対応といえよう。中国はなぜウクライナ問題で、外交の基本方針に背いたうえ、米国との関係をより悪化させてまで、ロシア支持に傾いたのか。米外交関係者が続ける。「習近平氏の決断でしょう。これに対し、私が会った多くの中国の当局者や専門家は、今回の首脳会談と共同声明について『ロシア寄り過ぎる』と述べていました。習、プーチン両氏の親密な関係に遠慮して公言しないだけです」 ではこの会談で、プーチンから習に約3週間後に控えた軍事作戦について、何らかの具体的な通知があったのだろうか。米ニューヨーク・タイムズは「中国側は、五輪閉会前に侵攻しないようロシア側に求めた」と報じている。これについて、先の米外交関係者は否定的な見方を示す。「具体的な作戦のタイミングや中身について、両者の間でやりとりはなかったようです。そもそも情報機関出身のプーチン氏が、軍事作戦を他国に漏らすことはありえません。習近平氏は事前にはほとんど知らされていなかったため、戦争の情勢判断を誤った可能性があるとみています」 筆者もこれまで数多くの首脳会談を取材してきた。どんなに関係が深い首脳同士でも、最高機密である戦争に関する情報を事前にやりとりすることはない。この分析は合理的といえよう。 習が何よりもプーチンとの友情を優先させて最大限の協力をしたにもかかわらず、肝心の軍事行動に関する情報を知らされておらず、結果として梯子を外された──。習と配下の間のずれ ウクライナ戦争までの両国のやりとりを見ていると、そのような構図が浮かんでくる。この証言を裏付ける事象が、戦争勃発後に一気に噴出する。 ウクライナ戦争の前夜の2月23日。各国の情報機関は、ウクライナの首都・キーウ市内にある施設に注目していた。在ウクライナの中国大使館だ。中国が自国民の保護に動く時が、軍事侵攻のサインとみていたからだ。 ウクライナは中国の広域経済圏構想「一帯一路」の最も重要な拠点で、キーウには中国から「一帯一路」沿線国を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」の終着駅があり、約6000人の中国人が在留している。半ば国策として派遣された中国人労働者も少なくない。 だが、中国大使館は動かなかった。退避のチャーター機派遣を発表したのは、ロシア軍による侵攻翌日の2月25日になってのことだ。実際に退避が始まったのは2月28日で、米欧よりも半月以上も遅れた。こうした中国政府の対応の遅れに対し、中国のネット上では批判の声が上がった。 中ロ両国の外交当局の間でも不協和音が出てくる。習は2月25日、プーチンと電話会談をした。中国外務省の発表によれば、ウクライナ侵攻について、習が「ロシアがウクライナと交渉を通じて問題解決することを支持する」と、プーチンに対して求めたことが記されている。ところがその3日後の28日になって、駐中国ロシア大使館は会談での習近平の発言の一部を付け加えて発表した。「ロシアの指導者が現在の危機状況下で取った行動を尊重する」 ロシアの侵攻に対し、習が理解を示すような発言といえる。両国の発表の違いについて、中国外務省関係者が舞台裏を解説する。「習主席の発言は事実だ。しかし、中国政府内で議論した結果、発表文から削除することにした。ロシアの同盟国であるベラルーシが、欧米諸国による制裁を受けた二の舞を避けるためだ」 ロシア軍の侵攻拠点の一つとなっているベラルーシに対して、欧米諸国はハイテク製品の輸出規制などを課した。ベラルーシとはけた違いに深く国際的な経済ネットワークや供給網に組み込まれている中国が制裁対象となれば、被害は計り知れない。中国外務省がトップの発言を削除したのは、危機感の表われといえよう。 首脳会談と並行して行なわれた中ロ外相による電話会談で、中国外相の王毅はロシアの軍事侵攻について、ロシア外相のセルゲイ・ラブロフにこう釘を刺した。「中国は一貫して各国の主権と領土保全を尊重している。対話と交渉を通じて持続可能な欧州の安全メカニズムを最終的に形成すべきだ」 この会談の中身を知る中国外務省関係者の一人は、王毅発言の真意について説明する。「ロシアによる軍事行動を暗に批判したものです。中国外交の基本原則である『内政不干渉』に反する行為であり、いくら両首脳同士の関係が親密だからといって、支持できるものではありません」 習とその配下の中国政府当局者との間のずれが生じつつあるのは間違いない。 こうした不協和音を打ち消すように、習は6月15日、プーチンと再び電話会談をした。この日は習の誕生日。プーチンからの祝辞もそこそこにウクライナ情勢を協議。軍事交流の強化などで合意した。そのうえで習はこう強調した。「国際秩序とグローバルガバナンスをより正しく合理的な方向に発展させよう。そして核心的利益と重大な関心事に関わる問題を互いに支持しよう」2人の個人的な関係 筆者が北京で特派員をしていた2000年代後半、中国とロシアの関係は友好的ではあったが、それほど密接なものとはいえなかった。むしろ北京では、ロシア研究者や専門家は影響力があるとはいえず、政府内でもロシア政策の重要性は高いとはいえなかった。 ところが2010年代に入ると、両政府間の要人の往来は増え、経済的な結びつきも強くなった。次第に軍事的な結びつきへと広がり、両軍による共同演習は盛んになり、ロシアから地対空ミサイルや戦闘機の中国への売却も急増した。両国はさまざまな分野で関係が深まり、2019年には「全面的戦略協力パートナーシップ」が結ばれるほどになった。 両国関係が加速度的に緊密になったのは、習がトップになってからだ。習とプーチンという2人の個人的な関係が、両国関係を引っ張ってきたといえよう。 異常ともいえる2人の親密な関係はいつ、どのようにして築かれたのだろうか。その起源は習近平が中国トップに就任した2013年3月にさかのぼる。初外遊先として選んだのがロシア。しかも国家主席になったわずか1週間後のことだ。2013年3月22日、モスクワの大統領府に入った習近平はプーチンと会うと、満面の笑みで握手をして意外な言葉を発した。(第2回につづく)【プロフィール】峯村健司(みねむら・けんじ)/1974年長野県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業後、朝日新聞入社。北京・ワシントン特派員を計9年間務める。「LINE個人情報管理問題のスクープ」で2021年度新聞協会賞受賞。中国軍の空母建造計画のスクープで「ボーン・上田記念国際記者賞」(2010年度)受賞。2022年4月に退社後は青山学院大学客員教授などに就任。著書に『宿命 習近平闘争秘史』(文春文庫)、『十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争』(小学館)など。※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.23 11:00
週刊ポスト
欧米系の予想を覆すべく「目標成長率5.5%」に向かって邁進する中国経済
欧米系の予想を覆すべく「目標成長率5.5%」に向かって邁進する中国経済
 上海総合指数が戻り歩調だ。メーデー休暇前の4月27日、安値2863.65ポイントを付けて底打ちすると、そこからはっきりとした上昇トレンドが出ている。端午節休場明けの6月6日は1.3%高、3236.37ポイントで引けており、4月の安値からは13%上昇している。【写真】今年の秋に行われる中国共産党全国代表大会では、習近平政権の第3期入りが決まる 中国本土の投資家たちは中国経済の先行きに自信を持ち始めているのだろうか。ゼロコロナ政策が緩和されたわけではない。少し前まで感染者数の多かった北京市では、マンションの“1棟丸ごと封鎖”がようやく解除され始めたところだ。ただ、全国で見た場合、感染者数は激減している。 6月6日時点で、中国本土の新規感染者数(発症者数)は39人、症状の出ていない陽性者数は85人。4月27日段階では、前者は1494人、後者は9791人であったことから、その激減ぶりがわかるだろう。地域別の状況をみると、39人の内訳は、内モンゴルが20人、遼寧が13人、上海が3人、四川が3人。症状の出ていない陽性者が出ている地域はこれら4地域のほか、吉林、北京、浙江、福建に限られる。 感染者がいなければ、経済活動を妨げる規制は必要ない。ゼロコロナ政策で疲弊した経済を立て直すために、当局は強力な景気対策を打ち出し始めた。これが投資家心理回復の最大の要因ではないだろうか。 特に、波及効果の大きな自動車、不動産業などに対して強力な需要拡大政策が打ち出されている。 5月23日に開かれた国務院常務委員会では、総合経済対策措置が発表されたが、自動車関連では自動車の購入制限措置が解除され、乗用車に関する総額600億元相当の購入税が段階的に免除されることになった。この方針を受けて財政部、税務総局は5月31日、排気量2リットル以下、価格が30万元以下の車両について、6月1日から12月31日までの期間、購入税を半額免除すると発表している。 中国の行政システムは日本と違い柔軟だ。地方政府は中央政府よりも早く独自の政策を打ち出している。たとえば、ゼロコロナ政策の影響が大きかった陝西省では5月18日、「さらに一歩進んで消費活力を促進させ消費を伸ばすための3年行動計画」を発表、新車購入あるいは、買い替え需要を喚起するための政策を打ち出している。また、3月から4月にかけて厳しい都市封鎖が行われた長春市では、5月21日、自動車消費を拡大させるための補助金政策を発動、9月21日までの4か月間で総額5000万元の予算を確保した。 不動産業に関しては、開発面では依然として厳しい規制が残っているが、一方、不動産ローン金利について、最優遇貸出金利を下回る低金利を容認するなど、需要面からの支援策が打ち出されている。 今後、家電や旅行需要などの刺激策や、インフラ建設投資の拡大、さらに一歩進んだ金融緩和など、多方面から五月雨式に政策が出てくるだろう。そうした期待が、中国株の地合いを好転させている。 今後の見通しだが、政策だけでは株価上昇は続かない。結果として景気の段階的な回復が確認されてこそ、息の長い上昇トレンドが形成される。中国共産党は、今年の目標成長率について5.5%前後としているが、この目標が達成できるかどうかが相場の大きな焦点となりそうだ。中国において国家が決めた数値目標は努力目標ではない その一方で、IMF(国際通貨基金)は4月の時点で、1月の成長率見通しを0.4ポイント引き下げて4.4%とするなど、欧米系のエコノミストたちの予想は厳しく、5.5%近い予想を出しているエコノミストは皆無である。もしいたとしたら、もはや見識を疑われるような状況だ。だが、本当に達成の可能性は限りなくゼロに近いのだろうか。 中国の経済システムは日米欧とは異なる点が多いが、その点について、彼らはあまり考慮していない。彼らはあくまで、自由主義体制下での経済システムを分析するためのツールを用いて予想している。 中国にとってゼロコロナ政策は純粋な感染対策ではなく、目標成長率は、自由な経済活動の中で政策支援が加わることで達成されるであろう予想成長率などではない。これらはあくまで政治的な政策、目標だ。 経済運営に関して言えば、中国はれっきとした社会主義国家である。現在でも五か年計画が重視されるなど、経済運営において計画は重要な意味を持つ。国家が決めた数値目標は単なる努力目標ではなく、その達成には政治責任が伴う。 経済運営に関しては、国家政策によって供給や需要をコントロールできる、あるいはしなければならないとする立場を取っており、日米欧の経済運営システムとは相いれず、主流の経済政策理論からはかけ離れている。日米欧の立場は、はっきり言えば、政府による経済への関与には限界があり、過度な関与はしないといった立場である。 計画を重視した旧ソ連では崩壊後、大規模な統計の水増しが行われていたとする研究がある。だから、結局中国も同じようなことをせざるを得ないのではないかといった懸念も出ている。しかし、今の中国社会は多様性に富んでおり、虚偽の統計をある程度見抜くことのできる優秀で正義感が強くかつ発信力のあるエリート層が一定数存在する。習近平政権は統計の不正を厳しく戒めているが、それはそうしたエリート層が不満を持てば社会が一気に不安定化しかねず、体制維持のために欠かせないからであろう。 それでも、統計上、テクニカルに説明できる範囲で行う比較対象となる過去の速報値の下方修正ぐらいのことはやるかもしれない。しかし、足元の景気減速の状況を見る限り、その程度ではとても間に合わない。 下期の経済政策は、目標値に届くまで、供給、需要双方から、強力な政策を打ち出すだろう。2022年の成長率は、終わってみれば悪くても5.3%、5.4%程度となるまで、当局はやれることはなんでもやろうとするだろう。 コロナ禍を封じ込めた上で、決められた目標を達成できてこそ、政治も社会も安定する。異例となる3期目以降も政権を担当するにはそれだけの実績が必要だ。アメリカではバイデン大統領が低い支持率に悩まされているが、習近平国家主席も決して安泰ではない。どこの国も政治家の使命は重くて厳しい。文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。
2022.06.08 07:15
マネーポストWEB
各地で自国第一主義が台頭(イメージ。Getty Images)
ボーダレス時代に「自国ファースト」が支持される理由 “国家の悪循環”を断ち切れ
 ロシアのウクライナ侵攻は、21世紀になってもなお政治・軍事上の要請が経済的な合理性を凌駕してしまう現実を象徴している。だが、その一方で、経済を無視しては人々の生活が立ち行かない以上、「力による現状変更」を企図した指導者はそのままでは生き残れない。世界的ベストセラー『ボーダレス・ワールド』の著者・大前研一氏は、“ウクライナ戦後”の世界においても、経済のボーダレス化は不可避かつ不可逆的なものだと主張する。 * * * 今回あらためてテーマとして取り上げたいのは、「21世紀国家の繁栄とは何か」という問題です。 我々は普通、国というと「国民国家」、いわゆるネーション・ステートというものを思い描きます。主に19世紀から20世紀にかけて世界各地に形成され、たとえば、いま世界196か国(2021年3月時点)と言った時の「国」がそれに当たります。国際連合(国連)というのは、その国民国家の集合体ということになります。 私は1990年代から、アメリカのUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で公共政策学を教えています。そこでは「地域国家論」という講座を持ち、そのものずばり『地域国家論』(講談社/1995年刊)という本も出しました。英語版のタイトルは“The End of The Nation State”、すなわち「国民国家の終わり」です。「国民国家」とボーダレス経済 そもそも国民国家とは何か? それに答えることは意外に難しいです。まず、国家の定義としては、明確な国境があって、その領土の中に国民が居住し、その国民が主権者となって国の諸制度を決めていく。主権国家は憲法(国家の基本法)を持ち、国民を代表する政府が国防・外交・財政などを所管している──といった定義もできます。 また、歴史的な経緯から見ると、絶大な権力を誇っていた国王中心の絶対王制に対して、17世紀のイギリス市民革命やフランス革命(1789年〜)などが起き、国民中心の国家運営ということで、国民国家が形作られていきました。アメリカ(独立宣言は1776年)は、そのイギリスやフランスの市民革命のコピーでできあがった国家と言えます。 国民は、主権者としてさまざまな権利を与えられることになったと同時に、納税や兵役、教育などの義務を負うことになりました。また、国家の一員として帰属意識を高めるために国歌や国旗への敬礼、言語の標準化といった統制も受けました。 しかし、それらはすべて「国境が閉じている」という前提で成り立つことです。国境が閉じているからこそ、国民意識=ナショナリズムが重視され、国という枠組みの中で経済の成長も考えられてきました(図表1参照)。 しかし今、起きているのは経済のボーダレス化、グローバル化です。私は1990年に『ボーダレス・ワールド』という本を英語で出版しましたが、モノ、カネ、情報が軽々と国境を飛び越えるようになれば、ビジネスも国境を越えて発想していかなくてはなりません。ネット隆盛の時代に、国民国家という国境の中だけの枠組みで考えていたら、企業は死に絶えるしかない──というのが『ボーダレス・ワールド』の基本的な考え方です。 当初は世界中の経営者がこの本の主張にひっくり返りました。同書もまた、国民国家の限界というものを明確に指摘していたからです。 ボーダレス社会、ボーダレス・ワールドでは何が起きるのか? それまでの工業化社会の勝者が凋落し、経済格差がどんどん拡大していきます。さらに、非常に貧しい国や地域から移民・難民が国境を越えてやって来ます。となれば、異なる民族同士が争うようになり、民族紛争も起こります。 また、生活者の多くが現状に不満を持つようになります。当然、自国の政府や政治に対しても怒りの矛先を向けます。 そうなってくると今度は、政治家は票が欲しいために、「自国ファースト」「ポピュリズム(大衆迎合主義)」の政策を掲げるようになります。まさに古代ギリシャの末期に見られた「衆愚政治」の再現となるわけです。「国」にしがみつけば落ちぶれる 新刊『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』でも解説しましたが、ボーダレス化やグローバル化が進んだ今の世界では、「国家」の枠組みにしがみついて「あの国が我々の脅威だ」「移民・難民が仕事を奪う」と叫べば支持者が集まってくる、という状況が至るところで見られます。「自国ファースト主義」や「ポピュリズム」がはびこっているのが現状です(図表2参照)。 その筆頭は、アメリカのドナルド・トランプ前大統領ですが、後任のジョー・バイデン大統領も「トランプイズム」からなかなか抜け出せずにいます。 それから、イギリスのボリス・ジョンソン首相。ブレグジット(イギリスのEU離脱)を主導して、返す刀でFTA(自由貿易協定)では「自国ファースト」を主張しています。この人物は、歴史的に最も愚かなイギリス首相として名を残すと思います。 それから、日本も安倍晋三元首相や菅義偉前首相はどんどん借金をしてツケを後に回すアベノミクスという経済政策を続けて大衆におもねり、自画自賛する「ミー・ファースト」の政治を続けてきました。岸田文雄首相も、それを継承しつつあります。新型コロナ対策では的外れの連続で、コロナ敗戦・ワクチン敗戦が続いていますが、異次元金融緩和と国債頼みで何とか“延命”し、ほかに代役がいないという理由で続投しています。 中国の習近平国家主席は独裁者ですが、ポピュリスト(大衆迎合主義者)であることは同様です。巨大IT企業や裕福な経営者に利益を還元するように圧力をかける「共同富裕(共に豊かになる)」のスローガンなどは、大衆迎合の典型です。また習近平の場合には、香港だけでなく、台湾も南シナ海・九段線まで自国領だと主張し、「中華民族の復興」「一帯一路」の新・植民地主義などで愛国心を?き立てます。 また、強権体制下でロックダウンをいち早く実施して、「ゼロコロナ」を標榜しています。もともと習近平1人に権力が集中することには懸念があったものの、結果的に、徹底的な汚職追放を含めて、国民の人気を得ています。 ほかにも、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相やポーランド与党「法と正義」党首のヤロスワフ・カチンスキ元首相は、EUや西側のリベラリズムに異を唱え、国内のナショナリズムを煽っているポピュリストですし、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領やベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領など独裁政権は枚挙にいとまがありません。 こうした「ミー・ファースト」の政治家はトランプ前大統領に象徴されるように、移民・難民の受け入れに反対して国民の愛国心を鼓舞することで支持を集めています。 現実を見れば、「ダイバーシティ(多様性)」が世界をリードしていて、国民国家という時代遅れの枠組みにこだわっていたら、富も人材も不足して、国が落ちぶれ、国民が貧しくなるだけなのですが、それと反対の甘いことを言ってくれるのが政治家の役割で、有権者はそういう人に投票する、という悪循環が続いています。 この悪循環を断ち切るにはどうしたらいいのか──ロシアのウクライナ侵攻後の世界に突きつけられているのは、そういう根源的な問いなのです。※大前研一『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』(小学館)より一部抜粋・再構成
2022.06.04 11:00
NEWSポストセブン
中国「ゼロコロナ政策」の先に待つ大失速 景気対策でも回復期待できず
中国「ゼロコロナ政策」の先に待つ大失速 景気対策でも回復期待できず
 人は常に合理的な行動をとるとは限らず、時に説明のつかない行動に出るもの。そんな“ありのままの人間”が動かす経済や金融の実態を読み解くのが「行動経済学」だ。今起きている旬なニュースを切り取り、その背景や人々の心理を、行動経済学の第一人者である多摩大学特別招聘教授・真壁昭夫氏が解説するシリーズ「行動経済学で読み解く金融市場の今」。第37回は、中国の「ゼロコロナ」政策が及ぼす世界的影響について。【写真】共産党への批判を避けるため、習近平政権はSNSに圧力をかける可能性も * * * 新型コロナウイルスの感染拡大から2年余りが過ぎ、欧米諸国に続いて日本でもマスク着用の徹底を緩和する議論も進んでおり、コロナと共生しながら経済回復を目指す「ウィズ・コロナ」の方針が進んでいる。そうしたなか中国では、いまもコロナの感染拡大を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策に邁進している。 なかでも、人口2500万人の巨大都市・上海では、3月28日から2か月以上ロックダウン(都市封鎖)が続き、6月から実質的に解除されたものの、市民生活はもちろん、世界経済にも大きな影響を及ぼそうとしている。 なぜ、中国の共産党政権はここまで「ゼロコロナ」にこだわるのか。それは、これまで武漢をはじめ国内の感染拡大をロックダウンによって封じ込めてきた共産党政権の自負があるからだろう。“ロックダウンでコロナはコントロールできる”という思い込みから、市民生活に犠牲を強いる強硬策に突き進んでいるのだ。 しかし、これこそ行動経済学でいう「コントロール・イリュージョン」そのものではないだろうか。重症化しにくい反面、感染力の強いオミクロン株の感染者を“ゼロ”にすることは難しく、まして中国製ワクチンはオミクロン株にはあまり効かないとも指摘される。そうしたなか、「ゼロコロナ」を目指すこと自体が“幻想(イリュージョン)”に近い。ここまで来ると、共産党政権は「コントロール・イリュージョン」にとらわれているとしか思えない。 なにより工業都市である上海は物流の中心であり、世界最大級の港湾都市。その都市機能がこれだけ長い間ストップされれば、その影響は国内外に甚大な影響を及ぼすことは間違いない。 中国の1~3月期のGDP(国内総生産)成長率は前年同月比4.8%にとどまり、4~6月期は悪化する可能性が極めて高い。目標に掲げている今年の成長率5.5%の達成も難しい状況ではないだろうか。上海の4月の新車販売台数はゼロ 特に、ロックダウンが長らく続いた上海は深刻な打撃を受けている。上海市自動車販売協会の発表によると、同市の4月の新車販売台数はなんとゼロ! 昨年4月の約2万6000台と比べると、ロックダウンの影響がどれほど大きいかが分かる。世界最大の自動車大国の中心都市がこの有り様なのだ。 奇跡的にここからV字回復となれば話は別だが、そう簡単な話でもないだろう。成長率が下がれば、企業の生産活動は停滞し、失業者が増えるのは必至の情勢だ。そうなると、社会不安が広がり、経済成長によって抑え込んできた人民の不満の高まりから、やがては共産党批判につながりかねない。 共産党へ批判の矛先が向くことだけは避けたい習近平政権は、人民への圧力を強め、とりわけ批判の声が集まりやすいSNSにさらなる圧力をかけるかもしれない。それによって、これまで中国の経済成長を牽引してきたテンセントやアリババといった巨大IT企業の業績が落ち込むことも予想される。 加えて、もう一つの悪材料が不動産市況の悪化だ。国内大手の中国恒大集団をはじめ不動産デベロッパーの業績は悪化しており、今後は中小を含む経営破綻が相次ぐ可能性が高まっている。 中国経済の失速が鮮明になろうとするなか、共産党政権は公共投資などの景気対策を打ってくる可能性は高い。だが、それによってこれまでのような高成長を取り戻せるわけではない。既に中国の公共投資は、経済効率の良い案件にほぼ行き渡っており、効率の悪い案件にいくら資金を投じても経済全体が大きく上向くことにはつながらない。 もはやそうなると、中国国内の問題だけにはとどまらない。1990年代以降、中国は「世界の工場」から「世界の消費大国」として世界経済の牽引役となってきたが、それがいよいよ低成長の時代に突入する公算が高まっているのだ。 ロシアへの経済制裁によって、世界経済は「グローバル化」から、経済が分断される「ブロック化」へと突き進もうとしている。世界的なサプライチェーン(供給網)は寸断され、良いモノを安く調達できる体制は崩壊した。 コロナ禍にウクライナ問題、そして中国経済の失速が重なることで、世界が大きく一変する「メガチェンジ」が到来する可能性も高まりつつある。事態の推移にますます目を凝らしておくべきだろう。【プロフィール】真壁昭夫(まかべ・あきお)/1953年神奈川県生まれ。多摩大学特別招聘教授。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリルリンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学教授、法政大学大学院教授などを経て、2022年4月から現職。「行動経済学会」創設メンバー。脳科学者・中野信子氏との共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書 脳科学と行動経済学が導く「上品」な成功戦略』など著書多数。近著に『ゲームチェンジ日本』(MdN新書)。
2022.06.03 07:15
マネーポストWEB
空母を6隻体制にする目的は?
中国共産党が幹部や家族の海外資産保有禁止を通達 実態との乖離に批判も
 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」はこのほど、中国共産党中央委員会が閣僚級以上の高官やその配偶者、子弟など近親者が海外資産を保有することを禁止するとの内部文書を通達した、と伝えた。この理由について、ロシア軍のウクライナ侵攻に伴って、欧米諸国がロシアの高官に課したような制裁を防ぐため、あるいは、汚職撲滅のためなどとされている。 しかし、ネット上では「習近平の2人の姉夫婦や弟が海外に資産を持ったことを筆頭に、党高官親族の海外資産保有は周知の事実だ。まずは習近平自身が襟を正せ」との声が出ている。 WSJが入手した内部文書では、中国の閣僚級以上の高官の配偶者や子弟、親戚などの近親者は海外不動産や企業の株を所有してはならず、海外の金融機関に口座を開設することは許されていないという。 さらに、県(日本の市や郡)レベル以上の党・政府機関の幹部は自分自身や配偶者、子弟の国外での就業、預金・投資について報告しなければならないと規定。それ以前にも、1995年以降、共産党内には、副大臣(次官)クラス以上の幹部に対して、個人の収入、不動産や株などの所有、配偶者や子供の海外移住、配偶者や子供のビジネス取引などを毎年申告するよう求める文書が存在するという。 しかし、米国を拠点とする中国問題専門ウェブサイト「博訊新聞網」は、読者の声として、習近平主席の近親者や、江沢民元主席や温家宝元首相、朱鎔基元首相の息子が米国の大学に留学後、海外の金融機関に就職したり、他の投資家と共に金融機関を創設したりして、莫大な利益をあげていることはよく知られているとの書き込みを掲載している。「本当に問題なのは、最高幹部の近親者がこれらの利益を得たとしても、共産党政権では取り締まることも罰することもできないことだ」と博訊新聞網は指摘している。
2022.05.31 07:00
NEWSポストセブン
中国国防省が弾道ミサイルの迎撃実験成功をHPで発表
中国の李克強首相が地方をノーマスク視察 ゼロコロナ政策との矛盾に注目
 中国の李克強首相が5月中旬、中国内陸部雲南省の政府機関や大学、民間企業や少数民族の家庭などを視察した。習近平国家主席ら他の中国共産党の最高幹部とは違い、視察中ずっとマスクをつけないで市民らと対話しており、李氏を取り巻く聴衆もノーマスクだったことが関心を集めている。 李氏は習氏とは政治的なライバルであり、水面下で激しい権力闘争をしているとの見方があるなか、李氏が衆人環視の中でマスクをつけなかったのは、新型コロナウイルスの感染防止のため、習氏が主張する「ゼロコロナ」政策への当てつけではないかとの指摘も出ている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。 李氏が訪問したのは雲南省の省都、昆明市とその周辺の少数民族居住地で、昆明市では最初に民営の運送会社の社長の自宅を訪問。李氏は最近の運送業の状況について尋ねると、社長は「新型コロナウイルスの感染防止対策で、他の省に出ることが難しく、雲南の新鮮な野菜や果物を全国に届けることができない。収入が少なくなっている」と答えた。 李氏は「私は必ずあなた方が困難を乗り越えるのを助ける。特に運送業界の問題を解決して、この野菜と果物を全国の家庭に届けることを決意した」と社長を激励したという。 李氏は雲南省東部の観光地である曲靖市の少数民族の村でも、市民に生活状態を質問。彼らは「コロナ対策で観光客が来ないので生活が苦しい」などと口々に訴えた。李氏は「観光客が来ないため、借金が返せないのは大変だ。私はこのような苦しい時期を乗り切ることができるように、しっかりと努力する」と答えている。 また、李氏は雲南大学を視察し、学生らと懇談し、リラックスした調子で「雲南大学はやはり注目に値する。将来、雲南大学は君たちを誇りに思うようになるだろう」と述べると、学生たちは「総理、ありがとうございます」などと語り、大きな拍手が巻き起こった。 この1泊2日の視察の間、李氏一行はマスクをはずしており、また雲南大学などの視察先の人々もマスクをつけていなかった。一方、習近平国家主席は5月5日の党政治局常務委員会で、「常に冷静な思考を保ち、動的ゼロコロナという全体方針を常に揺るがず堅持する必要がある。堅持こそが勝利だ」と述べている。習氏のゼロコロナ政策と矛盾する李氏一行の視察時の行動には、いったいどんな意図があったのだろうか。
2022.05.25 07:00
NEWSポストセブン
世界経済の波乱要因「中国のゼロコロナ政策」は今後さらに厳しく、秋まで継続必至
世界経済の波乱要因「中国のゼロコロナ政策」は今後さらに厳しく、秋まで継続必至
 グローバルで株式市場が大きな変動に見舞われる中、米FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策に世界の注目が集まっている。【写真】習近平氏は、政治的にゼロコロナ政策をさらに厳しく実施する方針 およそ40年ぶりの水準まで高まったインフレへの対策が急務である。しかし、利上げの幅が大きすぎたり、ペースが速すぎたりすれば、過剰流動性の急速な萎縮が起きかねない。そこに容赦のないQT(量的引き締め)が始まれば、予想外の資金流出が起きかねない。経済面では、景気をオーバーキルしてしまうかもしれない一方で、インフレ対策を始めるのが遅ければ、スタグフレーションを引き起こしてしまうかもしれない。 大きなリスクがあるからこそ、FRBは“失敗できない”のである。 最大の懸念材料は、FRBにも出来ることと出来ないことがあるという点だ。景気が過熱しているだけなら金融政策だけで対処できるかもしれない。しかし、外部要因など、供給サイドの問題を内包していたとすれば、それへの対処は困難である。 中国リスクはどうだろうか。 4月の中国の輸出(ドル建て)は3.9%増で、3月と比べ10.8ポイント低下した。伸び率大幅鈍化の最大の要因は、一部の地域で実施されている厳しい「ゼロコロナ政策」だ。 もっとも、足元で米国向け輸出に大きな鈍化がみられるわけではない。しかし、今後、厳格なゼロコロナ政策の実施が長期化し、米国側の需給要因ではなく、中国側の供給要因で米国向け輸出が鈍化するようなことになれば、米国は輸入インフレにも十分な警戒が必要となる。ゼロコロナ政策をさらに厳しく実施する 5月5日に開催された中央政治局常務委員会では、ゼロコロナ政策を徹底して行う方針が示された。 習近平国家主席が主催する共産党の重要会議においてゼロコロナ政策強化の方針が決定されたインパクトは大きく、6日の上海総合指数はそれまでのリバウンド基調が一変、2%超の下落となった。 習近平国家主席は会議の中で「武漢防衛戦線以来もっとも厳しい防御コントロールの試練を受ける中で、我々は今年3月以来、全国隅々まで心を一つにして努力し、肩を並べて作戦を練ることで、一定の成果を勝ち取った」と足元の対策を評価した上で「我々の防御コントロールの方針は共産党の性質や教義による決定である」と指摘しており、この対策が政治的に非常に重要だという点を強調している。 また、「グローバルな感染状況は依然として高い水準を保っており、ウイルスは不断に変異しており、感染状況が最終的にどうなるのか非常に大きな不確実性がある。一息ついて、脚を休める状況には程遠い。我が国は人口大国であり、老齢人口が多く、地域の発展は不均衡であり、医療資源の総量が不足している。防御コントロールの勢いを弱めれば大規模なグループ感染が起こり、大量の重篤患者、病死者を出現させてしまい、経済・社会の発展や人民の生命の安全、身体の健康が著しく悪影響を受ける」と指摘。 だからこそ、「1ミリも動揺することなく“動態的に完全なゼロ”を目指す総体方針を堅持する」と強調している。 新型コロナウイルス感染拡大の状況を見ながら柔軟に対応するということではない。政治的にゼロコロナ政策をさらに厳しく実施するというのだ。市場コンセンサスは「秋の共産党大会まで続く」 いつまで続くのか。 アジアオリンピック評議会は6日、杭州市において9月10~25日の日程で開かれる予定であったアジア大会を2023年に延期すると発表した。延期理由は新型コロナウイルスの感染拡大である。 ゼロコロナ政策は、秋に実施される第20回全国共産党大会まで続くだろうというのが市場関係者たちのコンセンサスだ。少なくとも、夏に開かれると予想される、最高指導者メンバーによる北戴河での非公式会議までは、この方針に修正が加えられる可能性は極めて低いのではないか。 今後は中央で決められたこの大方針が、省クラス、郷鎮クラス政府へと浸透していく。経済への悪影響は避けられない。 一方、4月29日に開かれた中央政治局会議では、当面の経済運営方針が検討され、5.5%前後の成長を目指すといった目標が堅持された。 ゼロコロナ政策を強化した上で5.5%前後の成長を目指すとすれば、内需拡大、特に即効性のあるインフラ投資や、不動産投資を拡大させること、あるいは年後半の行楽シーズンを目途に国内のリベンジ消費をフルに喚起させることなどが考えられるが、やれることは限られよう。 2020年における中国の輸出依存度は16.95%で世界第117位である。中国経済は既に内需主導型経済に移行している。結局、輸出にしわ寄せが及ぶのではなかろうか。 ゼロコロナ政策はすでに政治化しており、硬直的な政策となっている。中国のコロナ対策は今後の国際マーケットにおいて、大きな波乱要因となりそうだ。文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。
2022.05.11 07:15
マネーポストWEB
中国国防省が弾道ミサイルの迎撃実験成功をHPで発表
チベット族の焼身自殺が相次ぐ 習近平政権の少数民族政策の影響か
 中国では今年2月下旬から3月下旬までの1か月間で、3人のチベット族の住民が焼身自殺したことが明らかになった。2009年以降、チベット族住民による焼身自殺は約160件発生しているが、最近数年間は落ち着いているなかで、1か月に3人もの自殺者が出るのは、年間を通じて8人が焼身自殺した2014年以来のことだ。 習近平国家主席は今年3月、北京で開催中の全国人民代表大会(全人代=国会)で「中華民族の共同体意識」を強化するよう指示し、今年の重要施策として「少数民族と漢族(中国人)との融和」を強調した。とくに、チベット住民の共住区ではチベット仏教への弾圧や伝統的なチベット文字の使用禁止などが指示されており、これらが自殺者増加の原因となっているとみられる。 インド北東部ダラムサラにあるチベット亡命政府(CTA)の情報によると、中国当局のチベット人弾圧に抗議してチベット族の歌手ツェワン・ロブさんが2月25日、中国チベット自治区の区都ラサに位置する、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマの居住地であり、チベット仏教の聖地ともいえるポタラ宮前広場で焼身自殺を図った。 ツェワンさんは日本の紅白歌合戦に当たる、大晦日に放送される中国の歌番組にも出演する国民的な人気歌手で、日ごろからチベット文字やチベット文化の継承・保護を訴えていた。 ツェワンさんが焼身自殺を図った直後、警察官がかけつけ火を消したが、その後、警察で死亡が確認された。 このほか、 四川省アバ県ギルデン在住の81歳のチベット人ザペンさんが3月27日未明、チベット仏教僧院近くの警察署の前で焼身自殺を図り、警察に連行されて拘束中に死亡。また3 月30日午後4時、青海省玉樹県の公安局前で、同県在住のチベット族、ザペンさんが焼身自殺して死亡している。 3人の遺族は警察から死亡を知らされただけで、遺体は引き渡されていない。過去には、遺骨がチベット族の親族に引き取られた後、葬儀に多くの人が弔問し、政治的なデモに発展したことあった。こういったことを避けるため、いまでは焼身自殺者の遺骨は返還されないという。 海外のチベット人のための非政府組織(NGO)であるチベット人権民主主義センター(TCHRD=Tibetan Centre for Human Rights and Democracy)は中国当局に対し、3人の遺体を直ちに遺族に返し、伝統的な葬儀をきちんと行えるようにできるよう求めている。 また、インドのチベット亡命政府のベンバ・ツェリン首相は海外のチベット人に対して「貴重な命を大切にし、その生命エネルギーをチベットの政治・宗教のために使い、より多くの貢献ができるよう努力してほしい」と呼びかけている。
2022.04.20 07:00
NEWSポストセブン
中国経済の正念場 「ゼロコロナ政策」を絶対に失敗できない理由
中国経済の正念場 「ゼロコロナ政策」を絶対に失敗できない理由
 4月18日、中国の1-3月期経済成長率が発表された。結果は4.8%で、2021年10-12月期と比べ0.8ポイント高く、市場予想と比べても0.4ポイント高かった。形の上ではポジティブサプライズと言えるだろう。【写真】ロックダウン(都市封鎖)中の上海で、路上に立つ防護服を着た警察官 3月の経済統計についてみると、鉱工業生産は5.0%増で1、2月合計(毎年、1月分はその年によって月を跨ぐ春節の影響を考慮して発表されず、2月に2月分と合計した数字を発表、小売売上高も同様)よりも2.5ポイント低く、固定資産統計(累計)は9.3%増で2月(累計)と比べ2.9ポイント低い。しかし、鈍化したとはいえ、鉱工業生産は昨年12月よりも0.7ポイント高く、固定資産投資についても昨年12月(累計)よりも4.4ポイント高い水準だ。 一方、厳しかったのは、全国不動産開発投資であり、3月(累計)は0.7%増と2月(累計)よりも3ポイント低い。新型コロナ化でマイナスに沈んだ2020年5月以来の低水準である。不動産よりもさらに厳しさが目立ったのは小売売上高である。1、2月合計と比べ10.2ポイントも低い3.5%減となった。 小売売上高についてブレークダウンしてみると、商品小売は1、2月合計の6.5%増から3月は2.1%減、レストラン収入は8.9%増から16.4%減へと急落している。 商品小売についてさらに細かく調べてみると、飲料は12.6%増、食用油、食品は12.5%増、医薬品は11.9%増、石油、石油製品は10.5%増と2桁増を記録した一方、金銀真珠宝石は17.9%減、アパレル・靴帽子・ニット製品は12.7%減、家具は8.8%減、自動車は7.5%減となった。「ゼロコロナ政策」で外出する人が少ないから飲食は厳しく、同じ理由で、百貨店、専門店の高額商品は売れない。内覧する人が少ないから不動産は売れず、外出しないならば車など必要ない。明らかにゼロコロナ政策が影響していることが見て取れる。一部地域の都市封鎖が全体の消費に影響を与える ただ、中国で新型コロナウイルスが流行しているのは、ほんの一部の地域という認識だ。 4月18日現在、中国本土感染者数(症状の出た感染者。無症状者は除く)は3297人。この内、100人以上の感染者数が出ているのは上海(3084人)だけである。10人以上は、吉林(88人)黒竜江(64人)、広東(20人)、江蘇(11人)の4地域。10人未満の地域は江西(9人)、山西(5人)、北京(2人)、浙江(2人)、山東(2人)、河南(2人)、そのほか河北、遼寧、安徽、湖北、湖南、雲南、陝西、青海が1人である。 直近では上海市が全体の94%を占めているが、3月の時点では、吉林省長春市が圧倒的に多かった。つまり、新型コロナウイルスは全国に蔓延しているわけではなく、流行はピンポイントであり、3月の時点で都市封鎖が行われたのも、長春市、吉林市、上海市、深セン市など極めて限定的であった。にもかかわらず、国家全体の消費に大きな影響を与えている。なぜだろうか。そこには2つの理由が考えられる。 ひとつは、一部の限られた地域における都市封鎖であっても、全国に広がるサプライチェーンの一部が寸断されてしまえば、それが全国に影響してしまうこと。もうひとつは連日のマスコミ報道により、中国人民の頭の中に新型コロナウイルスへの恐怖心が強く刷り込まれ、消費活動に影響していることが要因だと考えている。 だとすれば、景気刺激策は効果が出にくいはずだ。新型コロナウイルスを完全に抑え込まない限り、いくら当局が景気刺激策を打ち出したところで、消費、不動産販売の回復は難しい。インフラ投資を実施しようにも、作業員が集まらない。 中国当局はこれからどう対応していくのか。これまでの流れから考えると、コロナとの共存を図るのではなく、ゼロコロナ政策を一段と強化し、できるだけ早期に流行を抑え込もうとするのではなかろうか。 というのも、今年の秋に行われる中国共産党全国代表大会では、習近平政権の第3期入りが決まる。全共産党員を納得させるためには、経済社会を安定させ、全人代で決めた5.5%程度の成長率を達成させなければならない。 できるだけ早い時期に新型コロナウイルスを封じ込め、その後、減速した経済を引き上げるための思い切った政策を五月雨式に発動する目論見だろう。だが、それが達成できなければ政治面で大きな混乱を招きかねない。ゼロコロナ政策の成否は今後、中国の安定、世界経済の成長に大きな影響を与えそうだ。文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。
2022.04.20 06:15
マネーポストWEB
空母を6隻体制にする目的は?
上海のロックダウン 食糧不足に加え医療崩壊で民衆の不満が極限に
 中国の上海市では、習近平指導部の新型コロナウイルス封じ込めの「ゼロコロナ政策」による都市封鎖で、食糧不足が深刻化している。また病床不足などの医療崩壊で、重度の慢性疾患を持つ患者らが治療を受けられずに死亡するケースが続出しており、民衆の不満が極限まで高まっていることが分かった。ネット上では「上海は死の街になった」「習近平指導部のゼロコロナ政策によって殺される」などとの書き込みも現れている。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。 上海市トップの李強中国共産党上海市委員会書記は4月中旬、市内の集合住宅を視察していたところ、女性3人に囲まれ、「食べるものがない。市からは米しか配給されず、野菜も肉も魚もない、毎日ご飯しか食べられない」などと苦情をぶつけられた。また、車いすの女性は李氏を指差しして、大声で「あなたは国家に対して犯罪を犯した」などと大声で罵る場面もあった。 これに対して、李氏は彼女らに頭を下げて「みなさんの声をまとめて、上層部に報告します」と答えるのみだったという。 一方、SNS上では慢性の持病があった70代の父を持つ男性が「父は通常なら週に3回の透析が必要だが、この騒ぎで7日間も透析を受けることができず、その挙句に昨日亡くなってしまいました。ゼロコロナ政策で、都市封鎖をするのならば、病人の治療を継続する手配を整えてからにしてほしい」などと訴えていた。 このほかにも、がん患者だった70代の女性の娘は「母は本当ならば1週間前に手術を受ける予定だったが、上海市のロックダウンで、手術が延期され、そのまま亡くなってしまった。その間、市政府に電話で窮状を訴えても、何も聞いてくれませんでした」と書いている。 このような状況は上海市ばかりでなく、上海市近隣の浙江省や江蘇省などにも波及している。ネット上では「政府はゼロコロナ政策で、まもなく都市封鎖を実施する」とのうわさが広がり、食料品を買いだめするため市民がスーパーマーケットに押し寄せる動画が投稿されている。 また、中国南部の大都市である広州市では感染拡大防止策として、4月11日から小中高校の1週間の臨時休校措置をとったほか、市民には市外への移動を制限したことで、市民の間では「ロックダウンの恐れがある」として不安が高まっている。これらの地方政府は「生活用物資は十分あるので、冷静に対応してほしい」と呼びかけているが、ネット上では「政府の言ったことを信じる人はだれもいないだろう」との声が出ている。 また、台湾の中央通信社によると、上海などのロックダウンなどの影響で、中国各地の高速道路で立ち往生しているドライバーが一時約3000万人以上に上ったという。これは中国の貨物・物流産業の約76%を占めており、中国の物流網もマヒ状態に陥っていると伝えている。
2022.04.17 07:00
NEWSポストセブン
バイデン氏はどう動くのか(写真/AFP=時事)
手嶋龍一氏が「プーチンの戦争」分析 中国が調停なら「習近平にノーベル賞」の悪夢も
 米・バイデン大統領はなぜ「プーチンの戦争」を止められなかったのか。インテリジェンス小説『鳴かずのカッコウ』や『ウルトラ・ダラー』など、幾多の著作でロシアのウクライナ侵攻を予見してきた外交ジャーナリストの手嶋龍一氏が語る。 * * * 四半世紀にわたってウクライナ、中国、ロシアの現場三国の動向を追い続けてきた私としては「プーチンの戦争」は起きるべくして起きたと言わざるを得ない。「昨日の超大国」アメリカの大統領が決定的な局面で対応を誤ったことが、ロシア軍のウクライナ侵攻を許してしまったのである。 バイデン・ホワイトハウスには、CIAをはじめ複数の情報機関から「プーチンはウクライナ侵攻を既に決断した」との確報が次々に寄せられていた。だが、バイデンは信じ難いミスを犯してしまった。極秘にすべきインテリジェンスを敢えて公表しながら、「侵攻には大規模な経済制裁で応じる」と言うだけで、軍事上の措置は取らなかった。 NATOに加盟していないウクライナに米軍を派遣する条約上の義務はないと明言して、プーチンの軍事侵攻を招いた。米大統領の机上には「宝刀が載っていない」と手の内を晒す戦略的誤りを犯したのだった。 果たしてプーチンは安んじてロシア軍にウクライナへの全面侵攻を命じている。日本の機動部隊が真珠湾を奇襲すると知りながら、ルーズベルトが手を拱いていれば囂々たる非難を浴びただろう。その後もバイデンは「攻撃が東部地区に限られるなら制裁も小振りになる」と述べ、「ミグ戦闘機をドイツの米軍基地を経由してウクライナに送る」とのポーランドの要請も断わってしまった。バイデンは迷走に次ぐ迷走を重ねていった。「想定できない事態をこそ想定し備えておけ」。安全保障に携わる者の大切な心構えだ。だが、米国の外交・安全保障当局者たちにとって「プーチンの戦争」は、彼らの予想を遥かに超えるものとなった。ロシア軍の侵攻は、東部の国境地帯に限定されるはずと楽観的だったが、いまや戦火は全土に広がっている。 なかでも最大の誤算は、原子力施設への攻撃だった。チェルノブイリ原発はすでに廃炉で、ベラルーシから首都キエフを衝く途上のため占拠したにすぎないと軽く見た。だが、こうした見立ては惨めなほどに間違っていた。ロシア軍は、欧州最大のザポリージャ原発をはじめとする原子力施設を制圧した。プーチンは“神の火”たる原子力は我が掌中にありと誇示、右手に原子炉、左手に核ミサイルをかざし、西側世界への脅しとしたのだ。 プーチンは国連憲章や国際法など歯牙にもかけない“現代ロシアの皇帝”だ。そして小児病院や産院まで標的にし、正義の戦いだと主張することすらやめ、戦争犯罪者になろうとしている。「プーチンの戦争」は最後の一線すら越えたのである。 イラクやシリアでも、隣国の主権を踏みにじり、自国民に化学兵器を使う指導者が現われたが、超大国アメリカは時に武力を行使して国際秩序を守ってきた。だが、「バイデンのアメリカ」は、民主主義の守護神としての役割を果たそうとしていない。 アメリカがウクライナに軍事介入すれば、第三次世界大戦となり、核戦争の恐れすらあると慎重な姿勢を崩さない。だが、それゆえ、プーチンは、そんなバイデンの弱腰につけ込み、いまも侵攻を続けている。キューバ危機に際して、ケネディ大統領は、核のボタンに手をかけることも辞さないと決意を固めたことでクレムリンの譲歩を引き出し米ソ核戦争は回避された。これが核の時代の究極のジレンマなのである。 プーチンの戦争を止めるには、主要国の調停が必要だ。キーワードは「中立化」である。ウクライナは、いまはNATOに加盟しておらず、妥協の余地はあるはずだ。一方のロシア側もウクライナのNATO加盟を断念するよう求めている。問題は非武装化の主張だが、戦局が不利になれば、プーチンも態度を軟化させる可能性があるはずだ。 日本も各国と連携して調停に動くべきだろう。中国が調停に成功すれば、習近平はノーベル賞を受けて、台湾の併合に乗り出すだろう。それは日本にとっては最悪のシナリオとなる。※週刊ポスト2022年4月1日号
2022.03.20 07:00
週刊ポスト
空母を6隻体制にする目的は?
中国の「首に鎖の女性事件」ユネスコ女性特使務める習近平夫人に解任運動
 中国のファーストレディ、習近平国家主席夫人の彭麗媛さんが2014年から務めている国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「女子・女性教育促進特使」について、ユネスコに対して「取り消すべきだ」との公開書簡が発表され、彭麗媛さんの解任を求めるキャンペーンがインターネット上で展開されている。 これは、昨年12月初めに中国江蘇省鳳県で、誘拐されて鎖につながれ8人の子供を産んだ女性の事件が明るみに出たにもかかわらず、女性や子供の人権を守るべき特使である彭麗媛さんが一切この事件にコメントせず、中国政府に対して何らかのアクションを求めることもしていないため。「彭麗媛さんには特使の資格はない」などと強く批判されている。米政府系報道機関「ボイス・オフ・アメリカ(VOA)」が報じた。 公開書簡は、元上海同済大学政治学副教授で現在米国に亡命中の邱嘉順博士が発起人となって発表されたもので、オードリー・アズレイ・ユネスコ事務局長に宛てて出されている。 書簡では、鎖につながれた女性の事件について、「全世界が衝撃と憤りを感じ、中国当局もこの事件に関して5回の捜査状況の発表を行ったが、彭麗媛さんはユネスコの女子・女性教育促進特使を務めているにもかかわらず、被害女性について、一言も言及していない」と批判。そのうえで、公開書簡でが「中国では毎年何万人もの女性や子供が人身売買や虐待を受けているのに、彭さんは女性や少女に対するこうしたひどい人権侵害に関心を示す様子がない」と指摘している。 また、書簡は「彭氏は中国政府に対して、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、中国の女性と子どもの保護に関する法律の遵守と実施を促す努力を一切していない。彭さんを特使にしておくことはユネスコの重大な汚点であり、彭さんはもはやユネスコの女子教育特使を務める資格はない。その旨を世界に公表すべきだ」と締めくくっている。 公開書簡は今後、ジュネーブの国連人権理事会など世界の人権団体のほか、中国人民政治協商会議や全中国女性連盟などの中国内の人権担当機関にも送付されるという。
2022.03.12 07:00
NEWSポストセブン
プーチン大統領と朱金平国家主席の仲とは(写真=SPUTNIK/時事)
プーチンと習近平の不気味な共通点 ともにナンバー2排除で「暴君化」
 ウクライナ侵攻をめぐるロシア・プーチン大統領の暴走が止まらない。これまでも国際社会に対して強硬姿勢を取ることは珍しくなかったが、原発や核研究施設への攻撃など、常軌を逸したようにも見える行動が目立つ。フランスのマクロン大統領は2月にプーチン氏と会談した後、「彼は3年前とは別人になってしまった。頑固で、孤立している」と側近に漏らしたとされる。 プーチン氏に変化をもたらしたきっかけとされるのが、ナンバー2だったメドヴェージェフ首相の退任だ。2000年から2008年まで2期8年にわたり大統領を務めたプーチン氏は、当時連続3選が禁じられていたため、側近だったメドヴェージェフ氏に大統領を任せ、自らは首相の座に就いた。「タンデム(双頭)体制」と呼ばれたが、事実上、首相のプーチン氏がすべての実権を握っていたとされる。2012年にプーチン氏が大統領に返り咲くと、メドヴェージェフ氏は首相として支える立場になり、長らくその体制が続いた。 ところが2020年1月、突如としてメドヴェージェフ氏は首相を解任され、安全保障会議副議長という実権のないポストに就くことになった。事実上の更迭とされているが、これがその後のプーチン氏の「暴君化」に繋がる決定打となったと見るのは、外務省関係者だ。「2人はサンクトペテルブルグの市役所に勤めていた頃からの盟友関係で、メドヴェージェフ氏は常にプーチン氏を立てる“忠実なイエスマン”でした。しかし、権力の座に長くあったため、メドヴェージェフ派と言われる勢力が出来てしまった。プーチン氏は、自らの権力を維持するためには、メドヴェージェフ派を一掃する必要があると考えたのではないでしょうか。 メドヴェージェフ氏にはプーチン氏を止める力などありませんでしたが、プーチン氏はメドヴェージェフ派の動向を気にしていたため、行動にも一定の抑制があったと言われています。対抗勢力が一切なくなってしまった結果、暴走に歯止めが利かなくなってしまったのではないでしょうか」 現在の国際社会で、似た状況になりつつあるのが中国だ。習近平・国家主席は、今年秋に開かれる党大会で3期目の続投が確実視される一方、ナンバー2の李克強・首相は2023年での任期満了の予定だ。李氏の退任後、習氏が暴走する懸念があるという。「盟友関係にあったプーチン-メドヴェージェフと違い、習近平氏と李克強氏はずっと政治的なライバル関係にありました。習氏は李氏の政治力を削ぐことに力を注いできましたが、それが一定の抑止力となってきた側面がある。李氏の後任に習派の人物が選ばれた場合、対抗勢力がいなくなることになり、習氏の独裁化が強まることでしょう。 そこで危惧されているのが、習氏の悲願とされる台湾統一です。習氏はプーチン氏のウクライナ侵攻を事実上容認する姿勢を示しましたが、念頭にあるのは似たようなシナリオでの台湾侵攻でしょう。国際社会からの批判や経済への影響を考えると、ウクライナ侵攻同様、国家としてのリスクは高いはずですが、このままではそうした否定的意見が共産党内で封殺されてしまう状況になってしまうのではないでしょうか」(同前)
2022.03.08 11:00
NEWSポストセブン
空母を6隻体制にする目的は?
中国の小中高校で「習近平法治思想」の科目導入 担当の副校長も選任
 中国の小中高校では新年度が始まる今年9月から、最高指導者である習近平国家主席の指導思想に関する科目が新設されることが明らかになった。すでに、北京や上海など一部の大都市では昨年から試験的に授業が開始されているが、来年度から本格導入されることになる。また、これらの授業内容は大学入試にも反映されるという。 これに伴い、中国司法省(日本の法務省に相当)は今年5月1日から中国全土の小中高校に習近平法治思想担当の副校長ポストを新設し、「習近平法治思想の学習および宣伝を推進していく」と発表している。中国各紙が伝えた。 北京や上海など一部都市で昨年から始まった思想教育の授業では「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想の学生読本」という教材を使い、これまで習氏が掲げてきた「中華民族の偉大な復興」「台湾統一」などの目標やスローガンについて学ぶ。 中国指導部は2020年11月から法治部門に限定した「習近平法治思想」を提唱し始めており、「法による治国では党の全面的な指導を堅持する」「中国の特色ある社会主義的法治の道を堅持する」「中国の特色ある社会主義的法治システムの建設を堅持する」など11項目の主張を教えてきた。 今後は必修科目として「習近平思想」全般を加え、青少年に対する思想教育の強化を目指している。 教育省はこのような小中高校における全面的な習近平思想の教育展開を支える要員として、習近平思想担当の副校長ポストを新設する方針を決めた。担当者は当面、裁判所や検察、警察などの司法行政部門から推薦された専門家が務めることになり、すでに裁判官1万3801人が昨年末までに副校長を兼任しているという。 中国で2018年から全国統一の大学入学試験で、習氏の演説やスローガンを題材にした問題が多く出題されており、習近平氏思想は受験生の必修科目ともなっている。小中高校で習近平思想が必修科目となることで、入学試験での習近平思想の比重が一層高まることが予想される。 中国紙によると、これまでの出題内容は作文試験のテーマとして「新時代の新青年として祖国の発展とともに成長することについて」などで、「新時代」は習近平思想のキーワードだ。また、習氏が2035年までに「社会主義現代化を基本的に実現する」との国家目標を設定したことを踏まえ、未来の学生に向けて手紙を書かせる問題も出されている。
2022.03.05 07:00
NEWSポストセブン
外交ジャーナリストの手嶋龍一氏(右)と中国問題を専門とする拓殖大学教授の富坂聰氏
【対談・中国経済、成長か崩壊か】内需を軸に経済を成長させる目論見も
 習近平国家主席の強権体制による中国の膨張に、世界が固唾を呑んでいる。北京五輪を終えた中国経済はどこかで破裂するのではないか──。外交ジャーナリストの手嶋龍一氏と中国問題を専門とする拓殖大学教授の富坂聰氏が超大国の行方を読み解いた。【前後編の前編】手嶋:中国経済を語るうえでも北京の冬季五輪は象徴的です。競技場は人工雪、つまりフェイクの雪が地上を覆っている。 中国経済もまた表向きは欧米と同じルールで営んでいるように映るが、随所にフェイクな面が見受けられる。日米欧の各国はそれと知りながら中国との取引から利益を引き出してきた。だが、その雪も手に取ってみるとザラザラとしている。我々の貿易相手が、果たして本物なのか、フェイクなのか、それを吟味する岐路に立たされているのではないか。富坂:2008年の北京五輪と比べると、国威発揚で欧米への対抗心がむき出しだったのが、今回は開会式の演者の大半が俳優ではなく一般人で、ドローンを使うような派手な演出もなかった。ゴリゴリと前に進むのはもう難しいという、中国がこれから向かわなくてはならない方向を表わしていた。手嶋:2010年までは中国と経済的な関係を強めていけば中国もやがて内側から変質し、西側のルールに近づいていくという楽観論がありました。しかし、こうした米国流の関与政策が幻想だったことがはっきりしてきた。富坂:中国は中国なりに変化していると思います。たとえば、不動産バブルの崩壊についても、背景には中国経済を不動産依存から脱却させるという習近平の決断があった。さまざまな方法で人為的に不動産価格を下げて、都市によっては18%くらい下がりました。手嶋:意図的に不動産バブル崩壊させたのですね。富坂:そうです。水面下で準備していたから、激しいハードランディングは今のところ起きていません。庶民が不動産を買えなくなっていることが問題なのです。10億円持っている人が2億円を不動産に投資してバブルが起きたので、バブルが崩壊しても生活に困るというものではない。習近平は富裕層が痛むのは仕方がない、それよりも「自分たちが生きている間に不動産は買えない」という層が増える方が深刻だと考えている。ですから、明らかに3年前から不動産価格を下げる政策をとっていた。あまりうまくはいっていないのですが、国が安い価格帯の“平民マンション”を作ったりもしています。手嶋:逆に言えば、中間層を中国社会の基軸として育てたい、そんな政策を目指して不動産バブルの風船を割る決断をした訳ですね。富坂さんの見立てはとても重要です。中国に限らず健全な中間層は、国の経済の牽引役で、健全な中間層が存在する国の経済は実際栄えてきた。習近平政権の狙いは分かりますが、果たして今の中国にそんな転換ができると思いますか。富坂:おっしゃる通り難しいと思いますが、目指しているのは確かです。2020年の全人代で、李克強首相はGDP成長目標を発表せず、代わりに可処分所得の上昇率を指標にした。さらに習近平は皆が豊かになる「共同富裕」をスローガンに、真ん中が太い「アーモンド型」を目指すとした。実はバイデン大統領も「分厚い中間層」を作ると、同じことを言っています。手嶋:米国だけでなく中国も富裕層を経済の牽引役としてきましたが、今後は可処分所得に着目し、豊かな中間層を増やし、誰でも不動産が持てるようにと政策の舵を切っている。目指す目標はいいものの、果たして実現できるか、私は懐疑的です。富坂:問題は今のコロナ禍で消費が振るわないこと。重慶などいくつかの都市で何百もの開発プロジェクトが始まっているのですが、これらは従来型の開発で、揺り戻しが起きている。この1~2年が山場かもしれない。手嶋:もし習近平政権が中国経済を転換するとすれば、どんな成功のシナリオがあるでしょうか。富坂:今、中国には中間層が4億人いるといわれています。これを5億人に増やし、相当に大きな消費社会ができれば、貿易をしなくても中国だけで成長していけるという夢を描いているのです。手嶋:内需を軸に経済を成長させる。そんな力を社会に秘めているのは中国のような国です。中国は不動産バブルが弾けてもうお終いだという見方が日本にありますが、そんな“悲観論”はやや行き過ぎだと思います。富坂:鍵となるのは個人消費ですが、これが伸びるかどうかは将来不安と直結している。中国では労働力人口が減少に転じ、一人っ子政策をやめて二人っ子政策に転換しましたが、子供の教育費に莫大なお金がかかるので二人目を産もうとしないし、他の消費にもお金を回さない。そこで昨年は「学習塾禁止令」を出して塾を潰したが、結果にはつながっていない。手嶋:中国はアリババなど成長の推進エンジンだったテック企業にも規制を強化しています。富坂:テック企業は儲かるので、その富をどう分配するかで、政府とぶつかる。アリババは、関連会社のアントグループが塾の費用を賄う教育ローンで儲け、個人債務を膨らませていたので政府に目をつけられた。同社は寄付という形で社会に還元して、「共同富裕」だと言っている。面白いのは摘摘出行(タクシー配車サービス)で、儲かったから新規採用をしたが、内訳を退役軍人が何%、母子家庭の人が何%などと発表し、社会貢献をしていると主張した。完全に共産党の指導が入っています。しかし、テック企業が政府の指導にどこまで従うかは不明で、アリババが拠点を国外に移す可能性もゼロではない。手嶋:GAFA(*)のように国境を超えて成長し、それゆえテック企業の宝は優れた人材です。米国で高等教育を受け米国企業に就職した中国の若者は、ある時期からより高い地位や収入を得られると中国に戻ってきました。しかし、中国当局が規制を強めれば、有能な人材が出て行く心配がある。強権的な政府が中間層の人気を得ようとテック企業を締め付ければ、いい人材が流出してしまうディレンマに直面している。【*米国の「Google」「Amazon」「Facebook(現Meta)」「Apple」の4つの世界的IT企業を指す】(後編につづく)【プロフィール】手嶋龍一(てしま・りゅういち)/1949年生まれ、北海道出身。NHKワシントン支局長として9.11テロを中継。『ウルトラ・ダラー』『鳴かずのカッコウ』などのインテリジェンス小説ほかノンフィクションの著書多数。富坂聰(とみさか・さとし)/1964年生まれ、愛知県出身。北京大学中文系に留学したのち、ジャーナリストに。2014年より拓殖大学海外事情研究所教授。『ルポ中国「欲望大国」』など著書多数。※週刊ポスト2022年3月4日号
2022.02.23 07:00
週刊ポスト

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