国際情報

中国のネットが大紛糾 風俗取り締まりで尋問受けた学生の死

北京の市民も議論(写真:アフロ)

 警察権力の暴走は、いつの時代にもどこにおいても起こり得ることだ。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。

 * * *
 中国人民大学法学院に通っていた29歳の修士学生の死をめぐって中国のネットで大きな議論が巻き起こっている。ネット上での騒ぎは5月に始まったのだが、いまだに社会の注目度は高い。

 事件が起きたのは5月6日。法学系の大学院に通う雷洋は家族を迎えに行くため空港へと向かったのだが、その途中、中国で「嫖娼」と呼ばれる風俗マッサージの店に立ち寄ったのだった。そして当日、取り締まり強化のために店を取り締まっていた北京市昌平区の警察から尋問を受けることとなったのである。

 通常、中国であっても風俗店に出入りしただけで大事になることはまれだ。複数で行って、リーダー的な存在が「斡旋した」と判断されるととんでもない重い刑になることもあるが、一人で行ったのであれば本来ならば面倒な問題に発展することはあまりない。

 ところが雷洋は取り調べに抵抗し、手錠をかけられ警察車両に入れられてから、次に出てきたときには死体となっていた。

 家族が遺体と対面したとき、全身に殴られた跡があり、とくに陰部の損傷が激しかったとされている。

 家族はすぐに弁護士を立て警察の取り調べの違法性を問う裁判を起こしたが、これと同時に雷洋の通っていた大学でもこれを問題視し討論会が行われるなどしたため、雷洋に対する過剰な取り調べ問題は一気に大きな社会問題となっていったのだった。

 そして問題が拡大する過程で注目を集めたのが、今回加害者となった警察が、正規の警察官ではなく「補警」であったことだ。捕警とは補助警察のことで、一種の警察業務のアウトソーシングである。

「もともとは海洋での人手不足に対応する制度でしたが、いまは面倒くさい仕事を秘跡に丸投げする流れの中に位置づけられています。中国でもいまはコンプライアンスがうるさく問われていますから、いざというときにトカゲの尻尾切りができるようにしておくということです」

 責任逃れから非正規にどんどん丸投げする。中国もそういう時代に入っているのだ。

関連キーワード

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン